【モナリザ盗難!】『失われたアートの謎を解く』で分かる美術品をめぐる衝撃事件

2019/11/18 10:00 明菜 明菜



世界で最も有名な絵画の一つである《モナ・リザ》が、実は盗難事件に巻き込まれていたことをご存じでしょうか?

1911年8月20日、左官職人としてルーヴル美術館に出入りしていた男が他の来場者と同様に入館し、展示室の死角で一晩を明かします。翌日は休館日。男は人目を避けつつ、フックにかけられているだけの《モナ・リザ》を外し、絵画を自分のアパートへ運んだのです。

もちろん、《モナ・リザ》盗難事件はフランス全土を震撼させる大ニュースになりました。懸命な捜査にも関わらず《モナ・リザ》の行方を割り出すことはできず、事態が動くのはなんと2年後。「ルーヴルで盗んだ《モナ・リザ》が手元にある」と通報が入り…?

■『失われたアートの謎を解く』

《モナ・リザ》の他にも、世界中の美術品が盗難や破壊の危機に晒されてきたことを、青い日記帳 監修の書籍『失われたアートの謎を解く』で学ぶことができました。《モナ・リザ》は戻ってきたからまだ良いですが(戻ってきたのですよね?)、フェルメールの《合奏》は盗難に遭ったまま、いまだ行方が分かっていません。ゴッホが描いた複数の《ひまわり》のうちの1つで、かつて日本に存在した通称「芦屋の《ひまわり》」は、太平洋戦争末期に空襲で焼失してしまいました。

美術品を盗む者・壊す者がいる一方で、その記憶を伝える者もいます。『失われたアートの謎を解く』では、レプリカ制作やプロジェクションマッピングにより美術品の記憶を後世に伝える試みも紹介されています。


ラスコー洞窟の壁画

例えば、2万年前に描かれたラスコー洞窟の壁画は、多くの人が訪れるに伴い二酸化炭素や熱、湿気によって劣化していきました。現在は見学できないように閉じられており、代わりにレプリカが制作されています。「ラスコー」のコピーを作るだけでなく、最新のヴァーチャル技術などが応用され、アミューズメントとしても楽しめるレプリカも存在するそうです。

『失われたアートの謎を解く』で語られるのは、人間のエゴによる悲しい盗難や破壊の歴史と、復元して記憶を伝える希望の取り組みです。事実を淡々と語る本なのに、どうしてか著者らの美術愛が伝わってくる、最高にエモい一冊でした。

■「美術を見る人」に何ができるのか?

最後に、本書のあとがきから引用させていただきます。

『盗難に遭った作品だけでも、一冊の本が余裕で書けるほど、多くの事件が起きています。それは決して過去の話ではなく現在進行形のことなのです』

ヨハネス・フェルメール《合奏》

美術館からの盗難のみならず、戦争やテロで破壊される文化財のことも本書で学ぶことができます。また、本書の趣旨とはズレますが、最近でも火災によって歴史的な建造物が失われる事件も相次いでいます。

単に「警備の問題」と言い切れず、人類の規模で守っていかなければならないのが、文化ではないでしょうか。平和な日本で生きていると世界で起こる争いに鈍感になりやすいのですが、本書を読んで改めて自分にできることは何なのか考えました。

■まとめ


美術品は、その価値や思想ゆえに盗難・破壊の対象になることもしばしば。美術史の中では体系的に語られない「人間の欲望の歴史」に焦点を当てたのが、『失われたアートの謎を解く』です。

さて、冒頭の《モナ・リザ》盗難事件の結末は、どうなったのでしょうか?ぜひ、本書を手に取って確認し、エキサイティングな体験をしていただければ、と思います。