【名画で学ぶ〇〇】タグで 名画も学ぼう!

2018/5/16 22:20 虹
ゴールデンウイークの頃に比べてやや旬は過ぎましたが、Twitter上で繰り広げられる大喜利「名画で学ぶ〇〇」のハッシュタグ。面白いですよね。
主婦業、銀行、大学院、病院、バンギャ、クラシック……。
タグを遡っていたらいつの間にか時間が経過していた、という方もいるのでは?

誰が最初にはじめたのか遡ってみたところ、2015年にはすでに「株で学ぶ世界の名画」、「不動産売買で学ぶ世界の名画」という名画系タグがあったんですね。知らなかった!

▲ジャン=フランソワ・ミレー 《春》 (1868年~1873年) オルセー美術館蔵

私は株も不動産もからっきしですが、それでもなんとなく笑えてしまうのは、ネタと絵画の組み合わせが絶妙だからなのでしょう。

さて、時を経て2018年の4月の下旬頃から爆発的な盛り上がりを見せた「名画で学ぶ〇〇」タグ。超有名どころからマイナーなものまで、あらゆる絵画がタイムラインに流れました。

それと同時に散見されたのが、「作者の名前とタイトルも一緒に載せてほしい!」という意見。
私も思った! 絵は観たことがある。でも、これが「誰の」、「何」という作品なのかが書かれていない……(泣)ということがたびたびありました。

できればこれを描いた画家や作品ことも知りたい!
せっかくだから名画についても学びたい!

そんなわけで、いくつかのタグからツイートと元になった絵画を取り上げつつ、現在および今後の展覧会にて拝めてしまう作品の情報も交えて紹介したいと思います。




◆名画で学ぶ銀行

ざっと遡ってみたところ、早い時期から界隈をにぎわせていたのが「銀行」
▲ヨハネス・フェルメール 《婦人と召使(女主人と女中)》 (1667年頃) フリック・コレクション蔵


表情とセリフがシンクロしすぎて、もう召使が事務のボスにしか見えなくなってきますが、一旦冷静に絵画だけ切り取ってみると、召使が手渡す手紙が誰からのものかで作品全体のイメージが変わってきます。
意中の相手からのラブレター? それとも苦手な人からの手紙? もしやまさかの領収書……?
フェルメール作品には「手紙」というモティーフが頻出します。また、この婦人が着用している毛皮のついた黄色い上着をはじめ、類似するアイテムがたびたび登場することでも知られています。


▲ヨハネス・フェルメール 《手紙を書く女》 (1665年頃) ナショナル・ギャラリー蔵




▲ヨハネス・フェルメール 《窓辺で手紙を読む女 》(1657年頃) アルテ・マイスター絵画館蔵



静謐な光の中に佇むフェルメールの世界は、鑑賞者にさまざまな物語を想起させます。それゆえに、ネタが作りやすいのかもしれません。
10月からはじまる「フェルメール展」では、現存するフェルメールの絵画35点のうち8点が来日するとのこと。はたしてこの作品はやってくるでしょうか?楽しみですね。


フェルメール展

東京
●会期:2018年10月5日(金)~2019年2月3日(日)
●会場:上野の森美術館

大阪
●会期:2019年2月16日(土)~5月12日(日)
●会場:大阪市立美術館

※両会場とも、詳細はホームページにて順次発表






◆名画で学ぶ大学院
▲左:ラファエロ・サンティ 《アテネの学堂(アテナイの学堂)》 ヴァチカン宮殿蔵 / 右:作者不詳 《百鬼夜行之図》 岩瀬文庫コレクション


続いて大学院タグ。こちらは「(院や学会が)思っていたのと違う!」というネタが多かったですね。でも、もしかしたらアテネの学堂だって、中の人たちからすれば百鬼夜行の如し……だったのかもしれません。

《アテネの学堂》はヴァチカン宮殿内の「署名の間」に描かれた巨大なフレスコ画。中央で天を指しているのはプラトン、その隣にいるのがアリストテレスです。
ちなみにプラトンのモデルはレオナルド・ダ・ヴィンチ、中央前列で頬杖をついているヘラクレイトスのモデルはミケランジェロ、そして画面右端の集団の中からこちらを見つめる黒い帽子の人物がラファエロ自身がモデルといわれています。

▲左からプラトン、ヘラクレイトス、そしてラファエロがモデルとなったといわれている人物


対する《百鬼夜行之図》
百鬼夜行といえば大徳寺真珠庵の《百鬼夜行絵巻》が有名ですが、ほかにも鳥山石燕河鍋暁斎など、さまざまな絵師たちによって描かれている人気のお題です。

▲伝土佐光信 《百鬼夜行絵巻》(部分) (室町時代) 大徳寺真珠庵蔵

多くの百鬼夜行は妖怪や付喪神たちが闊歩する図で知られていますが、岩瀬文庫コレクションの《百鬼夜行之図》は、終盤にて妖怪vs神様のバトルが拝めるという珍しいストーリー仕立てとなっています。




◆名画で学ぶJリーグ

▲1枚目より:岸田劉生 《野童女》 (1922年) 神奈川県立近代美術館蔵/《麗子》 (1921年) 東京国立博物館蔵/《毛糸肩掛せる麗子肖像》 (1920年) ウッドワン美術館蔵/《麗子微笑之立像》(1921年) メナード美術館蔵

Jリーグに関してはほぼ無知なんですが、この表情の移り変わりが状況にシンクロしまくっていて笑ってしまいました。

岸田劉生の麗子像はある種のグロテスクさを孕んでいますが、これは劉生が「日本における油彩画表現」や、「こはいものみたさの不思議なる心の欲望」を追究した結果、このような画風となったといわれています。
しかし弟子の椿貞雄は、「さすがに娘は可愛く描きたい……」と、ここまで”デロリ”とさせることはなかったとか。

さて、一番インパクトの強い1枚目の《野童女》。こちらの作品は、現在、東京国立博物館にて開催中の企画展「名作誕生―つながる日本美術」に出品されています。
諏訪部順一さんの音声ガイドは本当にエライことになっておりますので、ガイドとともにぜひどうぞ!


名作誕生ーつながる日本美術

●会期:~2018年5月27日(日)※もうすぐ終了! 急げ!!
●会場:東京国立博物館 平成館
●時間:9:30~17:00 金・土曜 ~21:00、日曜 ~18:00
※入館はいずれも閉館の30分前まで
●休館日:月曜





◆名画で学ぶ主婦業
爆発的な盛り上がりを見せたのがこちらの主婦タグ。
笑えない状況ですらユーモアを交えて語る姿に頭が上がりません。主婦の皆さま、お疲れ様です。そしてお母さん、いつもありがとう!

▲イワン・クラムスコイ 《忘れえぬ女(見知らぬ女)》 (1883年) トレチャコフ美術館蔵


思わず「アッ、ハイ……」と引き下がってしまいそうになる目力。
他のタグでもひっぱりだこのこちら、トルストイの小説『アンナ・カレーニナ』のヒロインにインスパイアされたものとも言われていますが、実際のモデルは明らかになっていません。

ところで一度目を合わせたらまさに「忘れえぬ」存在となりそうなこの作品。なんと今年、Bunkamura ザ・ミュージアムにやってくるのです!
これはぜひとも観ておきたいですね。


イワン・クラムスコイ 《忘れえぬ女》 1883年 油彩・キャンヴァス ©The State Tretyakov Gallery

Bunkamura30周年記念 国立トレチャコフ美術館所蔵
ロマンティック・ロシア

●会期:2018年11月23日(金・祝)~2019年1月27日(日)
●会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
●時間:10:00~18:00 金・土曜 ~21:00
●休館日:11/27、12/18、1/1


▲ジャック=ルイ・ダヴィッド 《マラーの死》 (1793年) ベルギー王立美術館蔵


続いてこちらも人気の高い《マラーの死》
時はフランス革命。ジャコバン派のジャン=ポール・マラーが、対立するジロンド派のシャルロット・コルデーによって暗殺されてしまいます。翌日、同じくジャコバン派所属のジャック=ルイ・ダヴィッドに、マラーの肖像画を描いてほしいという依頼が入りました。そしてその4ヶ月後、この作品が寄贈されたのです。

この作品はたちまち大評判となり、数点のレプリカが作成されました。そのうちのひとつが、5月30日からはじまる「ルーヴル美術館展」にて出品されるというから、こちらも見逃せません!



ルーヴル美術館展
肖像芸術――人は人をどう表現してきたか

●会期:2018年5月30日(水)~2018年9月3日(月)
●会場:国立新美術館
●時間:10:00~18:00  金・土曜 6月は~20:00、7・8・9月は~21:00
    ※いずれも入館は閉館の30分前まで
●休館日:火曜  ※ただし8/14は開館




旬はやや過ぎたものの、「名画で学ぶ水曜どうでしょう」などの新しいタグも生まれており、まだまだ楽しめそうな予感です。

ネタも面白いけれど、さまざまな絵画に触れることができるのもこのタグの特徴ですね。ジャンルを学びつつ名画も学べるというまさに一石二鳥。

上記でご紹介したほかにも、2018年は名画タグに頻出するエッシャームンクの展覧会が開催されます!

ぜひ会場で生の「元ネタ」を鑑賞してみてください!
現物を前にすると、また違った印象が楽しめると思いますよ。




生誕120年 イスラエル博物館所蔵
ミラクル エッシャー展
奇想版画家の謎を解く8つの鍵

●会期:2018年6月6日(水)~7月29日(日)
●会場:上野の森美術館
●時間:10:00~17:00 金・土曜 ~21:00
    ※いずれも入館は閉館の30分前まで
    ※会期中無休





ムンク展―共鳴する魂の叫び

●会期:2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日)
●会場:東京都美術館
●時間:9:30~17:30 金・土曜および11/1、11/3は~20:00
    ※入室はいずれも閉室の30分前まで
●休室日:月曜日、12月25日(火)、1月1日(火)、15日(火)
    ※ただし、11/26、12/10、12/24、1/14は開室