エッシャーはダメ人間だった!?「エッシャー展」を10倍楽しむ8つの秘密
12年ぶりの開催となる奇想の版画家エッシャーの展覧会が上野の森美術館で開催されています。(大阪、福岡、愛媛へ巡回)
「ミラクル エッシャー展」と題し、エッシャーの代名詞である「だまし絵」だけでなく技法やその他、エッシャーの謎を解くべく8つの鍵を用意。これまで以上により深くエッシャーの絵画世界を探究することの出来る充実した内容となっています。
マウリッツ・コルネリス・エッシャー《滝 1961》 All M.C. Escher works © the M.C. Escher Company B.V. - Baarn -the Netherlands. Used by permission. All rights reserved. www.mcescher.com
さて、エッシャー展を更に深く楽しむために、今回は知られざる「エッシャーの秘密」を展覧会同様、8つ用意しました。これを知っているのといないのでは全然違います!
すぐ友達に話したくなるようなネタばかりです。それでは準備はよろしですか。「エッシャーの秘密」をとくとご堪能下さい!!
マウリッツ・コルネリス・エッシャー 《椅子に座っている自画像 1920》
1:エッシャーはオランダ人
まずは基本的なことからです。マウリッツ・コルネリス・エッシャー(Maurits Cornelis Escher, 1898年6月17日 - 1972年3月27日)はフランス人でもアメリカ人でもなくオランダ生まれオランダ育ちの生粋のオランダっ子です。
そう、オランダは小国ながらも、レンブラントやフェルメール、ゴッホ、モンドリアンを輩出しているヨーロッパでも屈指の芸術大国です。環境が人を育てると言いますが、エッシャーもオランダに生まれたからこそ、21世紀にも名を轟かすアーティストになったのです。
2:エッシャーはダメ人間?!
エッシャーファンにお叱りをうけそうですが、エッシャーが自分の作品(版画)で生計を立てられるようになったのは50歳を過ぎてからのことです。
では、それまではどうしていたのでしょう?簡単です。親やカミさんにパラサイトしていたのです。
エッシャーの父親は明治期の日本に招聘されるほど腕の立つ土木技師でありお金持ちでした。裕福な家庭の5人兄弟の末っ子として育てられ、病弱で学校の勉強もお世辞にも出来るとはいえなかったようです。
エッシャーのある種異常ともいえる木版画の表現に、どこかアール・ブリュット的な面を感じるのは、もしかしたらこんなところに要因があるのかもしれません。
3:エッシャーと宗教
敬虔なカトリックの信者であったエッシャーは宗教的な作品も残しています。「アダムとイブ」、「天地創造」、そして「バベルの塔」等々。
こうした宗教的作品にはだまし絵的な要素は見て取れません。もしキャプションが無ければこれをエッシャーの版画とは誰も気が付かないでしょう。
もしかしたら、今回の「ミラクル エッシャー展」の一番の見どころは、エッシャーが描いた宗教画かもしれません。「小鳥に説教をする聖フランチェスコ」や「聖ウィンテンティウス」など聖人を描いた作品も必見です!
マウリッツ・コルネリス・エッシャー《アマルフィ海岸 1934》
4:エッシャーはイタリア大好き
23歳の時に初めてイタリア周遊の旅に出かけたエッシャーは、結婚後も何度もイタリアを訪れています。いたくイタリアがお気に入りだったようです。
その時に目にしたイタリアの風景を版画で多く残しており、これまたエッシャーの別の側面を垣間見られます。
山の無い平坦なオランダで過ごすと、イタリアの風景がとても新鮮なものに映ると言われます。エッシャーが描いた風景画は総じて山が中心に据えられているのもそのような理由からでしょう。
ところが、愛してやまなかったイタリアとも別れの時が来ます。そうファシズムの台頭です。エッシャーが生きた時代は戦争の時代でもあったのです。
5:エッシャーは大器晩成型
エッシャーの作品に徐々に注目が集まるのは彼が40歳を過ぎてからです。1945年(エッシャー47歳)に第二次世界大戦が終結し、アムステルダム国立美術館で開催の「ナチスに協力しなかった作家の展覧会」に出品されました。
その後もロッテルダムのボイスマン美術館のグループ展やベルギーのアントワープで開催された「オランダのグラフィック・アート展」などの作品を出し、50歳を過ぎたころから知名度も上がって行きました。
53歳の時に『タイム』『ライフ』誌にインタビュー記事が掲載されたことが契機となり、英語圏でも彼の名前が知られるようになり人気も出たのです。コツコツと自分の信じた道を歩んできたことがようやく実り今のエッシャーがあるのです。
6:エッシャーと映画
エッシャー作品が現代の映画に登場していること気が付かれていたでしょうか。たとえば「ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密」では、有名な作品《相対性》の内側の世界に登場人物たちが入り込んでしまうシーンがあります。
またデヴィッド・ボウイやジェニファー・コネリーが出演した「ラビリンス 魔王の迷宮 」やクリストファー・ノーラン監督の代表作であり渡辺謙が出演した「インセプション」にも有名なあのエッシャー作品が登場します。
今すぐにでも観たくなりますよね!
7:エッシャーと音楽
映画とくれば、次は音楽です。とにかくエッシャーが現代のポピュラー・カルチャーに与えた影響は計り知れないものがあります。
音楽で代表的なのが、マイケル・ブレッカーの「Now You See It (Now You Don't)」 や、バウハウスの「Stairway to Escher」でしょう。
もしかしたら、ご自宅にあるかもしれません。探してみて下さい!個人的にお気に入りなのは、モット・ザ・フープル の「Mott the Hoople」です。
因みに、あのローリングストーンズのミックジャガーもジャケットにエッシャー作品を使いたかったのですが、残念ながら断られたというエピソードも残っています。
8:エッシャーと日本の漫画
エッシャーが日本で広く知られるようになったきっかけは漫画でした。それも全盛期(1968年)の『少年マガジン』の表紙を飾ったのです。「エッシャー 少年マガジン」で検索すると画像が出てきます。
表紙だけでなく特集企画「ふしぎ特捜隊」として誌面でも取り上げられ、現在の60歳前後のおじさまたちの心を虜にしました。
多くの漫画や雑誌で取り上げられたエッシャーですが、近年では荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』にも登場し若者の間でもその認知度を高めています。
さて、いかがでしたでしょうか。「エッシャーの8つの秘密」楽しんでいただけましたか。これを頭に入れておけば「ミラクル エッシャー展」も10倍楽しめるはずです。
今回のエッシャー展監修者の熊澤弘氏(東京藝術大学美術館 准教授)は、こうエッシャーについて述べられています。
「エッシャーの作り出したイメージは様々なメディアに影響を与えた。エッシャー芸術は同時代のファインアートの立場から見れば『オランダの版画芸術の文脈、そして20世紀美術の中での位置づけが難しい』。彼の生み出した造形は、数学や文学、ポピュラー・カルチャーなど、ファインアート『ではない』表現領域と関連づけてこそ理解可能となると言えるだろう」
生誕120年 イスラエル博物館所蔵
「ミラクル エッシャー展
奇想版画家の謎を解く8つの鍵」
supported by 弁護士法人 東京ミネルヴァ法律事務所
The Miracle of M.C. Escher: Prints from The Israel Museum, Jerusalem
会期:2018年6月6日(水)~7月29日(日)※会期中無休
開館時間:10:00~17:00
毎週金曜日と土曜日は20:00まで。※入館は閉館の30分前まで
会場:上野の森美術館
東京都台東区上野公園1-2
http://www.ueno-mori.org/
主催:イスラエル博物館、産経新聞社、フジテレビジョン、上野の森美術館
後援:イスラエル大使館、J-WAVE
特別協賛:弁護士法人 東京ミネルヴァ法律事務所
協賛:野崎印刷紙業
協力:Blue Dragon Art Company、日本通運
日本展監修:熊澤 弘(東京藝術大学 大学美術館准教授)
公式サイト:http://escher.jp/
All M.C. Escher works copyright © The M.C. Escher Company B.V. - Baarn-Holland. All rights reserved. www.mcescher.com