「事故物件住みます芸人」松原タニシ初の著書「恐い間取り」がガチでコワい!

2018/7/23 11:00 吉村智樹 吉村智樹

▲6年間で6軒もの事故物件に住んだ「事故物件住みます芸人」松原タニシさん。初の著書「事故物件怪談 恐い間取り」は発売一ヵ月で四刷を記録するベストセラーに


こんにちは。
関西在住のライター、吉村智樹です。


この連載では、僕が住む関西の耳寄りな情報をお伝えしてゆきます。
今回はその第31回目となります。





■わざわざ「事故物件」に住み続ける芸人


「事故物件」
この頃、とみによく目や耳にする言葉です。


「事故物件」とは、大まかに言って、前の居住者が自殺・殺人・孤独死・事故などで死んでいる部屋や家のこと


そしてこの「事故物件」をわざわざ選んで住み続けている人がいます
それが「事故物件住みます芸人」こと松原タニシさん(36歳)。
デビュー16年目を迎えた松竹芸能に所属するピン芸人です。





松原タニシさんは2012年よりテレビ番組「北野誠のおまえら行くな。」(エンタメ~テレ)の企画の一環で事故物件に住みはじめ、企画を離れた現在も居住状態を維持しています
これまで住んだ事故物件は6年間で大阪、千葉、東京など計6軒
現在は東京の某都心駅から徒歩3分という好条件にもかかわらずIK家賃6万円&敷金礼金なしという激安物件で暮らしています(ちなみに前居住者は50歳代の男性。室内で首吊り自殺)。


そしてタニシさんは事故物件に住むだけではなく、心霊スポットとウワサされる場所や怪異な現象が起きるスポットへも果敢に踏み込み、自身が実際に取材して体験したり蒐集したりしたエピソードを語る「ルポルタージュスタイルの怪談士」としても頭角をあらわしているのです。


ほぼ1年に1回のペースで事故物件から事故物件へと移り住む事故物件移民の松原タニシさん。
そんな彼が、初の著書を上梓しました。
それが「事故物件怪談 恐い間取り」(二見書房)。



▲松原タニシさん初の著書「事故物件怪談 恐い間取り」(二見書房)





これがもう……ガチでコワい!


掲載されている事故物件はほぼすべてを間取り図まで掲載
駐輪場が「警戒区域」に指定されているマンションや、不動産情報に「霊感の強い方はご遠慮ください。」とはっきり明記されている部屋、首吊り自殺があったトイレの壁に人間の顔が浮かび上がった平屋の一軒家、謎の中国語メッセージが遺された部屋(訳してみると魔物を退治する呪文だった)などなどが、なんと証拠写真付きで載っているのです



▲「事故物件」の間取りと、「どんな状態だったか」が詳細に記されている


おかしな表現ですが「本物だからこそのリアリティ」が重く迫り、背中に冷や汗が伝います。
ページをめくる指の震えが止まらないのです。


そしてこの「事故物件怪談 恐い間取り」は、売れに売れまくり、6月26日発売以降、現在なんと四刷!
「あの世の方々も購入しているのではないか?」と思うほどの大ヒットです。
しかも女性からの支持が篤く、大阪の書店で開催された新刊発売記念トークショーでは、100人近い満席のお客さんのうち男性はなんとわずか4人だったのだそう。


いったいなぜ、好きこのんで事故物件に住み続けているのか。
そこで実際に見たものは?
そして事故物件に住むことでどんな心境の変化があったのか。


味わい深すぎる古民家で、お話をうかがってきました。


■読むと自分の家すらも恐くなる





――初の著書「事故物件怪談 恐い間取り」の発売、おめでとうございます。すごい売れ行きですね! どこの書店へ行っても売り切れでした。


松原タニシ
「ありがとうございます。『売り切れていた』という声をよく耳にするのですが、この記事が出る頃には次の重版分が全国の書店へ行き渡っていると思います。ぜひ探してみてください。あと、間取りの本なのでまれに『住宅』や『暮らしのエッセイ』というコーナーに置かれることがあるようですので、そこのあたりも覗いてみてください」


――確かに「住宅」の本ですし、「暮らしのエッセイ」には違いないですが……。初の著書が単なる怪談集ではなく『間取りの本』になったのはどうしてですか?


松原タニシ
「二見書房さんのアイデアです。『本を出さないか』というお話をいただき、打ち合わせのため、これまで実際に住んだり内見したり取材したりした事故物件の資料を持参したんです。それを見た担当の方が『こんなにたくさんの資料を残しているのですか。しかも間取りまでちゃんとある』と驚かれまして。そして『怪談と間取り図をセットにした方がリアリティがある。読者がよりいっそう想像できる。イメージが湧く』とおっしゃって、このかたちになりました」


――それはご担当の方の慧眼ですね。間取り図があることで恐さが何倍にも増幅していると思いました。実際、読み終えてから自分の家へ帰ることすら恐くなったほどです。


松原タニシ
「本を読んで『自分の家が恐くなった』という方が多いという話は聞きました」





■「殺人があった事故物件の家賃は意外と高い」


――ずいぶんたくさんの物件をご覧になられたようですが、どれくらい足を運ばれましたか?


松原タニシ
「内見まで進んだもので20軒くらい。資料を閲覧した物件は100軒はあったかと思います。内訳は自殺や孤独死が多いですね」


――そんなにもご覧になったのですか。そしてこの本を読んで「すごいな」と思ったのが、不動産屋さんで事故物件を選ぶシーンでした。事故物件のなかから『どの部屋を選ぶか』という観点は新鮮でした。選ぶ基準はなんですか?


松原タニシ
「基本はやっぱり『予算』です。家賃が安いのが絶対条件。あと駅からの距離です。遠すぎて仕事に支障が出てはいけませんから。選ぶ基準が意外に普通? そうなんですよ。事故物件と言えども、毎日そこで暮らせるかどうかが大事なので。ただ『前に住んだ事故物件は亡くなった方が女性だったので、次は男性で』というようにパターンは変えようと思っています」


――たとえば殺人事件があったなど、より悲惨なほうの部屋を選ぶんだと思っていました。


松原タニシ
「僕も意外だったのですが、殺人があった物件って、あんまり家賃が安くないんです。悲惨な殺人事件は強盗や強奪が目的で起きていることが多く、お金持ちが多いんです。家も大きくてね。だからたとえ家賃が半額になったとしても、もともとが高いので、あんまり安くならないんです」


――うわー、勉強になります!


■先輩芸人の命令で事故物件に住みはじめた





――では改めて、事故物件に住み始めたきっかけを教えてください


松原タニシ
「2012年の夏か秋に『お前ら行くな。』という北野誠さんの心霊トークライブがあったんです。それに大勢の若手芸人のひとりとして出演させていただきました。その時ステージで誠さんが『誰か恐い話を語れるやつはおらんか』とおっしゃって。僕は少しでも爪痕を残したかったので挙手したら、手を挙げたのは僕しかいなかった(笑)。それでたまたまあった自分自身の体験談を話し、この怪談がきっかけで誠さんから『事故物件に住んでみろ』という指令がくだされたんです。それ以来ずっと、現在まで事故物件以外は住んでいないです


――北野誠さんのライブに出るまで、怪談はお好きだったのですか?


松原タニシ
「う~ん……いやあ、怪談への興味は人並み程度でした。それまで人前で怪談を語るなんて経験はなかったです。まして怪談を語るために取材をするなんてしたことなんてなかったですね」


――北野誠さんに命令されて初めてお住まいになった事故物件が強烈だったんですよね。


松原タニシ
「そうなんです。初めて住んだのは凶悪な殺人事件があったマンションで、マンションそのものが事故物件になっていました。部屋にいると女性の声が聴こえたり、マンションのすぐ前の通りで同じ人が3度もひき逃げに遭っていたり、深夜に部屋を赤外線カメラで動画撮影をしたら、妖怪の『一反もめん』のような白い帯状のものが部屋を行き来したりしていました。いろんなことが次々と起きたんです。この一反もめんが飛んでいるような映像は竹書房から発売された『北野誠のお前ら行くな。』のDVDにも収録されています」


――この1軒目ではタニシさんご本人も、そして後輩の芸人さんもそのマンションの前でひき逃げに遭っているんですよね。しかしそんな恐い目に遭いながら、なぜ2軒目も事故物件に住もうと思われたのですか?


松原タニシ
「関西テレビの『怪談グランプリ』という深夜の特別番組に出させてもらえることになり、『事故物件に住んだら女性の声が聴こえた』『車にひかれた』『布のような謎の物体が映った』という事実をありのまま話したら、とても恐がられたんです。『あ、本当に身のまわりに起きたことを話すだけで、こんなに恐がってもらえるのか』と気がつき、『ここでやめたらもったいない。単発の企画で終わらせるのはもったいない』と思ったんです。事故物件に住むことを肩書にしてゆきたいなと。ここでやめてしまうと、パッとしなかった売れない芸人時代に戻ってしまうんじゃないかという気がしたんですよね」


■殺人犯が部屋に戻り、自分も殺されていたかも


――事故物件に住むことが世に出るチャンスだと思われたのですね。とはいえこの本を読ませていただくと、2軒目はさらにおそろしいですよね。自分なら耐えられない。


松原タニシ
「そうなんですよね。実の母親を殺害し、脱走してさらに通り魔殺人を起こした男が住んでいる部屋でした。だから犯人が部屋に戻ってくる可能性があったし、戻ってきた形跡もあった。実際にトイレに入っている間にドアノブをガチャガチャされる音が聴こえたり、郵便物がなくなったりしていたんです。犯人が生きているというのは、ある意味、心霊より恐いんですよね。たまたま留守にしていただけで、タイミングが合っていれば僕が殺されていたかもしれない

――ゾッとしますね……。


■部屋に入った瞬間に意思が奪われ、気絶!





――事故物件に住んで金縛りに遭うといった、そういう心霊的な現象は起きないのですか。


松原タニシ
「4軒目の千葉の物件は、部屋に入ったら身体が動かなくなりました。金縛りではないですが、動く気力がなくなるんです。動こうとする意思が奪われ、なんにもしたくなくなる。そしてそのまま翌日まで気絶しました。この千葉の物件だけは、どうにも家へ帰るのがいやでしたね」


――そんなにいやな思いをしてまでも住んでいたのはどうしてですか?


松原タニシ
「最低1年は住まないと違約金が発生しますし、ひとつの部屋でひと通り四季を体感しなければ体験談を話せませんから、なんとか住んでいました。1年間がんばって仕事をして、初期費用をつくってから別の事故物件へ引っ越しする。そういうサイクルになりましたね」


――「この物件だけは、いやでした」ということは、ほかの物件は平気だったのですか。


松原タニシ
「たいていは住んでいると馴れてきます。頭痛はしますが、次第に順応して『頭痛がして当たり前』と思うようになります


――頭痛がして当たり前?


松原タニシ
「まず、どこの事故物件も頭痛がします。人が死んでるイメージが頭に浮かんできますし。そして、なにかいやな目にあったり、仕事で落ち込むことがあっても、『これは事故物件に住んでいるからではないか?』と部屋のせいにして考えるようになってしまっていた時期もありました。でも途中から『それは違うな』と。事故物件であろうがなかろうが、『こっちの心の問題やな』と考えるようになりました


■事故物件のおかげで自分の世界が広がった





――事故物件に住むことで、そんなふうに自分と向き合うようになるんですね。ほかに心境の変化はありましたか?


松原タニシ
強くなりましたね。度胸がつきました。事故物件に住むようになってから、日頃どんなに恐いことがあっても、『大丈夫やな』『こんなん平気やな』と思うようになってきました。そして、いままで恐いから行かなかった、行こうとも思わなかった場所を訪ねてみたくなりました。あえて『恐い場所』を訪れて自主的に取材をするようになったのも、事故物件に住みはじめてからなんです」

――確かにタニシさんの取材力と粘りは見習いたいです。実際に現場を訪れ、写真や動画を撮り、聞き込みをする。だから話す怪談の信ぴょう性が高いです。


松原タニシ
「きっかけは、自分が住んでいる部屋が『なぜ事故物件なのか』を調べはじめたことですね。そして*大島てるさん主催の『事故物件ナイト』に招かれてその件を報告したのが、この本につながっていると思います。いまだに怪談を語るというより『リポートを報告する』という感覚なんです」


*大島てる 事故物件の情報提供ウェブサイト、およびそれを運営する本人。


――事故物件に住むことで、タニシさんの人生そのものが大きく変化しているのですね。


松原タニシ
「そうですね。『まず取材をする』ということが当たり前になってきました。それは自分にとって大きなプラスだったと思います。『心霊スポットという場所に一泊してみたらどうなるんだろう』とか『そこへひとりで行ったら何が起きるんだろう』とか、もっと知りたくなってくる。そういう好奇心が以前よりも増しました、『その場所にどういういわれがあり、なぜ怪談がうまれたのか』、それを知りたくて取材をするようになり、芸風も変わりました。事故物件のおかげで、自分の世界が広がったと思います


■いまでは事故物件に住まないと不安になるほど


――そんな事故物件に今後もお住まいになりますか?


松原タニシ
これからもずっと住み続けるでしょうね。事故物件に住むようになってから、『自分は生きている』『生かされている』と実感するようになりました。もしも事故物件に住んでいなかったら、なんとなくぼんやりと暮らしながら、だらだらと売れない芸人を続けていたのではないかと思います。なので不思議な感覚なんですが、事故物件に住まないと不安になるんですよ


――事故物件に住まないと不安になる! タニシさんは事故物件に遺された魂を浄化する使命を担っていたのかもしれませんね。では最後に、そんな松原タニシさんがこれまで最凶に恐かった事故物件はどこですか?


松原タニシ
「2軒目から3軒目に移ろうと思って住んだマンションですね。実はその部屋は……あとでわかったことなんですが……なんと……事故物件じゃなかったんです(笑)。ごく普通のなんの変哲もない部屋だったんです。間違って住んでしまった。それから1年間、なんの想い入れもない普通の部屋に住まざるをえなくて……。それが僕にとってこれまででもっとも大きな事故でした


――ありがとうございました。


「事故物件に住むようになってから、生きている実感するようになった」と語る松原タニシさん。
生きるとは、死と対峙することなのだと改めて感じました。
タニシさん初の著書「事故物件怪談 恐い間取り」は単なる怪談集にとどまらず、生と死について考えさせられる一冊です。


最後に、「いわくがある」という骨董のお面の前に立ってもらって撮影したのですが……なぜかどこにもピントが合わない合わない。



ほかの写真はすべてピントが合っているのに、このお面の前で撮った写真だけ全滅
もわーんとした波動でカメラが押され、レンズが勝手にまわってる感じでした。



「事故物件怪談 恐い間取り」松原タニシ(著) 二見書房
ISBNコード 9784576180977
定価 本体1400円+税





事故物件とは、前の住人が自殺・殺人・孤独死・事故などで死んでいる部屋や家のこと。
そんな「事故物件」を転々としている「事故物件住みます芸人」の松原タニシ、初の書き下ろし単行本。
「ワケあり物件」の不思議な話を、すべて間取り付きで紹介しています。


自分の部屋に入るのが恐くなる……。
“普通の部屋が実はいちばん恐い”という実話を揃えた怪談集です。


◎ 世の中を震撼させた殺人犯が住んだ部屋
◎ 住むとひき逃げに遭う部屋
◎ 気絶するように体調が悪くなる部屋
◎ 前の住人も前の前の住人も自殺している部屋
◎ 二年に一回死ぬ部屋
◎ 住人がすぐに出ていく部屋
◎ 霊感があると住めない部屋
◎ 特殊清掃アルバイトをやった部屋
◎ インターホンに老人の幽霊が映る部屋
◎ 黒い人がゆっくり近付いてくる部屋
◎ 中庭に墓石のある長屋
◎ 黒いシミが浮き出てくる部屋
◎ 天井の穴から男の顔が突き出ている部屋
◎ インターホンに謎の声が聞えた部屋 etc


【著者紹介】
松原タニシ(まつばら・たにし)




1982年4月28日、兵庫県神戸市生まれ。
松竹芸能所属のピン芸人。
現在は「事故物件住みます芸人」として活動。
2012年よりテレビ番組「北野誠のおまえら行くな。」(エンタメ~テレ)の企画により大阪で事故物件に住みはじめ、これまで大阪、千葉、東京など6軒の事故物件に住む。
日本各地の心霊スポットを巡り、インターネット配信も不定期に実施。
事故物件で起きる不思議な話を中心に怪談イベントや怪談企画の番組など多数出演する。
CBCラジオ「北野誠のズバリ」、YouTube・ニコニコ生放送「おちゅーんLIVE!」などで活躍中。
公式Twitterアカウント @tanishisuki


二見書房「事故物件怪談 恐い間取り」
http://www.futami.co.jp/book/index.php?isbn=9784576180977


取材協力:APSU SHUSEI



(吉村智樹)
https://twitter.com/tomokiy