YouTubeで話題! ギターと鍵盤ハーモニカを同時に演奏する人がいた!

2019/5/27 13:00 吉村智樹 吉村智樹

▲一見、よくいるタイプのストリートギタリスト。しかし手元をよぉく見ると、なんと! 鍵盤ハーモニカとギターを同時に演奏しているのだ!


こんにちは。
関西在住のライター、吉村智樹です。
僕が住む関西から、耳寄りな情報をお伝えします。


■ギターと鍵盤ハーモニカを同時に演奏する男


YouTubeをさまよっていると、あるギタリストのチャンネルに辿りつきました。
アップロードされた動画をクリックしてみると……「な、なんだこの人は!」


なんと、ギターと鍵盤ハーモニカを同時に演奏しているではありませんか!
左手はギターのネックを、右手は弦を掻き鳴らしながら、鍵盤を叩いています。
スゴすぎる演奏法に目が釘付けになってしまいました。











一般的なハーモニカならば、ギターと同時に演奏する人は少なくはありません。
しかし、鍵盤ハーモニカとギターは、ともに運指で奏でる楽器。
それを片手で並行してやってしまうなんて、究極のマルチタスク!


楽団ひとりと呼びたくなるこのギタリストは、大阪の堺市にお住いの「たにけ」さん(39)。
YouTubeやTwitterで「たにけチャンネル」を運営し、「たにけ奏法」と名付けられたプレイスタイルでほぼ連日、ポピュラーソングなどを演奏する姿を配信し続けています。





いったいなぜ、このようなパフォーマンスが誕生したのか。
そもそも「たにけ」さんは、普段はなにをして過ごす人物なのか。
その謎めいた正体をさぐりに、堺市へと向かいました。





■鍵盤ハーモニカを接着するためギターを一台ダメにした



▲ギターと鍵盤ハーモニカを同時に操る「たにけ」さん


――素朴な疑問なのですが、どのようにしてギターと鍵盤ハーモニカをくっつけているのですか。


たにけ
「ギターと鍵盤ハーモニカに着脱式の粘着テープを貼り、ブリッジのカーブの部分をピタッと合わせるんです。すると、もう落ちないんです。鍵盤ハーモニカはSUZUKIの『メロディオン』を使っています」



▲アコースティックギターと、SUZUKI「メロディオン」が夢の合体!



▲マジックテープで着脱式になっている


――マジックテープでくっついていたのですか。よくできていますね。


たにけ
「鍵盤ハーモニカを落とさず安定させるために苦労をしましたね。セロハンテープで貼ってみたり、ボンドで接着してみたり。おかげでギターを一台、ダメにしてしまいました。試行錯誤を繰り返す日々でした」


――ギターケースにメロディオンを入れるバッグがついているので、てっきりこういう合体楽器がもともと存在するのだと思いました。


たにけ
「そう見えますよね。ここは実は譜面台を入れるためのポケットなのです。けれども、メロディオンがちょうどすっぽり収まったんです。まるで、このギターのために作られたかのようなケースでした」



▲譜面台を入れるポケットに、鍵盤ハーモニカがジャストサイズですっぽり収まる。まるでたにけさんがオーダーメイドしたかのようにぴったり


――ギターと鍵盤ハーモニカが合体したこの楽器は、なんという名前なのですか。


たにけ
「海外にはこれと同様の楽器があって、メロギターと呼ばれる場合もあるようです。僕自身は特に呼び名は決めていないです」








■腕の病気で退職せざるをえず、現在は療養中


――ではプロフィールについて、おうかがいします。たにけさんのご職業は、なんですか。


たにけ
「仕事は休業しているんです。今年の冬まで15年間、病院の職員をやっていて、パソコン前での業務が一日の大半を占めていました。けれども頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)を発病してしまい、首から肩にかけての凝りと両腕のダルさが慢性化してしまいました。現在は薬を飲みながら療養中です」


――いま療養中でいらしたのですか。ギターを弾いて、腕は大丈夫ですか。


たにけ
「はい。長時間は演奏できませんが、リハビリとして役立っている部分もあります」





■ピアノが弾けないと、手を叩かれた少年時代


――初めて楽器に触れたのは、ピアノが先ですか。ギターが先ですか。


たにけ
「ピアノが先です。ピアノ歴は約30年、ギターがおよそ20年です。ピアノは小学校2年生の時から習い始めました。クラスのなかにピアノを弾ける女子と男子がひとりずついて、クラス全員の前で演奏を披露したんです。ピアノを弾くふたりの姿がまぶしくて、僕には衝撃でした。『ピアノって、人を輝かせる力があるんやなあ』って。それで、自分も弾いてみたくなったんです」


――おうちにピアノはあったのですか。


たにけ
「いいえ。とはいえ『習いたい』と言ったらすぐに両親が中古ピアノを買ってくれました。それからは、堺市内にあるヤマハのピアノ教室へ通いつつ、家でずっと練習をしていました。親父がクラシックギターをやっていたものですから、ピアノの横にいて、つきっきりでレッスンしてくれました。思うように弾けないと、時には手を叩かれ、泣きべそをかきながら。ティッシュで涙と鼻水を拭きつつの厳しい練習でしたが、どんどん弾けるようになっていくと、やっぱり嬉しくてね





■卒業後は真面目なサラリーマン。プロのアーティストになるつもりはなかった


――ギターを弾き始めたのは、いつですか。


たにけ
「ギターは高校1年生のときからです。クラスにギターが弾ける友達がいて、彼に習いながら弾き方を憶えました。それまでクラシック一辺倒でしたが、高校に入るとブルース、ジャズ、ロックなど、いろんなジャンルの音楽を聴くようになりました。興味の幅も演奏の幅も広がりましたね」


――プロを目指していたのですか。


たにけ
「いいえ、いいえ。プロのアーティストになりたい気持ちは、なかったです。大学時代には2、3人でバンドのようなものを組んで路上で演奏をしましたが、遊びに毛が生えたような活動でした」


――では、大学卒業後は、すぐに病院の職員さんに?


たにけ
「そうです。卒業後は、いたって真面目なサラリーマン。結婚して、子どもができて。音楽にゆっくりと時間を取れませんでしたが充実した日々でした」





■しっかり演奏ができるまでに半年かかった


――サラリーマンをされていたたにけさんが、ギターと鍵盤ハーモニカを同時に演奏するようになったきっかけはなんでしょう。


たにけ
「あれは2010年の4月のことです。朝9時くらいに『ギターを弾こうかな』と、膝の上に置きました。そのときふと、『まてよ? ギターの上に鍵盤楽器を乗せれば、同時演奏ができるんじゃないか?』と閃いたんです。家には、子どもが学校の授業で使っているヤマハのピアニカがあったので、試しにギターの上に置いて吹いてみました」








――初めて試し弾きしてみて、いかがでしたか。


たにけ
「ピアニカを吹きながらギターを弾いてみたら、ふたつ楽器の音色を同時に出すことができたんです。はじめて弾いたのは『子犬のワルツ』だったかな。簡単な曲でしたので、弾き通せました」


――簡単ではない曲を弾けるようになったのは、いつ頃ですか。


たにけ
「ようやく『曲を演奏できるかたちになったな』と思ったのは2、3か月後ですね。自分用の鍵盤ハーモニカを買って、ポジションを決めるために、それくらいの時間を要しました。『どの角度なら弾きやすいのか』『どの位置なら親指でしっかりとしたストロークができるのか』などを研究しました」


――レパートリーが増え始めたのはいつ頃ですか。


たにけ
「半年くらい経ってからですね。オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダとか、ヘイ・ジュードとか、愛の賛歌とか、ロックやポップス、シャンソンの名曲を弾けるようになりました。そして、だんだん『いろんな曲を弾きこなしてみたい』『たにけ奏法を極めてみたい』と考えるようになりました」


――いま何曲くらい弾けるのですか。


たにけ
100曲くらいです。練習しながら、少しずつレパートリーを増やしています。この頃は米津玄師とか、あいみょんとか、意識して最新のJポップも聴くようになりました」








■遂に演奏法をYouTubeやTwitterで大公開!


――YouTubeやTwitterでチャンネルを開設しようと思われたのは、なぜですか。


たにけ
「仕事を辞め、時間ができて、これを機会に『自分独自の演奏法を発信してみよう』と思ったんです。単なる演奏の披露ではなく、練習してきたプロセスも語りながら」


――皆さん「たにけ奏法」に驚いて、たちまち拡散しましたね。

たにけ
「自分でも驚くほど、みるみるうちに。プロの演奏家の方々もリツイートしてくださって、『プチバズる』状況を経験しました」


――拡散をきっかけに、ライブもされたそうですね。


たにけ
「そうなんです。ウクレレの第一人者である鈴木智貴さんが動画をご覧になり、『一緒にライブしませんか』ってお声がけをいただけて。それでカフェで共演をしました。嬉しかったし、楽しかったですね」


――「たにけ奏法」は音色が柔らかいし、しかもひとりでふたりぶんの演奏ができるのでスペースもとらず、カフェでのライブにぴったりですね。


たにけ
「耳にやさしい音楽ですしね。ライブハウスに限らず、カフェや、さまざまな業種のお店に合った曲を届ける、そんな演奏活動もこれからやってみたいです。オリジナル曲もどんどん増やしてゆきたいです」





■「たにけ奏法の奏者を増やしたい」


――今後は、どのような展開を考えておられますか。


たにけ
「たにけ奏法の奏者を増やしたい。そんな想いがあります。いろんな人に、この奏法で弾いてほしい。さらに、こういう楽器そのものが一般的になればいいなと思います。『自分は、あとの人たちが歩きやすい道を拓かなければならない』と、ヘンな使命感みたいなものが芽生えていますね


――ということは、プロのアーティストを目指しますか。


たにけ
「う~ん。将来はどうなるのか……。サラリーマンに戻るか、演奏家として生きるか。階段の踊り場にいるような状態です。いまは、とりあえず治療に専念しています」


ふたつの楽器を同時に演奏する人は、ふたつの道の岐路に立つ人でもありました。
たにけ奏法の音色が沁みるのは、プレイヤー自身の生き方が反映されているからでしょう。


たにけさん、これからも動画の新作アップを楽しみにしています。
そして、「階段の踊り場にいる」といういまこそ、ゆっくりと治療なさってください。



たにけチャンネル
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たにけチャンネルTwitter
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吉村智樹
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