【おススメ本】人はなぜ「言いかた」「書きかた」を間違えるのか。『恥をかかないコミュマスター養成ドリル 失敗例5パターンに学ぶ会話とメールとSNS』

2020/6/8 13:30 吉村智樹 吉村智樹






こんにちは。
ライター・放送作家の吉村智樹です。


緊急事態宣言が解除となり通勤通学が再開したとはいえ、「第二波」の到来が危惧され、まだまだ予断を許さない昨今。


自宅で楽しめる安全で手軽なエンタテインメントと言えば、やはり「読書」


そこで、こんな時期だからこそ読んでいただきたい「おススメの新刊」を紹介してゆきたいと思います。


第6冊目となるスイセン図書は、「誹謗中傷」が問題となっているSNSやメールのあり方、人づきあいについて、いま一度、立ち返ってみる話題の本『恥をかかないコミュマスター養成ドリル 失敗例5パターンに学ぶ会話とメールとSNS』です。





■とっさの対応、あなたなら、どうする?


今から皆さんに質問をします。


これは話題の新刊『恥をかかないコミュマスター養成ドリル 失敗例5パターンに学ぶ会話とメールとSNS』(扶桑社)にて出題された「コミュ力(コミュニケーション力)」に関する質問の抜粋です。


三択のうち、どれかひとつをお選びください。
あなたが選んだ回答は、「○」「△」「×」の3段階で評価されます
「○」を目指して選んでくださいね。


新入社員を歓迎する
飲み会の幹事をやることに。
店の候補を探して、課長に
「この居酒屋はどうでしょう?」
と打診したら、
「なるほど、居酒屋もいいね」
という反応だった。
望ましいリアクションは?


1.「ホッとしました。では、このお店に予約を入れます」
2.「ダ、ダメですか。すぐほかのお店を探してみます」
3.「えーっと、どういう種類のお店がいいでしょうね?」


僕は1を選びました。


続いての質問です。


いわゆる「弁当男子」で、いつも
自分と妻の弁当を作っている。
オフィスで弁当を食べていたら、
通りがかったよく知らない重役が
「おっ、うまそうだな。
いい奥さんをもらって幸せだね」と
言ってきた。
さて、どうしたものか。


1.「ありがとうございます」と適当に話を合わせておく
2.「いや、じつは自分で作ったんです」と真実を述べる
3.「弁当作りは女性の仕事と決めつけるのは偏見ですよ」と諭す


僕は3を選びました。


さて、「○」はどれ! 正解は本書をお読みください。


『恥をかかないコミュマスター養成ドリル 失敗例5パターンに学ぶ会話とメールとSNS』は、このようにコミュ力をアップさせるための50問が出題されます。


正解率70%以上だと晴れて「コミュマスター王」(コミュニケーション・マスター王)に認定。
日頃から人間関係を円滑に進めることができる、というわけです。


そして、僕はと言うと、ことごとく「×」を選んでしまい、正解率はヒト桁に沈みました……。
どの質問でも、わざわざ「失敗パターン」の地雷を踏みに行っています
なかには「大人として恥ずかしい」と著者から本気で叱責される回答まで選んでしまいました。


いや~、当たっていますよ! このドリル。


確かに僕は54歳にもなってコミュニケーション力がまるでなく、未だにどこのコミュニティにも属することができません


サークル的な雰囲気を醸し出してわいわいやっている方々を見ていると、「楽しそうだな~」「うらやましいな」と指をくわえる場合もあるのです。


けれども、「自分が携わることでコミュニティの空気を悪くしたらどうしよう」という怯えが先に立ち、その一歩を踏み出す勇気が出ません。





■著者は「大人力」を養成する人気コラムニスト


この新刊『恥をかかないコミュマスター養成ドリル 失敗例5パターンに学ぶ会話とメールとSNS』の著者は、「大人養成講座」「大人力検定」で知られ、「大人」関連書籍を100冊以上も手がけているコラムニスト、石原壮一郎さん


「大人力」という概念を提唱し続け15年に亘る石原さんが自ら「大人研究の集大成」と謳うのですから、人を改心させるのに十分な説得力があります


プロデュースと編集は、『盲導犬クイールの一生』『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』などのベストセラーを多数手がける本づくりの匠、石黒謙吾さん


50問のドリルだけではなく、石原さんが過去に書いてきたコラムを「文章問題」として出題するなど、石黒さんの編集によって読む人をコミュ力の向上へと導く工夫が随所になされています。
まさに「読者とのコミュ力」を発揮しているのです。





■コミュ力を妨害する「5つの大罪」とは


そのような天才ブックメーカーがふたりがかりでコミュ力養成のために腕をまくってくれる本書では、コミュニケーションが失敗する原因は「言葉足らず」「早トチリ」「裏読み」「勘違い」「場の空気」の5つに分類されるのだと解き明かします。


そして、その5つは、ひとつひとつでもメンドくさいのに、悲しいかな絡み合ってしまうのです。


下記は極端な例です。


人にメールで集合時間を伝える場合、「言葉足らず」の人は午後5時のつもりで、うっかり「5時」だと書いてしまいます


「言葉足らず」さんのせいで、メールの文面だけでは「午前5時なのか、午後5時なのか」が判然としません


ここで早くも、無駄な混乱が生じます。
さらに「早トチリ」さんは確認をせず、疑うことなく早朝5時にそこへやってきてしまいます


そうならないために、ちゃんと「17時」と書いたとしましょう。
すると「勘違い」さんは、見誤ったまま「午後7時」と記憶してしまいます


かたや「裏読み」さんは「メールの送り主は午後7時を19時と書きたくて、うっかり17時と書いたのではないか」と裏を読み、結局は何時なのかがわからなくなります。


「場の空気」を読む人は、「メールの送り主は午後3時を15時と書きたくて、書いている途中で自分でも午後5時だと思い込み、17時と書いたのではないか」と、さらにややこしく受け取ります


なぜならば「場の空気」を読む人に対して「言葉足らず」さんや「早トチリ」さんや「勘違い」さんが、以前に同じ過ちをおかしてきたからです


そうして「場の空気」を読む人は結局何時なのかが読めず、とりあえず最大の安全策として正午から待っていた……なんてことも。


「そんなことくらいで悩むのならば、メールの送り主に訊きなおせばいいじゃない」という至極簡単な結論に辿り着くのですが……相手が友人ならばそれはできるでしょう。しかしながら、上司や得意先の方ならば「訊きなおす行為によってメールの送り主さんのプライドを傷つけてしまうんじゃないか」という別件の問題が発生してしまうんですよね。






■「言いかた」「書きかた」の失敗は憎しみを生む


先述のような「待ち合わせ時間」レベルならば、どうってことはないのでしょう。


でもですね、現実はさらにここにお金のトラブルが絡んだり、浮気が絡んだり、思想支持政党差別などが容赦なく上乗せされます。


しかも嫉妬心やマウントをとりたいという気持ちや承認欲求といったメンタルな問題も横たわっているため、ひと筋縄ではいきません。


あなたにとっての正論は、相手にとっては間違っていて、あなたが論破したい相手のなかにあるものは、その人にとっては正論です。
そしてあなたの正論が理解されない理由は、実は理論の誤りにあるのではなく、「言いかた」「書きかた」による場合が少なくはない





コミュ力をあげることが、なぜ大切なのか。
それは、「本当に怒らなければならないことへの純度をあげるため」でもあります。
論点の手前の「言いかた」「書きかた」で罵りあっているうちに、討論すべき本質からどんどん逸れていってしまう
結局、残るのは論に対してではなく人を憎む気持ちだけ
そうならないためにも、できるかぎりスマートに生きることが大事なのだと、この本は教えてくれます。


まぁ、ドリルのほぼすべてで「×」を選んでしまった僕が言っても信ぴょう性はゼロですが。



恥をかかない コミュマスター養成ドリル
石原壮一郎 著
石黒謙吾 プロデュース・編集
1,540円 (1,400円+税)
扶桑社


あなたの間違いを正します! 死ぬまで役立つコミュニケーションの肝


5つの失敗パターンをQ&A50問で明快解説


【言葉足らず】という迷宮~「もうひと言」「もうひと手間」が悲劇を防ぐ
【早トチリ】という悲喜劇~早トチリを憎んで、相手も自分も憎まず
【裏読み】という冒険~「いい裏」か「悪い裏」か、それが問題だ
【勘違い】という落とし穴~背を向けると、さらに凶暴に牙をむいてくる
【場の空気】という難物~吸い込んだうえで、あえて無視するもよし


さらに、間違えた相手フォローの例にコラムも満載


人と人とのつながりの大切さが見直されている今、「生き残る」のは、心地よくて正確なコミュニケーションが取れる「コミュマスター」である!


人類にとって、私たちにとって、最大にしてもっとも深刻な悩みの種は何か。それは間違いなく「コミュニケーション」です。会話だけでなく、メールやLINEやSNSなど、私たちは常にコミュニケーションまみれの状態にあると言っていいでしょう。人間関係も悩みの種になりがちですが、それも結局はコミュニケーションの問題です

https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594084981


(吉村智樹)
*使用した画像はすべて筆者の撮りおろしです。