「オレンジアメ」に「濃い~味 満月ポン」など関西のめっちゃおいしい”姉妹品”
いらっしゃいませ。
旅するライター、吉村智樹です。
おおよそ週イチ連載「特ダネさがし旅」。
特ダネを探し求め、私が全国をめぐります。
■見つけよう! 関西のおいしい「姉妹品」
「姉妹品にお宝あり」。
そんな言葉を、お聞きになったことはありませんか?
「ない!」
そうでしょうね。
「姉妹品にお宝あり」。
それは僕が考えた言葉だからです。
僕はスーパーマーケットが大好きです。
地方へ行けば必ずスーパーマーケットを覗きます。
「地元のスーパーマーケットの食料品売り場」は、言わば買い物できる郷土資料館。
商品のディスプレイをくまなくチェックしてみると、その県の、その街の、そこならではのおいしいものがたくさん見つかります。
そして、見逃せないのが「姉妹品」。
隠れた銘品は、スター選手の隣にひっそりといます。
姉妹品には、メイン商品をうわまわるほどおいしいものも少なくないのです。
今回は関西生まれな「一級の姉妹品たち」をご紹介します。
★パインの「オレンジアメ」
大阪生まれの「飴ちゃん」代表選手といえば、やはり「パインアメ」。
発売から60年以上の長きにわたり、お子さんからご年輩の方にまで愛される、「パイン株式会社」の主力商品です。
見た目そのまんまパイナップル。
甘酸っぱい果汁がパッショネイトにはじけます。
トロピカ~ル恋して~るな、南国の魅力に溢れたお味です。
しかし、その隣に並ぶ姉妹品の「オレンジアメ」。
パインアメのみならず、これが僕、大好物なんです。
見た目が「パイナップル?」な穴あき状なのはご愛敬。
パインアメよりサワー感が少なく、そのぶん、やさし~い甘みがひろがります。
味は……懐かしの「オレンジエード」。
オレンジエードとは、オレンジ果汁を水で割って甘みを加えたドリンク。
果汁に加水してあるため、さっぱりした口あたり。
汗をかいた日に、ごくごく飲めるのが魅力でした。
いまではすっかり街から姿を消してしまいましたが、70年代、各飲料メーカーがこぞってこのオレンジエードを発売していたのです。
現在の「なっちゃん」を、もうすこし洋風寄りにしたフレイバー。
夏だけではなく、ホットで飲むのも、香りがひきたっておいしかった。
「オレンジアメ」をなめていると、あのやすらぎが蘇ります。
パインアメは元気が出て、オレンジアメは、ほっと「ゆるむ」。
僕にはそんな印象があるのです。
★ヒガシマル「ラーメンスープ」
ヒガシマルといえば、きれいな揖保川のほとりに工場を構える兵庫県の醤油メーカー。
そして醤油づくりを発展させた「だし」のおいしさにも定評があり、お湯に溶かして使う粉末「ヒガシマル うどんスープ」は「関西人の味覚の規格標準」とまで称されるほどに、暮らしに定着しています。
「うどんスープ」という造語を奇異に思う人など、もう誰もいません。
しかし僕は、うどんスープはもちろん大好きですが、それをうわまわって姉妹品の「ラーメンスープ」最強説を唱えさせていただきたい。
僕は現在、外食でラーメンを食べることは、ほぼありません。
どこで食べても、ヒガシマルのこのスープでつくったラーメンに勝る美味に、出会えたことがないからです。
鶏ガラと淡口(うすくち)醤油というシンプルな組み合わせ。
隠し味の「魚醤」が効いているのか、しみじみとした深い滋味と、すべてを吸い込みつくしたくなる豊かな香りがあります。
麺だけではなく、ワンタンを浮かべてもデラ絶品。
春雨と白菜、豚肉でシンプルな鍋物にしても、こたえられません(ラー油を垂らすのがコツ)。
焼きめしを炒める鍋にさっとひと振り加えると、そこらの町中華に負ける気がしない逸品が味わえます。
中華調味料ってさまざまあるのですが、僕にはどれも中華に寄りすぎていている気がして。
「中華料理ってわけでもない、家庭のラーメンが食べたい」とき、ヒガシマルのラーメンスープは決定版と言えるでしょう。
あとヒガシマルは、やればできるはずなのに、かたくな「そばスープ」をリリースしない点にも、うどんが主流である関西のメーカーだという誇りと矜持を感じずにはいられません。
知りませんが。
★「たっぷり! 濃い~味 満月ポン」
大阪の「しょっぱいおやつ」の定番、「満月ポン」。
その正体は、小麦粉を膨らませたせんべいに、醤油だれを噴きつけただけのシンプルなお菓子。
余分なものは、なにもなし。
人気商品なのに、いまだに手焼きなのもすごい(なので満月ポンの表面をよく見ると、ひっくり返すときに人間が手で串刺しにした跡があります)。
素朴にもほどがある、めちゃめちゃ安心できるお菓子なのです。
この満月ポンの姉妹品が「たっぷり! 濃い~味 満月ポン」。
特製の醤油だれを1.5倍使った濃厚な風味。
実はこれ、「見つければ幸せになれる」レベルの、かなりのレア商品。
毎日製造しているわけではないのです。
そして、なかなか手に入らないだけあって、お味も格別。
冷たい水と交互にやれば、もー、とまらなくなること請け合いです。
ZOZOTOWNの前澤さんのように我々は実際に月へは行けませんが、月面着陸したかのような喜びを味わえます。
そして僕がおすすめする「たっぷり! 濃い~味」の食べ方は、「パンにはさむこと」。
まずハンバーガー用のパンを買ってきて(フジパンの『ハンバーガーバンズ』がベストサイズ)、キャベツの千切りを敷き、ちょっとソース(&お好みでマヨネーズ)をかけ、そこに「たっぷり! 濃い~味」を3枚載せて、はさみます。
こうすると、ザクザク感がたまらない「自家製てりやき月見ハンバーガー」ができあがるのです。
これ、やみつきになりますよ。
通常の満月ポンだとこの味にならない、姉妹品だからこそなせるワザなのです。
発見したら、ぜひ試してみてくださいね。
■スーパーマーケットに商品が並ぶありがたさ
さて、この連載では毎回、関西のおすすめスポットや人物を紹介しています。
しかし関西はいま、正直に言って、ちょっと疲れています。
6月に起きた「大阪府北部地震」、祇園祭のイベント「花笠巡行」を中止させるまでに至った10日連続の猛暑日、大規模浸水など甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨」、そして暴風雨が屋根をはがして電柱をなぎ倒し、10万戸を停電させた「台風21号」……。
関西国際空港の連絡橋にはタンカーが衝突し、それによって孤島と化しました。
人々も長い時間、閉じ込められました。
復旧には2週間ほどを要したのです。
この間、観光に訪れる人たちの足が奪われ、いつもはにぎわう大阪の街も閑散としていました。
「いったいなんの恨みがあって?」と思うほど、次々に襲い来る自然災害に悲鳴をあげた関西。
スーパーマーケットにものがあるという、ともすれば当たり前に感じてしまっていたことが、どれほどありがたく思えたか。
スーパーマーケットへ足を運び、いつもは通りすぎる陳列棚の前で足をとめ、「へえ、こういう商品があるんだ」「地元にこんなメーカーさんがあったんだ」「おいしそう。ちょっと試してみようかな」と思案してみるは楽しいものです。
新しい発見があるし、なにより買い物はストレス解消になります。
お目当ての商品の隣にある姉妹品にも、そっと手を伸ばしてみる。
そんな小さな好奇心が、小さな消費が、再び少しずつ経済を動かしてゆくのではないかと思うのです。
イラスト:せろりあん
TEXT/吉村智樹
https://twitter.com/tomokiy
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