【いよいよ公開!】岡田准一の主演作、映画「散り椿」に登場する“国宝”って?

2018/9/26 16:10 Tak(タケ) Tak(タケ)

明治から昭和初期にかけて活躍した速水御舟(はやみぎょしゅう)。彼が描いた日本画の中で重要文化財指定を国から受けている作品があります。

それがこの《名樹散椿》(めいじゅちりつばき)です。


速水御舟《名樹散椿》【重要文化財】 1929(昭和4)年 紙本金地・彩色
山種美術館にて10月16日(火)から11月11日(日)まで展示予定


京都・昆陽山地蔵院(俗称・椿寺)の五色の八重散り椿で、速水御舟が写生した当時すでに樹齢は約400年。金地を切りとるような構成は俵屋宗達からの影響を感じさせるが、椿を凝視し、大正期の質感描写の追求の成果が花や幹の描写に活かされる。金地は金砂子を何度も振りまく撒きつぶしにより、光沢を抑えたものとなっている。昭和52年、昭和以降に制作された作品として初めて重要文化財に指定された。

山種美術館公式サイトより。

御舟の傑作中の傑作であるこの《名樹散椿》を表紙に用いたのが葉室 麟 の小説『散り椿 』この絵に合わせて小説を書いたのではないかと思うほど、内容ともマッチしています。


『散り椿』 (角川文庫)
葉室 麟 (著)

この『散り椿』 (角川文庫)を原作とした映画『散り椿』がもうじき全国の映画館で公開となります。岡田准一さん主演のこの映画、試写会で一足お先に観て来ましたが、「散り椿」が全編を通じて大事なモチーフとして登場します。

西島秀俊さんや麻生久美子さんとの人間関係、そして藩を捨てた主人公の心の葛藤と「約束」。劇中を要所要所で速水御舟《名樹散椿》のイメージが頭に浮かびます。




2018年9月28日全国公開
映画『散り椿』
原  作 :葉室麟「散り椿」(角川文庫刊)
監督・撮影:木村大作
脚  本 :小泉堯史
キャスト :岡田准一、西島秀俊、黒木華、池松壮亮、麻生久美子 他
配  給 :東宝
Ⓒ2018「散り椿」製作委員会

9月上旬には第42回モントリオール世界映画祭にて、『散り椿』が審査員特別賞を受賞するという嬉しいニュースも舞い込んできました。

人間関係を巧みに言葉少なく描きつつ、四季折々の自然の美しさを圧倒的な映像美でスクリーンに展開してくれます。CGを一切使わず現地ロケにこだわった木村大作監督の勝利と言えるでしょう。

さて、映画の内容については専門家にお任せするとして、ここでは、映画『散り椿』の中にさり気なく登場する日本絵画についてご紹介して来ます。

以下の3作品を知っているだけで、映画が何倍も楽しめますよ!そしてアートファンにとっては「あの屏風がこんな場所であんな風に使われている~」と他の映画では得られない愉しみを味わえるはずです。

まず1点目はこちら。


長谷川等伯《龍虎図屏風》紙本墨画、江戸時代・慶長11年(1606)、6曲1双 各縦154.2cm 横340.0cm、米国・ボストン美術館蔵

いきなり、ボストン美術館所蔵の一級品が登場して驚かれたのではないでしょうか。自分も「えっ!?まさかあれは!」と役者さんの会話そっちのけでこの名画に見入ってしまいました。

登場するのは、扇野藩・城内で、城代家老・石田玄蕃と榊原釆女(西島秀俊)が話しているシーンの背景などにさり気なく置かれています。

続いて2点目です。


長谷川等伯《松に秋草図屏風》【国宝】文禄元年(1592)頃、二曲一双、京都・総本山智積院(ちしゃくいん)蔵
 
これぞ長谷川等伯!と唸りたくような力強く魅力的な屏風絵です。三十三間堂や京都国立博物館にほど近い位置にある智積院が所蔵するまさに国宝中の国宝です。
 
智積院の特別展示室(国宝館)へ行けば実物を目にすることが出来ます。ボストンは無理でも京都なら何とか行けそうですよね。映画『散り椿』ファン、岡田准一さんファンとしては智積院は「巡礼地」として外せません。
 
劇中では城中・広間のシーンで瓜生新兵衛(岡田准一)と坂下藤吾(池松壮亮)が他の侍たちと座っている背景に使用されています。ここは必見ですよ!
 
最後の3点目はこちらです。


長谷川等伯《萩芒図屏風》【京都市指定文化財 有形文化財】紙本金地著色、桃山時代・16世紀末~17世紀初頭、六曲一双、(各)縦 156.2㎝ 横 361.8㎝ 京都・相国寺承天閣美術館

3点とも長谷川等伯であるのも凄い!監督や美術好きの岡田准一さんの意向が反映されてのことなのでしょう。この3点名の長谷川等伯《萩芒図屏風》は、これまでの2点とはちょっと違う場面で登場します。
 
主役たちの背後を彩ってきた2点とは違い、3点目のこの作品は、脇役である田中屋惣兵衛邸の奥座敷に据えられた屏風として登場します。
 
ある事件が和紙商人の邸宅で起こります。時はすっかり辺りも暗くなった夜中のこと。劇中注目して欲しいのは金屏風が博物館や美術館で目にするのとまるで違う印象を得られる点です。つまり漆黒の闇の中わずかな灯りで照らされる室内にこの金屏風がどのように映えるか。まさに見てのお楽しみです。
 
拙著『いちばんやさしい美術鑑賞』の中で金屏風の「役割」について書きましたが、まさにこの映画の中でそれを確認できるのです。
 
長谷川等伯と速水御舟の作品がたっぷりと堪能できる映画『散り椿』。秋はあれこれと忙しいのですが、これは観に行かねばなりません。

そして速水御舟《名樹散椿》の実物を観に山種美術館の展覧会へも!




「[企画展] 日本画の挑戦者たち
―大観・春草・古径・御舟―」

会期:2018年9月15日(土)~11月11日(日)
*会期中、一部展示替えあり
会場:山種美術館
主催:山種美術館、日本経済新聞社
開館時間:午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日
[但し、9/17(月)、24(月)、10/8(月)は開館、9/18(火)、25(火)、10/9(火)は休館]


速水御舟《名樹散椿》【重要文化財】 1929(昭和4)年 紙本金地・彩色
山種美術館にて10月16日(火)から11月11日(日)まで展示予定



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