さがせ! 関西の「高輪ゲートウェイ」っぽい駅

2018/12/17 15:00 吉村智樹 吉村智樹



こんにちは。
関西在住のライター、吉村智樹です。


この連載では、僕が住む関西の耳寄りな情報をお伝えしてゆきます。
今回はその第49回目となります。





■関西にもある! 語感が「高輪ゲートウェイ」っぽい駅


2020年に東京のJR山手線に開業する新駅の名称が「高輪ゲートウェイ」に決まりましたね。


山手線に新駅が置かれるのは昭和46年(1971年)の「西日暮里」駅以来、49年ぶりなのだそう。本当におめでとうございます。さらに49年後の2069年には「西高輪ゲートウェイ」駅が生まれているかもしれませんね。


「高輪ゲートウェイ」という駅名を初めて耳にしたときは、「木更津キャッツアイ」を思わせる斬新な語感で、ずいぶんと思い切ったなーという印象がありました。公募の上位ではなく130位から選んだといういきさつも、ゲートウェイ感がありますよね(意味不明)。


折しもこの記事を書いている12月8日(土)は「春香クリスティーン」が結婚することを発表した日。新駅発表のおめでたい時期とかなさったため、なんだか春香クリスティーンも「そういう駅名」なのかと錯覚してしまいそうです。


このように東京の山手線にナウいネーミングの駅が爆誕するわけですが、関西だって負けてはいられません。「高輪ゲートウェイ、っぽい駅はないのか?」と、椎名林檎の丸の内サディスティックを聴きながら探してみました。


●「京コンピュータ前(神戸どうぶつ王国)」駅 神戸新交通ポートアイランド線





「ポートライナー」の愛称で親しまれる、神戸の湾岸を走る路線に登場した「京(けい)コンピュータ前」駅


「前」と言っても、京コンピュータという名前の会社や施設が駅前に建っているわけではありません。「理化学研究所 計算科学研究機構」のなかに備えられた次世代スーパーコンピュータ「京(けい)」の最寄りにある駅という意味で名づけられているのです。


関西には名だたる大企業の本社がたくさんあります。しかし、それを差し置いて、ひとつのコンピュータが駅目に冠されるって、すごくないですか。関西の頭脳、すなわち脳みそを崇めるように駅名にしているのですから。どんな企業であれコンピュータなしでは存在しえないことを教えてくれる、なんだか「火の鳥 未来編」を想起させる駅名です。


副駅名が「神戸どうぶつ王国」なのも、まるでコンピュータが生き物を配下に置いたかのようなサイバーパンクなセンスを感じずにはいられません。


ちなみに「京(けい)」はそれ自体がスーパーコンピュータという意味を含むので、「京コンピュータ前」という駅名はぶっちゃけ二重表現です。「京前」だけだと神戸の駅としては混乱をきたすという点も理解できますが、そこは「コンピュータの力でなんとかならへんかったんかいな」という気がしなくもありません。


●「スクリーン」駅 近江鉄道





駅名が「スクリーン」! 滋賀県を走る近江鉄道多賀線の駅です。もしも映画のようなロマンチックな旅がしたいのならば、出発点にしたい駅ですよね。


この「スクリーン」駅は、前:大日本スクリーン製造、現:SCREEホールディングス彦根事業所の敷地内に存在する請願駅。自動車通勤率を下げる目的と利便性を高めるために近江鉄道に要望し、およそ1億円の設置費用を提供して設けられました。


社員通用門は従業員と関係者しか利用できませんが、工場を通らずに駅へ出入りすることは可能で、一般の方も乗降車のご利用になれます。「うちの最寄り駅? スクリーン!」ってかっこいいですもんね。


近江鉄道には、ほかにも「京セラ前」駅や「フジテック前」駅が存在し、乗車しているだけでビジネス戦線に参加している気分になります


駅舎の外壁がスクリーン素材になっていて、駅名はプロジェクションマッピングで上映されている、なんとことになったら、かなり観光客が訪れると思うのですが、いかがでしょう。売店で売る名物はポップコーンで。


●「尼崎センタープール前」駅 阪神電鉄





「高輪ゲートウェイ」にもっとも近しい感覚の駅が、兵庫県尼崎市にある「尼崎センタープール前」駅ではないかと思います。なぜならば、「ゲートウェイ」も「センタープール」も、駅前にそういった名称のものは存在しないからです。つまり概念であり、サーガだからなのです。


しかも「ないものの前」だと名乗っているわけですから、これは深い。哲学的であり、ひとつ間違えれば「あたおか」(by見取り図)な抽象世界です。


では「センタープール」とは、いったいなんなのか。諸説ありますが、尼崎競艇場の競走池のことだという説が有力です。なのでプールと言っても泳げるわけではありません。


昭和27年に尼崎競艇場が完成した際に、往時の尼崎市長が競走池につけた言わばニックネームであり、「尼崎市の中心的(つまりセンター)財源になるよう願いが込められていた」というお話を地元の方から聴いたことがあります。


だったら「尼崎競艇場前」駅でいいのではないだろうか? と普通ならば考えますが、実はこの「尼崎センタープール前」駅は、もともとは臨時駅。暫定的に造られたプラットホームからボートレースが行われる競走池の様子を観戦できたことから「センタープールが駅名になったのだ」と地元のおっちゃんが話をしていました。


バタバタな状況で誕生した臨時駅だったがゆえに、駅名が生まれた正確ないきさつの記録が残っていないのでしょうね。


駅と競走池のつながり説はちと強引な気がしますが、そういった点にもゲートウェイ(二つの領域をつなぐ出入り口)的な世界がありますよね。



今回このように関西の「高輪ゲートウェイ、っぽい駅」を探してみたのですが、万博開催が決まった大阪なら、無理に探さなくとも同趣の新駅が未来に誕生するのではないかと予想します。行政もなかなかレアな感性の持ち主揃いですので、同じようなことを「やらかしかねない」という気がします。



イラスト せろりあん


取材・執筆 吉村智樹
https://twitter.com/tomokiy