まさかの結末……米アップルに翻弄された日本のスケルトンブーム【平成レトロ】

2019/10/11 12:00 山下メロ 山下メロ


■ スケルトンの流行


↑ ファミコンソフト「沙羅曼蛇」

スケルトンという英語は骨格や構造などを意味しますが、日本ではトランスルーセントなど透明の外殻に覆われて「骨格が透けている状態」に使われます。おそらくそれは「透ける」という日本語と「スケルトン」のダジャレ的な語感の一致から混用された結果、和製英語として一般化したものでしょう。


↑ PHSもツートンスケルトンになった

もともと変身サイボーグやミクロマンなどの玩具、キカイダーやデンジマンなどの特撮、ファミコンソフト「沙羅曼蛇」からゲームボーイ、ミニテトリスなど「中身が透けていること」への憧れは、子ども文化の中に長年ありました。しかし、大人をも巻き込み、家電などに影響を与えたのは、Apple社が1998年に発表した一体型パーソナルコンピュータ「iMac」(初代)の登場です。ここから家電までもiMacに倣ったツートンスケルトンを採用しはじめ、「スケルトン」という言葉が普及しました。

↑ 左がSOTEC e-one 433、右が初代iMac

そんな中、ソーテック(SOTEC)という会社がe-one 433という、ブルーのツートンスケルトン仕様のDOS/V機(AT互換機)を1999年7月20日に発表しました。Windowsが動作するiMacともいうべき製品で注目されましたが、即座にAppleから提訴され、9月20日には製造・販売停止の仮処分を受けます。


↑ SOTEC MP301

しかしソーテックは2000年5月にiMac風のツートンスケルトンのMP3プレイヤー「MP301」を発売しました。当時はMP3プレイヤーの出始めで、他社もスケルトン仕様の製品を発売していたのですが、ツートンスケルトンは、e-oneで一日の長のあるソーテックのみです。


↑他社のスケルトンMP3プレイヤー。Rio500

この時点ではAppleがまだ携帯音楽プレイヤーを発売しておらず、ソーテックはAppleに先んじてスケルトンの携帯音楽プレイヤーを発売していたはずでした。

しかし、それに遅れて2001年にAppleが初代iPodを発表するのですが、なんとこれまでのスケルトン路線を覆し、真っ白いボディの商品だったのです。


当時のMP3プレイヤーは32MBや64MBといった記録メディア中心で、アルバム1枚程度しか入りませんでした。対するiPodはハードディスクを搭載して大量の楽曲を持ち運べるため、一気に人気を獲得し、スタンダードになったのです。


その後、当のiMacも白いボディへと変わり、途端に価値が転換し、スケルトンのデザインも、何か古いもの、ダサいものといった印象になりました。そして今度は白を基調としたデザインが日本でも流行していったのです。

完全に日本のデザインの流行はAppleに翻弄されていたのですね。もうすぐ初代iPodの発売日10月23日が来ます。これを機会に、現在のiPhoneに繋がる画期的な商品だったiPodを思い出してみましょう。





では、また次回。





(文と写真:山下メロ)


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これまでの出演時の様子は番組WEBサイトから聴くことができます。
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