【おススメ本】全都道府県民が他人事ではない『年収100万円で生きる -格差都市・東京の肉声-』

2020/6/1 20:00吉村智樹吉村智樹






こんにちは。
ライター・放送作家の吉村智樹です。


緊急事態宣言が解除となり通勤通学が再開したとはいえ、「まだまだ気を許すな」と釘を刺される昨今。


自宅で楽しめる手軽なエンタテインメントと言えば、やはり「読書」


そこで、こんな時期だからこそ読んでいただきたい「おススメの新刊」を紹介してゆきたいと思います。


第5冊目は、新型コロナウイルスが大きく影響する「収入」のお話


話題の本『年収100万円で生きる -格差都市・東京の肉声-』を推薦します。


■誰も逃げられない「収入の格差」問題


5月1日発売にも関わらず、早くも重版出来となり、ベストセラーが期待される話題の本があります。


それが、ノンフィクションライター吉川ばんびさんが初上梓した新書『年収100万円で生きる -格差都市・東京の肉声―』(扶桑社新書)です。





5月は全国ほとんどの大型書店が営業自粛をしていました。
そんな渦中にありながら重版がかかるとは!
人々にとって「年収」と「格差」がいかに切迫したテーマであるかが、うかがい知れます。


■トランクルームで寝泊まり、空き家に不法侵入


この本は、派遣切りにあったり、社会保障を受けることができなかったりなど、さまざまな理由で低収入の暮らしから抜け出せない人々の実情を取材したもの。


家賃が払えないためにトランクルームで息を殺しながら生活する、家がないため激安ネットカフェで暮らし続ける、深夜のマクドナルドで朝まで過ごす、空き家に不法潜入して寝泊まりする、1回3000円で売春する……などなど貧困と格差から這い上がれず生きることも死ぬこともできない16人の当事者に、吉川ばんびさんが迫ります。





かつて『年収300万円時代を生き抜く経済学』という本がベストセラーとなりました。
今はもう、それどころじゃありません
300万円あれば「リッチ」という感覚すらありますよね。


新書は他の書籍よりも時事性が高い傾向にありますが、「新型コロナウイルスでのマスク転売で生き延びる男」のインタビューまで収録されていて、驚かされます。


速い! ギリッギリ寸前まで本を作っていたんだなあ。


そして、貧困に至る理由は、「母親の介護のために軽自動車を購入したら、それが原因で生活保護を受給できなかった」など、本当にいろんなケースがあるのだと思い知らされます。


東京を舞台とした本ではありますが、もちろん東京に限った話ではありません
そう、全国どちらにお住まいの方にとっても他人事ではない
16名の取材から暴き出されるのは、読者である自分も「明日は我が身」という現実
皆、薄い氷を踏み抜かないよう日々、ギリギリで歩いているのです。
しかし、新型コロナウイルスは、その薄い氷すら、さらに削ぎ落そうとしています


■貧困は果たして「自己責任」なのか?


この新刊「年収100万円で生きる」に貫かれる重要なテーマは、昨今はびこる「自己責任論」疑う点にあります。
人々が貧困に陥るのは、格差にあえぐのは、弱者と呼ばれるのは、果たして「本当に自己責任なのか?」「メスを入れるべきは社会構造なのでは?」と疑いの目を投げかけてゆくのです。


特に、ばんびさん自身が経験した阪神淡路大震災による被災、貧困体験、家庭内暴力、ブラック企業でのセクハラ、パワハラなどから、社会に不幸をもたらす悪因が「自己責任論にある」と気付く第五章「自己責任国家に生まれて」は手に汗を握ります。


おそるべき洞察力。
硬質で切れ味がよい文章。
断罪も憐れみもしないニュートラルを貫く視点。
「とてつもない書き手が現れた」と、うなりました。


期待の若き書き手、吉川ばんびさん。
ぜひ、彼女がジャーナリストとしてブレイクする瞬間に立ち会ってみてください。





さて、およそ一ヵ月後の7月5日は東京都知事選挙です。


もしも病気やけがで働けなくなった時、もしも両親の介護で仕事の内容や量に制限が生じてしまった時、それを「自己責任だ」という人がもしも知事になったら……拡がるのはさらなる格差でしょう。


都内にお住まいの皆様には、知事の選出をぜひとも慎重にお願いしたいです



『年収100万円で生きる -格差都市・東京の肉声-』
吉川ばんび 著
本体820円+税
扶桑社


貧困問題に鋭く切り込み、ネットで大論争を巻き起こした週刊SPA!「年収100万円」シリーズがついに書籍化! 


トランクルームに住む「ワーキングプア」、劣悪環境で暮らす「ネットカフェ難民」、母の遺骨と暮らす「車中泊者」、田舎暮らしで失敗した「転職漂流者」、マスク転売をする「新型コロナで失職した男」……etc。


憧れを抱き上京したはずの東京で、絶望しながらも、年収100万円前後で必死に生きる16人の叫びを収録したノンフィクション。


各章の考察コラムには、自身も貧困出身である新進気鋭のジャーナリスト・吉川ばんび氏が担当。


誰もが転落する可能性がある現代社会。
それでもあなたは「自己責任」と切り捨てますか!?


吉川ばんび
'91年、兵庫県神戸市生まれ。フリージャーナリスト、ライター、コラムニストとして活動。大学卒業後、商社、司法書士事務所を経てライターとして独立。貧困や機能不全家族の問題について自らの生い立ち、貧困体験をもとに執筆や問題提起を行う。関心領域は主に格差問題、児童福祉、ブラック企業などの社会問題。ウェブ媒体や雑誌への寄稿のほか、メディアへの出演も多数。現在「文春オンライン」「東洋経済オンライン」「日刊SPA!」などで連載を持つ。

https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594084752


(吉村智樹)


*画像はすべて撮り下ろしております。