食欲の秋! 超極私的おすすめ「これが大阪のうまいもん!」

2018/10/31 11:30 吉村智樹 吉村智樹



こんにちは。
関西在住のライター、吉村智樹です。


この連載では、僕が住む関西の耳寄りな情報をお伝えしてゆきます。
今回はその第43回目となります。





■「まんぷく」必至! これが大阪の「うまいもん」


「食欲の冬」「食欲の春」「食欲の夏」が終わり、いよいよやってきましたよ。「食欲の秋」が!


今回は、そんなふうに年がら年中、食欲の奴隷として生きている僕が、超極私的に選んだ、おすすめ「大阪のうまいもん」を3品ご紹介します。この秋に大阪旅行を計画されている方々のお役にたてれば幸いです。どれもワンコイン~1000円前後でいただけるので、とってもリーズナブルですよ。


■はり重の「ビーフワン」


道頓堀に大正8年創業。すき焼き・しゃぶしゃぶの名店「はり重」。なかなかに敷居が高い銘店ですが、ここの一階に、気軽に入れる、レトロな雰囲気に包まれたカレーショップがあるのです。


「カレーショップ」ゆえに、もちろん名物はカレーライス。なのですが、僕が今回お勧めしたいのが「ビーフワン」(800円+税)。本店で使っている高級黒毛和牛の切り落としと玉ねぎ&青ねぎの“Wねぎ”を玉子でとじたごはんです。トッピングされた山椒の香りがさわやかピリリ。添えられた福神漬と熱いお茶がこれまたうれしい。ほっとするお味なんです。





「牛肉を玉子ととじたごはんって……いやあの、それ、大阪でなくたって食べられる『他人丼』や『開花丼』と同じだよね? どう違うの?」


違うんです
「ビーフワン」と「他人丼」「開花丼」とでは、まず決定的な違いがあります。それは、そもそも「丼ではない」ということ。器は丼ではなく、お椀なのです。「ビーフワン」とは、すなわち「ビーフ椀」であり、かつ「ナンバーワンのおいしさ」とかけてあるんですって。


丼のように底が深くないため、片手でひょいと持ちあげられます。正直、盛られている量はそれほど多くありません。食べ終わっても腹八分目。食が細い方でもぺろりと平らげられます。今期NHK朝ドラに反しているようですが「まんぷく」にはなりませんし、まして「くいだおれる」のは無理。


お腹がいっぱいにならないため、いいこともあるんです。デートだと「もう一軒、食後に法善寺横丁の夫婦善哉で甘いものなんてどう?」と次のコマへと誘いやすい。そのままふたりで水かけ不動さんを参拝すれば、いいデートコースになりますよ。


もうひとつ、ビーフワンには、味つけにおいても「他人丼」と違っている点があります。それは、ダシに「すき焼きの割り下」が使われていること。割り下なので、関西風にしてはちょい濃いめで、かつ甘~い香りと後味があります。煮切ったお酒(みりん?)の風味がたまりません。このほんのりとした甘みがお肉の気品をいっそう引きたたせ、満足感を深めてくれるのです。


■夕霧そば 瓢亭の「お初そば」


大阪最大のターミナル駅「梅田」。24時間、人の行き来が絶えない大阪のハブ梅田のなかで、奇跡的に落ち着いた風情を感じられる場所が、「曽根崎心中」の舞台となった露天神社。通称「お初天神」の周辺です。


このお初天神さんの横に、まさに「しっぽり」といった情趣をたたえるたたずまいの、蕎麦の名店「瓢亭」(ひょうてい)があります。


名物は「夕霧そば」。柚子の表皮を細かくおろし、石臼で挽いた真っ白なそば粉に混ぜ、特別に入念に打ったという香り豊かな変わりそばです。「大阪はうどんだけでやなく、蕎麦かてうまいんやで」と胸を張れる爽快な逸品なのです。


だったら「夕霧そば」を紹介すればいいものを、先述した「ビーフワン」のように、僕は二番手、三番手に控える、いぶし銀なメニューが好きな性分。


僕が「瓢亭」で推薦したい絶品メニューが「お初そば」(1,150円+税)。梅肉とシソ酢を混ぜて打ったそばで、麺がピンク色を帯びています。その上から山芋と海苔の千切りをトッピングし、これに梅だしをまわしかけていただきます。


冷ややかな梅切りそばに、酸味があるだし。山芋のしゃくしゃくした食感も手伝い、ヘルシーな「和サラダ」といった印象。食前酒として添えられた甘めな梅酒がじんわりと胃を温めてくれて、食欲はさらに増します。





僕はお酒を一滴も飲まないのですが、イケる人ならば、この「お初そば」はさらにたまらんでしょうね。お酒のシメによく、反対に酒宴へと向かうスタートダッシュをかけるひと品としてもプッシュしたい。まだ食べたことがないという方、ぜひ「お初」挑戦してみてください。


■ニューライトの「セイロンライス」


アメリカ村のはずれに位置する場所に、およそ60年前からあるレストラン「ニューライト」。カレーライスやカツ丼、焼きそばにラーメンもある、若者の街のお母さん的な存在です。年季が入りまくり、パンクバンドのライブやクラブイベントのフライヤーがびっしりと貼られ尽くした外観は、はじめに書いた「はり重」とは正反対の意味での敷居の高さを感じさせます


しかし、勇気をもって、ぜひとも足を踏み入れてほしいのです。とにかくもう、メニューがどれもこれも安くてうまい! イタリアンスパゲティもオムライスも550円。ラーメンに至っては一杯たったの370円。そして、なにを食べてもハズレなし。


そのなかでもとりわけ僕の大好物が「セイロンライス」(500円)。これは、言わば「びちゃびちゃのカレー雑炊 生玉子落とし」。見た目は決して上品ではありませんが、だしで割ったカレーソースとしゃばしゃばごはんの相性のよさは「DOPE!」。うまいものが喉を通る快感を、こんなに身体で教えてくれるなんて、マジリスペクトですよ。





実はこのセイロンライスは、僕の青春の味。かつてアメリカ村にあった編集プロダクションに勤めていた頃、分刻みなスケジュールのなか、安くて待たずにさっと食べられるこのセイロンライスに、どれほど助けられたか。


「ところで、セイロンライスって、なんだよ。セイロン島にこんな食べ物ないだろ」。おっと、そんな正論は言いっこなし。「U・S・A」がヒットしているいまだからこそ「アメリカ村の味」を再評価していただきたい。


いかがでしたか? 「たこ焼き」「お好み焼き」「串カツ」もおいしいですが、それだけではない浪花グルメを、どうぞご賞味ください。



イラスト せろりあん


取材・執筆 吉村智樹
https://twitter.com/tomokiy