文字の中に猫がいっぱい! 猫まみれの印鑑「超ニャン鑑」がかわいすぎる!

2018/10/22 11:00 吉村智樹 吉村智樹

▲印鑑の文字をよ~く見てみると、猫がたくさん潜んでいる


こんにちは。
関西在住のライター、吉村智樹です。


この連載では、僕が住む関西の耳寄りな情報をお伝えしてゆきます。
今回はその第42回目となります。





■憶えていますか? Twitterでバズった「ねこのはんこ・ニャン鑑」を


「もしも“ねこのはんこ・ニャン鑑”が生まれていなかったら、うちの店は倒産していたかもしれません


大阪市の此花区(このはなく)に店舗を構える「城山博文堂」の三代目代表取締役、城山謙一さん(53歳)は、しみじみとそう語ります。


皆さん、2014年にTwitterでバズった「ニャン鑑」のことを憶えていらっしゃいますか?


「ニャン鑑」とは、文字の一部が猫になっている印鑑のこと



▲文字の一部が猫になった「ニャン鑑」





かわいいうえに、ちゃんと郵便や銀行の通帳もつくれるなど実用的とあって、話題騒然。瞬く間にSNSで火がつきました。この4年間で、なんとおよそ1万本もの注文があったとのこと。


あれから4年。あの伝説の「ニャン鑑」が「さらにスゴい進化を遂げている!」との噂が耳に入ってきました。それは今年6月に誕生した、その名も「超ニャン鑑」


「超」ですと? こうしちゃいられにゃい! 「超ニャン鑑」とはいったいどんなものにゃのか。わたくし、実際に見に行ってまいりましにゃ。


■「印鑑デザイナー」の正体は事務用品店の店長さん


昭和な雰囲気がいまなお色濃く残る街、千鳥橋。
そこに、事務用品、印章の小売り、印刷業を営む「城山博文堂」があります。70年以上の歴史を誇る街の顔。城山謙一さんは先代からこの店を受け継ぎ、15年になります。



▲三代続く「城山博文堂」の城山謙一さん。店内はいかにも誠実な事務用品店という印象


店内は、いかにも「実直な、シブい文房具屋さん」といった雰囲気。ここから、あのファンシーなニャン鑑が誕生したとは、かなり意外です。


そんな城山博文堂の店主である城山さんのもうひとつの顔が「印鑑デザイナー」。ニャン鑑をはじめとする「MY印鑑」シリーズの、すべてをひとりでデザインされているのです



▲城山謙一さんのもうひとつの顔は「印鑑デザイナー」


城山さんは印鑑を愛するあまり、ときには自らが印鑑そのものに変身することも。テーマソングまであり、YouTubeチャンネルも開設。印鑑ユーチューバーという第3の顔もお持ちです。



▲自ら印鑑になり、YouTubeに登場


おもしろMY印鑑城山謙一 YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/hakubundo1


■「ニャン鑑」をうわまわる「超ニャン鑑」とは?


ではさっそく、今年6月からオーダーメイドを受け付け始めたという「超ニャン鑑」を見せていただきました。


どれどれ……にゃ、にゃんと! これはすごい。文字を構成する部位のほとんどが猫じゃないですか!



▲2018年6月に登場。ニャン鑑をさらにうわまわる数の猫がひしめく「超ニャン鑑」


城山
「そうなんです。これまでのニャン鑑は“名前の中に、ごくひそやかに猫のデザインが入っている”というのがコンセプトでした。この“超ニャン鑑”はその正反対。猫の存在がはっきりとわかるように、ふんだんに散りばめられています。一文字につき、最低2匹の猫がいるんですよ」


猫たちのシルエットが、たまたま文字に見える。そう錯覚するほどの数がいますね。いったいなぜ、これほど猫猫しい印鑑をつくろうと思われたのですか?


城山
「ニャン鑑は、お客様から『隠し絵的な面白さがある』と喜んでいただいています。けれども、僕自身は内心『もっと技術があったならば、今以上にたくさんの猫が入れられるのにな』ともずっと思っていたんです。しかし小さな印面に猫を多くデザインするのは当時の自分には難しかった。そうして4年の月日が経ち、これまで10,000点以上のオーダーを請けるうちに猫をデザインするスキルもあがってきたので、『よし! 文字のほとんどが猫で構成されている印鑑づくりにチャレンジしてみよう』と踏み切ったんです。それから試行錯誤を繰り返し、実用できるレベルに達したと判断し、“猫まみれの印鑑・超ニャン鑑”として、やっと販売を始めました」



▲一文字で最低でも2匹の猫がいるという





なるほど、「超ニャン鑑」は、満を持しての登場なのですね。城山さんがつくる印鑑は、どうやってデザインをされるのですか?


城山
「オーダーを請けて、まずは紙にペンで描いてみて、スキャナでパソコンに撮りこみます。それをイラストレーターというソフトでデザインしてゆくのです。ニャン鑑を筆頭に私がつくる“MY印鑑”シリーズは猫だけではなく、さまざまな動物やお花、楽器、家紋などにも対応しています。バージョンは30種類くらいあるかな。いまは鳥を注文されたお客様のラフを描いていたところです。難しいところですか? たとえば犬なら秋田犬と柴犬など、シルエットが似ている動物を描き分けるのがたいへんです」


なんとまあ、印鑑一点一点にそこまで凝っていらっしゃったとは。



▲ニャン鑑だけではなく犬の「ワン鑑」もある



▲ただいま「鳥の隠し絵はんこ」をデザイン中。はじめは手描きだ



▲猫が文字の周囲をクルクルまわっている「クルはん」



▲猫、犬だけではなく、さまざまな動物に対応している


■「このままでは店がつぶれてしまう」


では、そもそも猫がデザインされた印鑑をつくろうと思われたのは、なぜなのでしょう。


城山
「ひらめいたのは14年前です。事務用品の購入や、印鑑、名刺の印刷などの注文をインターネットでできる時代になり、うちのような実店舗で商う昔ながらの業態は斜陽の一途をたどっていました。『なんとかせんと、このままでは自分の代で店をつぶしてしまう。新しいことをしないといけないな』と危機感をつのらせていました。そんなことを考えながら営業車で得意先まわりをしていると、前の車のバックドアあたりに“犬が乗っています”というステッカーが貼られているのが見えた。そのとき、ふと『印鑑の文字の中に犬がいたらかわいいんじゃないか』と思いついたんです。なので初めは犬だったんです


あ、スタートは猫ではなく犬だったのですか。


城山
「そうなんです。『ワンポイントはんこ』の名で20種類くらいのデザインを考えましてね。それで、『犬だけではなく猫もできるのでは』と試してみたのが、猫の印鑑をつくったきっかけです。最初期は名前の隣に犬や猫がちょこんといるという、ごくごくシンプルなデザインだけでした。そうして次第に犬よりも猫の方が人気が出はじめて、『だったら文字のなかに猫を入れてみたら、もっとかわいいんじゃないか』と思い立ち、4年前に“ニャン鑑”をあみだしたんです」


■Twitterでバズり注文が殺到。受注をストップしたことも


なんと、ニャン鑑には、そういった段階を経た歴史があったのですね。そしてその後、Twitterで広まったのですね。


城山
「うちの店のTwitterアカウントで『ニャン鑑という猫の印鑑をはじめました』と告知したら、まず猫好きな方々のあいだにリツイートで知れ渡りました。そしてそれが“まとめサイト”で編集されて一気に広がり、続いてYahoo!ニュースに載り、遂には海外のメディアにまで採りあげられたんです。そのときはじめて『SNSの拡散というものは、何度も何度も波が来るんだ』と知りました。注文の数がすごかったんで、本当に驚きましたね」


一時期は「お店が倒産するかもしれない」と心配をされていたのに、ニャン鑑のおかげで起死回生となったのではないですか?


城山
「ありがたいことです。一年間の売り上げと同額分をわずか10日間で達成してしまいました。とはいえこんな経験は過去にないので対応には苦慮しました。デザインをひとりでやっていますから、追いつかないんです。なので申し訳ないですが、はじめの頃は受注をストップしたこともありました」


実際にニャン鑑を使われた方からのご意見は?


城山
「好評でした。『パッと押した瞬間はわからないけれど、二度見されて、驚かれる。見つけたときに相手の方が笑顔になる』とおっしゃっていただいて。おかげでリピーターが多く、『家族の分を』『贈答用に』と複数本をお買い上げになる方も少なくありません。男女比ですか? 猫をオーダーされるのは7割が女性ですね」



▲「ニャン鑑? にゃんですかそれ」 (以下撮影/城山謙一さん)



▲「ニャン鑑? あとで見とくからそこ置いといて~」



▲「ニャン鑑? よさそうやね。宅急便の受け取りの時に使うわ」


売り上げという点はもちろん、ニャン鑑をつくってよかったと思われる点はどこでしょう。


城山
「発想が広がりましたよね。9月には自分の名前の背中に天使の羽が生える印鑑もはじめました。僕は昔から絵を描くのは好きだったけれど、デザインの学校で勉強したわけではない。言わばグラフィックの素人。そもそも仕事は、ほとんどが営業でしたし。それでもこうして自分の作品を世に問うことができている。ニャン鑑によって『下町の商店街の小売店でも、アイデア次第で生き残れる』と、励みになりました」


城山さんを取材し、単に印鑑がかわいいだけではなく、ここにはこれからのビジネスのヒントがふんだんにあるように思いました。猫の目のように入れ替わりが激しい世の中を歩いてゆくために必要なのは、不断の努力と、冴えたアイデアなのだと、人生のノートにポンッとスタンプを押された、そんな気がします。


店名●城山博文堂(シロヤマハクブンドウ)
住所●大阪市此花区梅香3-27-9
アクセス●阪神なんば線「千鳥橋」駅から徒歩5分
定休日●日・祝・第二と第四の土
営業時間●9:15~18:00
TEL●06-6463-3331


かわいいはんこ通販サイト・おもしろMY印鑑
https://www.inkan.name/

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取材・執筆 吉村智樹
https://twitter.com/tomokiy