あこがれのスーパースターに会える!?すみだ北斎美術館の企画展がスゴイ

2018/10/25 13:05 yamasan yamasan
葛飾北斎(1760-1849)といえば江戸時代の浮世絵師の中でも特にビッグネームのスーパースター。そんなあこがれの北斎さんに会える美術館が都内にあるというのはご存知でしょうか。
その名もずばりすみだ北斎美術館。ここでは現在、企画展「北斎の橋、すみだの橋」が開催されているので、さっそくレポートしてみたいと思います。

※掲載した写真は、今回参加した特別内覧会で美術館より特別の許可を得て撮影したものです。常設展示室内は一部の作品を除き撮影可、3階ホワイエのフォトスポットと展示パネルは撮影OKです。

JR総武線「両国駅」東口から徒歩約10分、都営地下鉄大江戸線「両国駅」A3出口から徒歩約5分、JRの高架線沿いに見えてくるモダンな建物が2016年にオープンしたすみだ北斎美術館です。
1階がチケット売り場とミュージアムショップで、地下1階に降りてコインロッカーに荷物を預けてからエレベーターで4階に向かいます。4階には企画展示室(第1展示室)とAURORA(常設展示室)があります。
すぐに企画展示室に入りたいところですが、そこは少し我慢、まずは左手のAURORA(常設展示室)から見ていきましょう。
4階 AURORA(常設展示室)




常設展示室内には、北斎作品が年代順に展示されています。
展示されている版画や肉筆画は高精度複製画で、他館から原画を借りて複製した作品以外は撮影OKです。
まずは浮世絵界デビューのコーナー。


上を見上げると北斎の年齢と年代が掲載されているのでとてもわかりやすいです。


勝川春章に入門して19歳でデビューした北斎のこの頃の作品は、「これは北斎です」と言われなければわからないくらい師匠・春章の影響が強く残っています。


さらに年代を追っていくと、独創的な構図の作品が出てきます。
下の写真は《賀奈川沖本杢之図》。この波のうねりはすごい迫力です。


50歳代以降になると読本挿絵の制作を精力的に行っていきます。


さらに70歳台になると有名な「富嶽三十六景」の制作にとりかかります。
下の写真は右から《凱風快晴》《神奈川沖浪裏》、どちらも有名な作品ですね。


最後には最晩年の肉筆画の世界に入ります。下の写真は《朱描鍾馗図》です。複製を制作する際に朱色の厚さを出すのが難しかったとのことです。


そしてこちらは北斎のアトリエの再現。ここでいかにも頑固者のおじいさんといった感じの北斎さんにようやく会えました。
手前が熱心に絵を描く北斎、奥が娘の阿栄(おえい)。

あまり長居していると北斎に「仕事の邪魔をするな!」と怒られそうだったので退散しようと思っていたら、キセルを持つ阿栄の右手がすこしだけ上下に動いたように見えました。
一瞬、ドキッとしましたが、今度は筆を持つ北斎の右手がかすかに動いたのでさらにビックリ。
北斎の顔までこちらの方を向いたらどうしようと思いましたが、ご安心ください。阿栄と北斎の右手だけが動く仕掛けになっているのです。

さて、北斎の画業を年代を追って予習することができたので、隣の企画展示室(第1展示室)に移ることにしましょう。

4階 第1展示室



「第一章 北斎の橋」
9月11日(火)から始まった「北斎の橋 すみだの橋」展は10月10日(水)から後期展示に入っていてます。
最初の見どころは北斎が「富嶽三十六景」と同じ時期に制作した「諸国名橋奇覧」のシリーズ。
全国各地の奇橋を描いたこの「諸国名橋奇覧」のシリーズは全部で11枚あって、前期に8点、後期に8点展示されています。
あれっ、計算が合わないと思われるかもしれませんが、複数所蔵する作品が5点あって、傷みやすい浮世絵の保存のことを考えてそれぞれ同じ作品を前期、後期に1ヶ月弱ずつ展示しているのです。

展示風景


前期に展示された亀戸天神の太鼓橋を除けば実際に見たことのない橋なのでしょうが、どれも大胆な構図で描いているところはさすが北斎。
渡るだけで足がすくんでしまいそうな《足利行道山くものかけはし》。


よそ見していると足を踏み外しそうな《三河の八つ橋の古図》。
『伊勢物語』に出てくるので有名ですが、尾形光琳《八橋図屏風》(アメリカ・メトロポリタン美術館)でもよく知られている橋ですね。


こちらも北斎の橋。
右が北斎が夢で見た架空の景色を描いた《百橋一覧》(原本は前期展示、現在はパネル展示)、左が後摺の《諸国名橋一覧》で《百橋一覧》の右上にあった賛が消され、実在の場所でないはずなのに全国の有名な橋の名前が入れられています。「著作権」という考えのなかった当時はこのように作者の意図に反して版元が勝手に摺ってしまうこともあったようです。


本の中にもさまざまな形の橋が描かれています。


おなじみの『北斎漫画』。


次に出てくるのは北斎の門人の描いた江戸の橋。
こちらは門人・昇亭北寿の《東叡山麓不忍池弁才天図》《東都日本橋風景》《東都御茶之水風景》(右から)。


続いて3階に移って、第2展示室に入りましょう。

3階 第2展示室


「第二章 すみだの橋」
このコーナーでは、隅田川や掘割に架けられた橋ごとに浮世絵や明治期の版画、関東大震災後の復興記念絵葉書や当時の設計図面などが展示されています。

こちらは江戸時代から描かれ続けてきた両国橋。
右から葛飾北斎《江戸八景 両国暮雪》、昇亭北寿《東都両国之風景》。


右から、二代歌川広重《東都両国橋渡初寿之図》、歌川貞秀《義士両国橋退去図》、三代歌川広重《東京三十六景 両国橋夕すゞみ》


こちらは現在では堀が埋め立てられてなくなってしまった石原橋を葛飾北斎が描いた《馬尽 駒形堂 御厨川岸 駒止石》。
堀の波は、凸版に絵の具を塗らずに凹凸模様をつける「空(から)摺り」で表現されています。
思わず手で触ってみて凹凸を確かめたくなる作品(←触ってはいけません!)。
見た瞬間に「この作品ほしい!」と思いましたが、絵の上に賛を書いた富裕層の注文で限られた枚数だけ摺られたとのことなので、おそらく入手困難でしょう。それはともかく、この作品は今回の展覧会の「私の一押しの一品」です。


明治期ではおなじみの小林清親、井上安治が出てきます。
こちらは柳島橋。右から小林清親《柳島日没》、井上安治《東京真図名所図解 柳島妙見》。独特の暗めの色合いがいい感じを出しています。


さらに関東大震災後の復興記念の絵葉書や当時の地図、図面などが橋ごとに展示されています。




こちらは駒形橋の開通記念絵葉書と封筒。


3階 ホワイエ

3階ホワイエには隅田川にかかる現在の橋のパネルが展示されています。このコーナーは撮影OKです。


そしてフォトスポットもあります。背景は葛飾北斎《諸国名橋奇覧 飛越の堺つりはし》。
橋を渡るように橋に沿って片足を浮かせて撮るのがポイントです。
記念に一枚撮ってSNSで発信しましょう!


【基本情報】
すみだ北斎美術館「北斎の橋 すみだの橋」
会  期   9月11日(火)~11月4日(日)
休館日   毎週月曜日
開館時間  9:30~17:30(入館は17:00まで)
観覧料 一般 1,200円、高校生・大学生 900円 65歳以上 900円       中学生 400円 障がい者 400円 小学生以下 無料 他
前期は10月8月(月・祝)で終了しました。現在は後期展示です。
作品リストほか詳細は同館ホームページをご覧ください→すみだ北斎美術館


今年は明治150年、そして東京誕生150年。「橋」をテーマに江戸・東京の町の景色やそこで活動する人たちを描いた作品が展示されていて、この記念すべき年にふさわしい展覧会です。
会期末も近いので、ぜひ日程をやりくりしていただいてご覧になっていただければと思います。
展覧会図録(税込2600円)もとても見やすくて内容も充実しているのでおススメです。


そして次の展覧会は11月20日(火)から始まる「大江戸グルメと北斎」です。
とても美味しそうなタイトルなので今から楽しみです。