カワイイだけじゃないアイツ…アール・デコの館に、ブラジル先住民の「動物椅子」がやって来る!

2018/6/5 12:00 Tak(タケ) Tak(タケ)


東京白金にある東京都庭園美術館。1933年に竣工したアール・デコの貴重な建物として国の重要文化財指定を受けている美術館です。


東京都庭園美術館 南面

元々、この瀟洒な建物が美術館として建てられたわけではありません。皇族である朝香宮鳩彦王が自らの邸宅として明治後期に作らせたものです。そう皇族のお屋敷だったのです。

第二次世界大戦後は、吉田茂の外務大臣公邸として使用され、サンフランシスコ講和条約締結の構想を含む、戦後の重要な局面におけるひとつの舞台にもなりました。

そんな歴史とアール・デコの独特の雰囲気を持つ庭園美術館で開催される展覧会は、場所のチカラもあり、展示作品が何倍も美しく優雅に見えることでも有名です。


東京都庭園美術館 本館 正面外観

建物の内部をじっくり見せる展覧会も年に一度開催されるほど、他の美術館にはない特色(アドバンテージ)があります。

そんな庭園美術館に今年の夏、ちょっと変わった展示品がやってきます。南米大陸、ブラジル北部のアマゾン河やシングー川流域で暮らす先住民の人たちが作った「椅子」です。

これまで宝石や絵画、ガレなどのガラス器の展覧会など、展示室内の雰囲気に合わせたものを多く目にして来たので、果たしてそれらがどう映るのか今から楽しみでなりません。

ところで、展示されるブラジル先住民の椅子とは一体どのようなものなのでしょうか。一足お先に何点か紹介しましょう。


ウルフ作(メイナク)《ジャガー》 ⓒ BEĨ collection / by Raphael Costa


制作者不詳(クイクロ)《サル》 ⓒ BEĨ collection / by Raphael Costa


カマリ作(クイクロ)《ホウカンチョウ》 ⓒ BEĨ collection / by Raphael Costa


マワヤ作(メイナク)《サル》 ⓒ BEĨ collection / by Raphael Costa


制作者不詳(カヤビ)《バク》 ⓒ BEĨ collection / by Raphael Costa

ちょっと、ちょっと何ですかこのカワイイ動物たちは!そう、これがブラジル先住民たちの想像力が作り出した椅子なのです。

しかもこれ全て一木造りだというのですから驚きです。カワイイだけじゃなく技術的にも優れているのです。よく見ると動物のフォルムに独特な幾何学模様が施されているのが分かります。


東京都庭園美術館 本館 大食堂

ユニークな造形美を有するブラジル先住民の椅子が、これでもか~とアール・デコ様式を採用した展示室に置かれると、果たしてどのように見えるのでしょうか。考えただけでもこの異色の取り合わせワクワクしませんか。

国際人やら、グローバル化やらと自国だけでなく、否が応でも世界に目を向けずにはいられなくなった昨今ですが、どうしてもヨーロッパやアメリカなどの国の文化に目が行きがちで、結局白人至上主義の片棒を担いでいるような構図にはめ込まれてしまっています。

東南アジア、アフリカそして南米などの文化も等しく見ておかねばならないと頭で分かっていても中々チャンスがなく、そのままずるずると過ごしてしまっているのが現状です。

「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」展は、そんな心の片隅でくすぶるモヤモヤを吹き飛ばしてくれる痛快な展覧会になるはずです。今だからこそ観ておかねばなりません。


カマルヘ作(メイナク)《サル》 ⓒ BEĨ collection/ by Andreas Heininger

もうひとつ、見逃せない点がこの展覧会にはあります。それは会場構成を、2015年に「みんなの森 ぎふメディアコスモス」、2014年に「台中国家歌劇院」(台湾)を手掛けるなど、世界的に活躍を続ける建築家・伊東豊雄さんが手がけることです!

伊東豊雄さんからのメッセージ
ブラジル先住民が一本の丸太から彫り出した椅子(ストール)は、実に力強いエネルギーに溢れています。この魅力をいかなる展示によって伝えることが出来るでしょうか。
東京都庭園美術館は旧朝香宮邸(本館)とホワイトキューブ(新館)という対照的な空間に分かれています。装飾性の強い小部屋に分かれた本館では、抽象的な展示台を設けて椅子を浮き上がらせ、ワンルームの新館では沢山の椅子を床に置いて、座り込んで対面するような展示構成としました。 ブラジル先住民の椅子と展示空間のコラボレーションをお楽しみ下さい。

アール・デコの館+ブラジル先住民の椅子+伊東豊雄さん

↑今年の夏の庭園美術館での展覧会はちょっとした(かなりの)事件です。アートファンより建築ファンが多く押しかけそうな予感がします。いや~楽しみですね~~これは!


ウルフ作(メイナク)《オウギワシ》 ⓒ BEĨ collection / by Raphael Costa

「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」展の開催は6月30日から9月17日まで。話題になること受け合いです。混雑する前に早めに観に行く予定立てましょう。

また7月20日~8月31日までの毎週金曜は、「サマーナイトミュージアム」と題し夜21時まで開館するそうです。夜のアールデコの館も見ものですよね。ちなみに学生さんは17時以降の入館が無料になるそうですよ。




「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」

会期:2018年6月30日(土)〜 9月17日(月・祝)
会場:東京都庭園美術館
東京都港区白金台5-21-9
休館日:第2・4水曜日(7/11, 7/25, 8/8, 8/22, 9/12)
開館時間:10:00–18:00 (入館は17:30まで)
*7月20日〜8月31日までの毎週金曜は21時まで開館
(入館は20時30分まで)
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館、日本経済新聞社
特別協力:ベイ出版
後援:駐日ブラジル大使館 
協力:CBMM
年間協賛:戸田建設株式会社

【おまけ】
あまり知られていませんが、庭園美術館の敷地内には日本庭園もあります。展覧会を観終えた後は、散歩がてらてくてく散策してみましょう。


東京都庭園美術館 日本庭園


東京都庭園美術館 日本庭園

庭園美術館についてもっと詳しく知りたい!魅力にどっぷり浸かりたい!!という人向けにアートダイバー社からこんな素敵な本が今年の4月に出ました。


旧朝香宮邸物語―東京都庭園美術館はどこから来たのか

アール・デコ・リヴァイヴァル!
激動の時代を越えて守り抜かれた奇跡の建築「旧朝香宮邸」。その歴史がひもとかれたとき、 “美のタイムカプセル”は開かれ、アール・デコの栄華が再び眼前に姿をあらわす!

「アール・デコ」様式で統一された優美なデザインで、他の美術館とは一線を画する東京都庭園美術館。2015年には国の重要文化財に指定された同館は、都心とは思えない緑豊かな庭園とともに多くの来館者を魅了しています。