キャッチーな動物たち勢ぞろい!国宝、超絶技巧、屏風、能面、切手なんでもありのすごい展覧会。

2018/12/23 20:30 KIN KIN


三井記念美術館 展示室4 ※正面にあるのが円山応挙 国宝「雪松図屏風」

江戸時代の天才画家 円山応挙が描いた国宝「雪松図屏風」。三井記念美術館では毎年年末年始の展覧会でこの国宝を展示することが多く、今年はこの屏風に加えて動物をテーマにした作品を並べた展覧会が開催されています。これがなんでもありの面白い展覧会でした!



三井記念美術館 展示室5 香合などの展示

三井記念美術館というと茶道具や三井家伝来の品が並ぶ通好みの展示が多いというイメージを持つ方もいるかもしれません。確かに展示品は由緒ある作品ばかりなのですが、今回は動物をテーマに生き物の造詣の面白さやキャッチーさに注目している展覧会でした。何と言っても屏風や掛け軸などの絵画だけでなく、彫像や茶道具、能面から切手まで、と幅の広い展示物でとても楽しく見ることができる展覧会になっていました。その一部をご紹介します。

※写真は内覧会により許可を得て撮影をしております。

まず初めに、この下の写真の花入を見てください。「あれ、動物がテーマの展覧会って言っていたよね?」と思った人もいるのではないでしょうか?そうですよ、そうなのです。では、これは何の動物がモチーフなのでしょうか?



惺斎「竹置筒花入 銘 白象」

この作品の名称を見てください。なんと、「象」なんです。この太い竹の根本の形状が象の足に見えるからこの銘をつけたとのこと。実物を見ると判りますがこの太い肉厚感は確かに像の足に見えます。この花入の横にあるケースに愛嬌のある象の彫像もあるのでぜひセットで見てみてください。



高瀬好山「昆虫自在置物」

タイトルに「動物」とありますが哺乳類だけでなく生き物として広く捉えて虫や貝もいます。ここ数年話題の超絶技巧系です。タイトルに自在と書いてあるので、これ関節が動くのですよね。可動式リアル昆虫の置物、すごい贅沢な世界です。



安藤緑山「染象牙貝尽置物」

超絶技巧系といえばこの人の作品も見逃せません。一体なんで象牙で貝を彫ろうと思ったのでしょうね?ものすごくリアルです。普通に置いてあったら本物の貝にしかみえません。



国宝 「志野茶碗 銘 卯花墻」

さて一度、動物から離れて今回の展覧会における目玉でもあるのが国宝作品の展示です。茶碗の国宝作品「卯花墻」。他の美術館の様々な展覧会でも見ることができますが、ここではなんと言っても茶室風に仕上げた展示として見ることが出来ます。茶道具ですからね、畳の上で見るのがまた素敵に見えます。



国宝 円山応挙「雪松図屏風」

もう一つの国宝作品、展覧会のタイトルにもなっているこの「雪松図屏風」。雪に見える白いところは実は紙の地の色が見えている部分なのです。つまり雪を白く塗ったのではなく周囲を塗って雪の部分を白く塗り残しているのですね。それでこの細かい表現、凄いです。応挙は三井家とは懇意にしたいた様で今回も幾つかの作品が展示されています。三井家の床の間にあった鹿を描いた小襖絵などもありました。

ちなみに屏風は制作当時は畳の上に置いていたので今よりも少し低い目線で見ることを想定されていたと思います。ケースから少し離れて正面に立ち、少し目線を落として観てみて下さい。迫ってくるような立体感やリアルな迫力が楽しめます。



長沢芦雪「白象黒牛図屏風」

さて、動物関連の作品に戻りますと、まずは師匠である応挙の「雪松図屏風」の近くにあったこの芦雪の作品。プライスコレクションにある長沢芦雪作の屏風とほぼ同じ絵。芦雪が「アレと同じものが欲しい」という注文(どちらが先に描かれたか判りませんが)で描いたものでしょうか?とにかく迫力があります。個人蔵で初公開だそうですので今のうちに見ておいたほうが良いでしょう。黒牛の横腹のところにいる白犬の間抜けな顔した可愛さは必見ですよ!



野々村仁清「信楽写兎耳付水指」

これは、面白い。横から見たらかわいい!水差しの耳が兎の耳です。ウサギは子孫繁栄の象徴だったり、色々とめでたい動物だからか、他にも幾つもウサギモチーフのものがありました。正面から見たウサギの絵が描かれている楽茶碗、樂旦入「黒楽兎絵茶碗」酒井抱一「秋草に兎図襖」なども必見です。



大西浄林「十二支文腰霰平丸釜」

このボテッとした丸釜、これが一見すると地味に見えますが、実物を見るとなかなかの迫力。これは実際に見ないと良さがわからない一品。釜の胴部に十二支の絵があるので、年末年始の展覧会によく出てくるそうです。



三井記念美術館 展示室6 ※切手の展示

動物や生き物の展示品と言っても本当に様々で、切手のコレクションの展示もありました。他にも蒔絵の作品、能面、香合など。その中で鹿を描いた屏風や彫刻作品が多くありました。三井家の元をたどると藤原家となり、そこから藤原家とつながりが深く、神の使いである鹿のモチーフを好んだ様です。



三井記念美術館 エレベータホール 池田勇八「嶺」

そういえば……この美術館のエレベーターを降りてすぐに迎えてくれるのがこの鹿でした。三井記念美術館に来たことのある人は見たことがあるかと思いますが、そんな謂れがあったとは。

三井家が好んだ鹿、可愛らしい兎、江戸時代にモチーフとして流行った鶏、龍などの想像上の動物、昆虫や亀といった小さな生き物などモチーフになっているものも様々でした。国宝もあり、迫力ある屏風や茶道具もあります。懐かしい切手なども楽しめる、本当になんでもありなこの展覧会、かなり楽しめるものでした。これはオススメします!


【展覧会情報】
「国宝 雪松図と動物アート」
開催期間:2018年12月13日(木)~2019年1月31日(木)
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(12月24日、1月14日、1月28日は開館)、12月26日~1月3日、1月27日
会場:三井記念美術館
http://www.mitsui-museum.jp/
主催:三井記念美術館