これスター・ウォーズじゃないよね。パチモン満載BAR「酒場のパチモンウォーズ」

2018/12/24 17:00 吉村智樹 吉村智樹

▲「思ってたんと違~う!」。どこかで見たことがあるような、でもビミョーに違うパチモンたちがお出迎え


こんにちは。
関西在住のライター、吉村智樹です。


この連載では、僕が住む関西の耳寄りな情報をお伝えしてゆきます。
今回はその第50回目!となります。





■これ、スター・ウォーズじゃないよね。 「パチモン」でいっぱいのBARがあった!


今回でめでたく50回目を迎えたこの「関西大紀行 気になるウエスト!」、2018年最後の配信となります。


さて来年2019年のお楽しみといえば映画「スター・ウォーズ」新3部作の完結編『スター・ウォーズ/エピソード9(仮題)』の公開予定ではないでしょうか。「公開まで待ち遠しい!」というあなた、ぜひ、こちらのお店でさらにテンションを高めていただきたい。それが大阪にある「酒場のパチモンウォーズ」



▲「パチモン……ウォーズ?」。天五中崎通商店街に、素通りを許さない二度見必至の看板が!


2018年4月22日にオープンした「酒場のパチモンウォーズ」は、その名の通り、なんとなくスター・ウォーズ? のような気がする、言わば「パチモン」でいっぱいなBAR。さまざまなお酒や、驚くほど品数が多くておいしい“おばんざい”(お惣菜を意味する関西弁)をアテに、スター・ウォーズに近くて遠いもうひとつの世界にひたれる、日本で唯一のお店です。



▲謎のスターロボット



▲とってつけたような頭。とても音波で動くハイテク仕様には見えない









▲提灯ランプシェードも特注


エピソード番外編とも言えるこの奇特なお店のマスターは、テムラ卿日本一の「パチモンコレクター」として知られている方です。コレクション歴は、なんと20年! テムラさんは日頃はCMディレクターとして活躍し、夜はこの「酒場のパチモンウォーズ」でスタンドに立っています。



▲日本一の「パチモンコレクター」ことテムラ卿


ディスプレイされたグッズは、どれもライトセーバーのような棒で頭をぶん殴られたかのごとき強烈なものばかり。日本製の駄玩具や共産圏でひっそりつくられた粗末なおもちゃなど、世界中のパチモンがズラリ。警察の白バイにまたがったダース・ベイダーらしき黒ずくめの怪しい男。パーマをあてて授業参観に来たおかんにしか見えない、レイヤ姫にほど遠い女性、半分爬虫類と化したヨーダのヨーナ生き物などなど、どれも得体のしれないB級なフォースを放っています。



▲帝国軍かと思いきや、敵はドリフの孫悟空っぽいキャラクターたち



▲いろいろ違う……



▲白バイに乗ってる!



▲お、おかん……



▲近所のおっちゃん


なかにはパチモンのプラモデルを実際に組みたて、しっかりと塗装をほどこした作品も。もしもあなたが「パチモンなんて」と小ばかにしていたとしても、これらグッズを見るときっとパチモンにしか醸しだしえないストレンジな魅力覚醒するに違いありません



▲あくまで「宇宙スーパーコンボイ」のプラモデル



▲パチモンもしっかり組み立てて塗装を施すと、それなりにカッコいい


いったいどういういきさつで「パチモンでいっぱいなBAR」というトンデモないアウター・リム(外縁領域)が誕生したのが、マスターのテムラさんにお話をうかがいました。


■パチモンは貴重。2度と手に入らない


――テムラさんはパチモンをどれほどお持ちなのですか? 


テムラ
「ちゃんと数えたことはないのですが、数千個かな。自宅の8畳の部屋にびっしり置いています。この店のショーケースに並んでいるのは、その一部です」



▲パチモンはショーケースにしっかり収蔵されている



▲これほどの数のパチモンが一挙集結した店はほかにない


――パチモンなのに、と言っては失礼ですが、非公認グッズがショーケースにしっかりと保管されているのが壮観です。


テムラ
「触って壊されると困るので。パチモンは壊れたらもう出会えないし修理もできない。パチモンのほうが2度と手に入らないから貴重なんです」


――なるほど! 確かにパチモンは貴重ですよね。そしてそんな貴重なパチモンがこれほど一か所にひしめいている場所は世界でもまれでしょう。パチモンを愛でながらお酒が飲めるお店を開いた理由は?


テムラ
「学生時代から”コレクションを見てもらえる呑み屋さん”をつくりたかったんです。CMディレクターの仕事をするうちに、内装でSF的な世界観を再現できる美術スタッフと知りあうことができたので開店する念願がかないました」



▲ガスメーター隠しが凝っている


――お酒だけではなく、日替わりのおばんざいが多種多彩で、しかもノーチャージだと聞いて驚きました。さきほど「大根の柚子胡椒あんかけ」(450円)と「ミニハンバーグ トマトソース煮込み」(550円)をいただきましたが、絶品でした。


テムラ
「僕自身が食べながら飲むのが好きだし、フードで手を抜いているお店にはしたくなかったんです。『映画のことはよく知らないけれど、おばんざいがおいしいから』と言って通ってくださるお客さんもいらっしゃいます」



▲日替わりの多彩な手づくり「おばんざい」が絶品!


■スター・ウォーズが日本公開される以前からノベルティグッズをコレクションしていた


――テムラさんがスター・ウォーズに関心をいだかれたのは、いつですか?


テムラ
「小学校3年生くらいのときやったかな。少年雑誌に『来年、スター・ウォーズという映画が日本で公開されるぞ!』という情報が載っていたんです。どういう映画なのかはぜんぜんわからなかったんですが、スチール写真を見る限り『これは、すごそうな映画やな』と感じました。映画が公開される前からすでにコカ・コーラがキャンペーンを始めていて、瓶入りコーラの王冠の裏にスター・ウォーズのキャラクターたちがプリントされており、まだ映画を観ていないうちからそれをコレクションしはじめていました


――映画を観る前からコレクションをはじめたんですか! さすがです。実際に映画をご覧になられて、どのように感じましたか?


テムラ
「1978年に公開されて、お父さんに映画館へ連れていってもらって、大きな画面で観ました。そして、やっぱり一発で好きになりましたね。観る前から『きっと自分はスター・ウォーズを好きになるに違いない』とは思っていましたが、予想をはるかに超えて面白くて。いまでこそアベンジャーズなどSF映画がたくさんありますけど、当時はあんなに本格的な作品はほかになかったですから」


■100円で投げ売りされていたパチモンが新たな戦争の始まりだった


――テムラさんは日本一の「パチモンコレクター」として知られていますが、パチモンを集め始めたきっかけはなんですか?


テムラ
「もともと登場キャラクターのひとり“ボバ・フェット”が好きで、ボバの正規のおもちゃやグッズを買い集めていたんです。ただ、凝りすぎて、めちゃめちゃレアなところまで集めきってしまいましてね。知らない商品が市場やネットオークションに出てこなくなってしまったんです。『これ以上、集められるものがないな~。買いたいものがもうないな~』と思っていたところ、大阪のトーイショーで一個100円で投げ売りされていた粗悪なパチモンを見つけたんです。段ボール箱にガサっと大量に入れられていて、『お、なんやこれ?』と思って手にしたのがきっかけですね」



▲パチモンを初めて手にしたとき、あまりの「ちゃち」さゆえに、しげしげと見つめてしまったという


――パチモンを手にされて、どのように思われましたか?


テムラ
「笑えました。塗りが甘いし、デザインがヘンやし。スター・ウォーズを知らない人が見ても『あ、これはパチモンに違いない』ってわかるほど造りが雑で似ていない。そこがいいなと思ったんです」








■「パチモンには、ウケを狙っていない面白さがある」


――おっしゃるように、パチモンならではチープさが愛らしく、ユーモラスだなと思いました。「パロディ」ではないんですよね。


テムラ
「パロディは狙っている面白さ。パチモンは、ウケようとは思っていない面白さ、狙っていない面白さなんじゃないかな。パロディ商品もよっぽどセンスがよかったら買いますけれど、狙いすぎている場合が多く、欲しくなるものはほとんどないですね」



▲もしもウケを狙っていたならば、このわびさびな味わいは醸しだせない


――パチモンは「偽物」ともまた違うんですよね。


テムラ
「ぜんぜん違いますね。本物だと思わせて、人を騙して買わせようとする精巧に作られた模造品は、僕は大嫌いなんです。3D プリントしたようなものは、なんの味わいもない。そうじゃなくて、あからさまなパチモンのおもちゃが好きなんです『ニセモンは嫌い。パチモンが好き』なんです」


――「ニセモンは嫌い。パチモンが好き」って深い言葉ですね。こういったパチモンはどこでお買い求めになられるのですか?


テムラ
「おもにインターネットです。集めはじめた当初は古いプラモデル屋さんをまわって売れ残りを漁っていたんですけれど、月日が経つとともに、お店もどんどんなくなってしまって。なのでヤフオクやイーベイで買ったり、Facebookやmixiなどで知りあった友達とトレードしたりしています」


■パチモンの値段が高騰! 本物より高額な商品も


――ネットオークションでは、パチモンは安いんですか?


テムラ
「パチモンだから安いということはないです。それどころか、最近パチモンの人気がどんどんあがってきて、正規品より値段が高くなっているものもたくさんあります。5、6年前なら安価で買えたものが、いまは30万円台にまではねあがっている。パチモンってもともと大切に扱われていないから現存しているものの数が少ない。なので先ほども言いましたが、パチモンのほうがヴィンテージなんです」


――「パチモンのほうがヴィンテージ」! パチモンのほうが一期一会のめぐりあわせなんですね。およそ20年に渡ってコレクションをしてこられ、これまで総額どれくらいお遣いになりましたか。


テムラ
「う~ん、計算したことがないですが、500万円いかないくらいだと思います。すごいコレクターに較べたらぜんぜんかかっていないです。安いものだと100円、200円で買えますしね。高いもので6、7万円。それ以上の金額だと欲しくても買えません」


――いやあ、パチモンのコレクションに500万円かかっているのは相当すごいと思います。そこまで惹きこまれる魅力は、いったいどこにあるのでしょう。


テムラ
「僕は“パチモンなりのデザイン性”だと思っています。パッケージとか、『本物を丸パクリしたら怒られるやろう』『本物とは関係ないと言いはらなくてはならない』という負い目の部分が、創意工夫を生んでいる。違うものだとアピールするためにどっかを変える工夫、そこに僕はクリエイティブを感じるんです



▲「パチモンにはクリエイティブを感じる」というテムラさん


「パチモンにクリエイティブを感じる」というテムラさん。おっしゃる通り、この異形のモンスターたちの背中に駄玩具工場のおっちゃんたちが頭をひねった形跡が見受けられ、そこに「下町のジェダイ」たちの存在を感じるのです。

この「気になるウエスト」は2019年も関西の、人肌のぬくもりを感じるクリエイティブなシーンをお届けしてゆく所存です。では皆様、よいお年を。新しい年号となる2019年がフォースと共にあらんことを。



酒場のパチモンウォーズ
住所●大阪府大阪市北区黒崎町8-12
電話●06-7708-1149
営業●18:00~24:00
定休日●日曜日



取材・執筆 吉村智樹
https://twitter.com/tomokiy