〇〇をなくして顧客が流出……ポケベルの悲劇が生んだ絵文字【平成レトロ】
■ はじめに
花見シーズン到来ですが、広い公園などでは目印もなく集合するのが大変ですね。しかし、今でこそスマホのGPSで座標を送ったり、即座に周辺の高解像度の画像を送ったりできるようになりましたが、ポケベルや携帯電話の時代や、それ以前はどうだったのでしょうかね。今回はそんな移動体通信の進化の中で生まれた絵文字について振り返ってみたいと思います。
絵文字といえば NTTドコモがはじめた「iモード」がその端緒となっています。それ以前から文字だけのコミュニケーションが中心だったパソコン通信において、「(^_^)」などの顔文字を使って感情を表す文化はありましたが、いよいよ文字セットとして一揃いになったわけですね。そのキッカケとしてあまりに有名なのが「ハートマーク事件」でしょう。
■ ハートマーク事件
↑ 入力方法が分からない人も多いので、自分の番号が書かれた入力表を配るという文化があった
話はポケットベルの時代にさかのぼります。文字を送信できるようになっていた時代に、ドコモは最新機種の文字セットの中からハートマークを外してしまいました。それによって一気に顧客が競合のテレメッセージ系列に大量流出してしまったのです。
↑ 右がドコモのセンティー、左がテレメッセージのモーラ。
実はコミュニケーションにおいてハートマークが非常に重要だったと気づかされることになったのですね。いわゆる言語以外の手段で感情を伝えることの大事さに気づいたドコモは、ほどなくハートマークを復活することになったというわけです。
↑ ドコモのハートマークは「88」。「GO!GO!7188」というバンド名もポケベルに送る「557188」からきているとか。
そして、そのあとに携帯電話の時代が来ます。ドコモは携帯電話でインターネットが見られる革新的なサービス「iモード」を開始。すでにハートマークの重要性を理解していたため、コミュニケーションにおいて重要な役割を果たす絵文字をたくさん用意して、iモードサイトやメールなどで使えるようにしたのです。
今では絵文字はiモードの枠を飛び出して一般のインターネットのWEBサイトにも用いられ、iPhoneでも標準サポートするようになっています。そして「EMOJI」として日本語の「絵文字」が世界の共通語になり、ニューヨーク近代美術館にも収蔵されました。
ガラパゴスと揶揄された日本の携帯電話文化の象徴たる「iモード」によって生まれた絵文字は、世界標準になって行ったのです。
では、最後にこちらをご覧ください。
なんとiモードのノベルティグッズとして、湯呑みが作られ、それが絵文字が柄だったのです。やはり象徴なのでしょう。伝統的な湯呑みと最先端のデジタルネットワークの組み合わせが素晴らしいですね。
左のカラーはiモード6周年記念版です。
では、また次回。
(文と写真:山下メロ)
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