彫刻が服着る!?巨大クモも小便小僧もオシャレ番長!

2018/5/7 09:00 明菜 明菜

「彫刻が人間気取りで服を着ている!」
というタレコミがありましたので、早速現場へ急行してきました。
2年に1回しか服を買わない、ビエンナーレ・ファッショニスタの明菜です。

場所は六本木ヒルズの森美術館近く。
六本木駅を降りてすぐに巨大なクモがいるじゃないですか。
大きくて怖いのに、なぜか受け入れられているパブリックアートね。

ルイーズ・ブルジョワ「ママン」(2002年)、森美術館

真っ黒で細脚のエイリアンっぽいクモです。
映画「複製された男」を彷彿とさせる…伝わるのかな、この比喩。
しかし通報を受けて向かうと、そこには確かに普段と違う彼女が!


なにコレ!
確かに「靴下」を履いています!
しかも、大変ポップな柄!
クモが靴下を…これは一体、何が起こっているのでしょうか?


六本木ヒルズにある巨大クモはアート作品です。
ルイーズ・ブルジョワという、下積み時代を経験していなさそうな名前の女性アーティストが制作しました。
タイトルは「ママン」、すなわち「お母さん」です。
風貌に対する矛盾の念を禁じ得ません。

ブルジョワはなぜ母親をクモに喩えたのか?
弊職は、母の強さと愛情を表現しているのだと思っています。
詳しい考察は弊ブログ「アートの定理」に書いたので、僭越ながらリンク先を見ていただくとして。


靴下を製作したのは、マグダ・セイエグという女性のテキスタイルアーティストです。
彼女は世界中の街を毛糸だらけにする「毛糸テロ」の平和な実行犯なのです。

そんなセイエグさんがアジアで最初に毛糸テロを行ったのが、六本木の「ママン」だったというわけ。
テロはテロでも、事件性のない毛糸テロで良かったねー。


近づいて触ってみると、ふわっと柔らかいニットです。
心なしか温かさすら感じます。

しかも、ママンのゴツゴツした脚にぴったりフィットしています。
どうやって作ったんだろう? と思って調べてみると、手編みで作られたことが発覚しました。
て、手編み…?
こんなに大きいクモの靴下8個を、手編みだと?


ママンの靴下にとどまらず、周りの柱まで毛糸テロの餌食に。
これも全部手編み?
毛糸テロリスト、恐るべし。

セイエグさんが毛糸テロを行うのは、
「デジタル化した社会は、『親しみ』を感じられるものを求めている」
という考えから。
靴下を触って感じた温かみ…これが「親しみ」なのかもしれません。

母の愛を表現したクモと、親しみを表現した靴下。
このコラボ…ちゃんと意味がありましたね!


この流れで触れたいのが、他の彫刻の着衣事情。
オランダ・ブリュッセルの小便小僧なんて、もっとおしゃれ。

「小便小僧 服」でGoogle画像検索した結果

なんだこのバリエーション!
日本人なのに服を10着しか持たない弊職には信じられません。
クローゼットがパンパンになってそう。

しかるべきところに穴がきちんと開いているのが良いですね。
その生命線は守るのねっていう。

さらに、ブリュッセルには小便小僧の衣装ミュージアムがあるのです。
誕生した17世紀から今まで、1000着近い衣装を着てきたジュリアンくん(小便小僧)だからこそ、成り立つ美術館ですね。


ママンにもたくさんの衣装を着ていただき、森美術館で衣装の大展覧会をやってほしいです。
長い靴下8個1組がびろーんと展示されるシュールな展覧会になるでしょう。

ママンが靴下を履いているのは、2018年4月25日〜5月27日の約1ヶ月間です。
まちと美術館のプログラム「六本木ヒルズ15周年記念インスタレーション」

ママンを所蔵する森美術館は、東京メトロ日比谷線の「六本木駅」1C出口から徒歩0分!
六本木ヒルズで豪族気分を味わいつつ、アートも堪能できるという好立地。
開催中の展覧会「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」は2018年9月17日(月)まで。

森美術館
■開館時間
月・水~日10:00~22:00(最終入館 21:30)
火10:00~17:00(最終入館 16:30)

■住所
東京都港区六本木6-10-1
六本木ヒルズ森タワー53階

■公式Webサイト
https://www.mori.art.museum/jp/



六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」
  世界が魅せられた日本建築、その本質に迫る!
2018.4.25(水)~ 9.17(月)
http://www.mori.art.museum/jp/