「死」よりも避けたい〇〇とは!?…理解不能な交通安全「ファンシー絵みやげ」(1/3)
■ 車社会到来と高速道路網の発達
昨今、飲酒運転による悲惨な事故がたびたび起きているのは皆さまご存じでしょう。自動車は便利である反面、一歩間違えば人命にかかわる事故を起こす可能性もあります。
この連載では、ファンシー絵みやげと呼ばれる商品があふれていた時代をよく振り返っていますが、飲酒についても今より大らかだったことは以前の連載記事(第014回)でも触れました。さらにそこに自動車でのデートが一般化していき、時代を反映した自動車関連の商品が多数作られたのです。
↑交通安全を祈るキタキツネのミニ提灯。北海道のファンシー絵みやげ。
ファンシー絵みやげとは1980年代から1990年代にかけて日本中の観光地の土産店や施設の売店で売られていた子供向けの雑貨みやげです。動物は擬人化され、人物は二頭身にデフォルメされた漫画風のキャラクターイラストが特徴です。
モータリゼーションによって自動車での旅行が増えたところへ高速道路網の急速な発達が起こり、お土産を購入する場所もドライブインからサービスエリアへと変わっていきました。
商品の企画においても、カー用品などが多く存在するのですが、そちらは数が多すぎるので改めて紹介するとして、今回は安全を祈るキーホルダーを中心に紹介したいと思います。
■ ファンシー絵みやげの安全キーホルダー
ファンシー絵みやげにおいて一番商品数が多いのがキーホルダーなのですが、家の鍵だけでなく、車の鍵につけるという需要もあります。そのため、車を意識したキーホルダーというジャンルが存在するのです。車で旅する若者が自分のために買うという目的で、落ち着いたデザインのキーケースタイプの商品もあります。
↑秋田のなまはげ、うさぎのキャロットクラブ、食いしん坊カップルのキーケース。
キーケースがいずれもレザー調で、デザインのアダルト志向が強いのに対し、かなり子供向けにアジャストされた商品も多数あります。
ファンシー絵みやげのターゲット層である子供たちは自動車にも原付にも乗れませんので、主にお父さんお母さんなどに買って帰らせるという意図で作られたものなのです。 そのため、キーケースとはうってかわって、多くのファンシー絵みやげと同じく「大人が持ちたがるとは到底思えない」イラスト、そしてデザインのものが多いのです。
↑交通安全を祈るキツネ。初心者マークのキーホルダー。東名高速。
こちらは少し珍しい高速道路のネーム入りファンシー絵みやげ。このように車に関するアイテムで初心者マーク(若葉マーク)は定番なのです。こちらも色々とあるので改めて紹介したいと思います。
それにしても「お願いっ!ヘタでごめんね 初めてなんです だから、ゆるして」とは……初めてだからといって許せるわけはありません。ちなみにこれは、おそらく「初体験」とのダブルミーニングだと思われます。
↑交通安全を祈るタヌキ。お守り型のキーホルダー。東北自動車道。
こちらも高速道路のネーム入り。東名がキツネならこっちはタヌキ。お守りや絵馬といった、神社などの交通安全お守りを模した商品が多数存在するのです。ではこちらは裏返してみましょう。
★車には気をつけてね
★ステキなお話聞かせてね
★無理はしないでね
★おこづかいちょうだいね
これは、みごとなリリックですね。
相手のことを心配してる風で、最後にさりげなくおこづかいおねだり。
しかも前半から察するに、これはドライブデートで相手に渡すものなのでしょう。
当時は車を持ってないとダサイ!という感じで、若者の必需品でした。今よりももっとドライブデートが多かったように思います。しかし「おこづかい」をもらうとは、単純なカップルなのかどうか疑わしいところですね。