京都・奈良 この秋、気になる美術展めぐり

2018/9/1 09:00 yamasan yamasan

空にはうろこ雲が広がり、爽やかな風が心地よく感じられて、すっかり秋らしくなってきた今日この頃・・・

と言いたいところですが、あいかわらず灼熱の残暑が続く関東から、猛暑の関西に行ってきました。



今回のお目当ては、京都国立近代美術館の「バウハウスへの応答」、京都国立博物館の特集展示「百萬遍知恩寺の名宝」、そして奈良 大和文華館の「中国朝鮮絵画」。
(奈良国立博物館の特別展「糸のみほとけ」も最終日に滑り込みで見てきました。)

どれも特色があって、じっくり味わえる内容の展覧会でした。京都国立博物館ではサプライズもあったので、今回は、それぞれの展覧会の見どころなどを紹介していきたいと思います。

京都国立博物館 「百萬遍知恩寺の名宝」+特別展「京(みやこ)のかたな」




唐時代に中国で浄土教を大成させた善導大師、浄土宗の宗祖・法然上人の肖像画、浄土の世界を表した曼荼羅図、快慶作との新説が出た阿弥陀如来立像はじめ浄土宗美術の名作、さらに中国・元時代の顔輝が描いた「蝦蟇鉄拐図」(重要文化財 上記チラシの作品)、円山応挙「水月図」など知恩寺に伝来する美術品の数々も展示されていて、ミニ特別展といっていいくらいの充実した内容の展示でした。

チラシも、A4見開き8ページの豪華版で、作品の写真も多く掲載されています。

百萬遍知恩寺の名宝
会  場 京都国立博物館 平成知新館2階
開催期間 8月7日(火)~9月9日(日) (休館日 月曜日)
開館時間 9:30~17:00 金・土曜日は21:00まで(入館は閉館の30分前まで)
観覧料(名品ギャラリー)
 9月2日まで   一般 520円 大学生260円 高校生以下 無料 他
9月4日~9日 一般 260円 大学生130円 高校生以下 無料 他
(最終週は半額になるところがいいですね。)
開催概要は京都国立博物館ホームページをご覧ください。


話は前後しますが、平成知新館に入って2階に向かおうとしたところ、「ただいまから明治古都館の館内を公開します。解説付きです。お時間のある方はぜひご参加ください。」という案内係の女性の声が聞こえてきました。

今は免震改修等を行うため閉鎖中の明治古都館(重要文化財)は、入館することはできないと思っていたのですが、せっかくのチャンスなので行ってみることにしました。

明治古都館正面



公開しているのは入口すぐの玄関ホールと、その奥の中央ホール。 写真は中央ホールです。




奈良国立博物館本館、赤坂離宮(現 迎賓館)、東京国立博物館表慶館と同じく片山東熊博士の設計で明治28年に竣工した明治古都館は、内装も細部まで凝っていて、明治の洋館の雰囲気がよく出ています。

次回の特別展「京(みやこ)のかたな」(9月29日~11月25日)の会期中には、この中央ホールに「刀剣乱舞-ONLINE-」コラボ刀剣男子の等身大パネルなどが展示されるとのこと。

明治の洋館に現代のゲームのキャラクター。この異種格闘技対決の緊張感が面白そうです!

特別展「京のかたな」チラシ



現地に来てみると、ネットではわからなかった情報を得ることができるのも旅の楽しみの一つ。明治古都館の公開もそうですが、実際に京都国立博物館に来てみて、もう一つ得したことがありました。

国宝の俵屋宗達《風神雷神図屏風》、重要文化財の海北友松《建仁寺方丈障壁画》はじめ多くの文化財の高精細複製画を制作している綴(つづり)プロジェクト(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の屏風が展示されていたのです。

今回展示されているのは、「海外に渡った日本の文化財」というテーマで制作された式部輝忠《四季山水図屏風》(下の写真左)と、伝狩野宗秀《韃靼人狩猟・打毬図屏風》(同右)。いずれもオリジナルはサンフランシスコ・アジア美術館の所蔵。

平成知新館入口入って左のラウンジに、9月9日まで展示されています。このコーナーは撮影可です。



こちらは式部輝忠《四季山水図屏風》。



細部をアップしても「これが複製?」と思えるくらいの出来栄えです。



こちらが伝狩野宗秀《韃靼人狩猟・打毬図屏風》。



海外に流出した作品もこうやって気軽に目の前で見ることができるのも複製画のいいところです。



京都国立近代美術館 「バウハウスへの応答」


この展覧会は、1919年にドイツ・ヴァイマールに設立された総合芸術学校バウハウスの日本やインドでの継承に焦点を当てて、関連する作品や資料が展示されています。





展覧会は3章構成になっています。

Ⅰ バウハウス 1919-1933
 バウハウス初代校長 ヴァルター・グロピウスの《バウハウス宣言》(表紙はライオネル・ファイニンガーの木版画)、パウル・クレーのスケッチブック、ヴァシリー・カンディンスキーの著書《点と線から面へ》、バウハウスで学んだ建築家・デザイナー 水谷武彦の《素材研究-三つの部分からなる彫刻、ヨーゼフ・アルバースの予備課程》(上のチラシの渦巻状の真鍮の作品)はじめ、ヴァイマールからデッサウ、ベルリンと移転し、最後はナチスによって閉校に追い込まれたバウハウスゆかりの作品などを見ることができます。

Ⅱ 日本-新建築工芸学院 1932-1936
 同時代のバウハウスの動きを伝えた日本の雑誌、ウクライナのハリコフの劇場設計国際コンペで4等入選を果たした建築家 川喜田煉七郎の劇場の模型など、日本におけるバウハウスの受容の様子が伝わってきます。
そして、会場の中央には今回の展覧会のために制作された、ルカ・フライの大きなインスタレーション《教育伝達のモデル》が展示されています。

Ⅲ インド-カラ・ババナ 1919-現在
 ドイツのバウハウスと同じ1919年に設立され、現在まで続くインドの美術学校カラ・ババナにちなんだ作品が展示されています。インドらしいカラフルな作品が楽しめます。

バウハウスへの応答
会   場 京都国立近代美術館(岡崎公園内)
開催期間 8月4日(土)~10月8日(月・祝) 
開館時間 9:30~17:00 金・土曜日は21:00まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日   毎週月曜日
(ただし、9月17日、24日、10月8日(月・祝)は開館し、9月18日、25日(火)は休館)
  観覧料 一般 430円 大学生130円 高校生以下 無料 他
     金・土曜日の17:00から夜間割引 一般 220円 大学生70円
     (本料金でコレクション展も観覧可)
開催概要は京都国立近代美術館「バウハウスへの応答」をご覧ください。


展示室内は撮影不可ですが、入口の係の人に言うと、A3版16ページの豪華なパンフレットをもらうことができます。写真はパンフレットを広げたところです。



京都国立近代美術館は8月29日(水)から始まる「東山魁夷展」の準備で大忙しでした。

「東山魁夷展」は東京に巡回しますが(国立新美術館で10月24日~12月3日) 、「バウハウスへの応答」は巡回しません。ぜひ現地でご覧になっていただければと思います。

京都国立近代美術館正面



奈良 大和文華館の中国朝鮮絵画


京都から近鉄に乗って大和西大寺で近鉄奈良線に乗り換えて難波方面に向かう電車に乗ります。快速急行や急行だと一駅の「学園前」駅で降りて徒歩約7分、住宅街に隣り合わせて広大な敷地の大和文華館が見えてきます。



今回の展示は大和文華館が所蔵する中国・朝鮮の山水や植物、そして人物を描いた絵画。

入口すぐには李迪の国宝《雪中帰牧図(双幅)》(中国・南宋時代)と伝趙令穣《秋塘図》が独立ケースに並び、正面から右側の展示室に進むと中国・朝鮮の山水画が展示されていて、すんなりと静かな山水画の世界に入り込むことができます。

正面右側の展示室内は主に植物と人物を描いた絵画のコーナーで、勢いのある葡萄や宮中の女性たちを描いた作品などが展示されています。





ショップでは『大和文華館の中国・韓国絵画』が販売されています。今回の展覧会の図録では ありませんが、今回展示されている作品も多く収録されているので迷わず買いました。

家に帰ってからもこの図録を読みながら山水画の世界にひたっています。
この暑い夏に涼を求めて中国・朝鮮絵画の世界にひたってみてはいかがでしょうか。



大和文華館の中国朝鮮絵画
会   場 大和文華館 近鉄奈良線学園前駅下車 南出口より徒歩約7分
開催期間 8月24日(金)~9月30日(日) 
開館時間 10:00~17:00  (入館は16:00まで)
休館日   毎週月曜日
     (ただし9月17日、24日は開館し、9月18日、25日は休館)
  入館料 一般 620円 高校・大学生410円 小学・中学生 無料 他
開催概要は「大和文華館の中国朝鮮絵画」をご覧ください。


近鉄奈良線学園前駅周辺には大和文華館だけでなく、上村松園・松篁・淳之三代の作品を所蔵する松伯美術館、近代日本の洋画、日本画、版画、彫刻を所蔵する中野美術館があります。

気に入った展覧会のスケジュールをチェックして、1日かけて学園前周辺美術館めぐりをしてみてはいかがでしょうか。歩く距離がそれなりにあるので、涼しくなってからの方がもいいかもしれませんね。