日本美術の聖地・五浦へ
2013年に封切られた映画「天心」を見てから、いつかは行ってみたいと思い続けていた北茨城市の五浦(いづら)。
ようやく春らしくなってきた3月10日(土)に思い切って行ってきました。
上野から快速で水戸まで約2時間、水戸から各駅停車で大津港まで約1時間。
行く前には都心からかなり遠いのではと思っていましたが、意外とそうでもなく、窓の外の景色を眺めたり、持ってきたお菓子を食べたり、うとうとしたりしているうちにいつの間にかついてしまうといった感じでした。
最初に行ったのは大津港駅からタクシーで10分ほどの五浦岬公園。
タクシーを降りてなだらかな坂を上りきると一気に視界が開け、海岸が見えてきます。そして断崖の手前には見覚えのある木造の建物が。
これが映画「天心」のロケセットです。
「日本美術院研究所」の看板も見えてきます。
(日本美術院研究所の建物は、実際には茨城県天心記念五浦美術館の近くにありました。場所は末尾の「周辺マップ」をご参照ください。)
東京美術学校を追放された岡倉天心が東京・谷中に日本美術院を設立したものの、経営が立ちいかなくなり移転した先がこの五浦。
この地には横山大観、菱田春草、下村観山、木村武山の4人が岡倉天心とともに移り住み、この五浦で数々の名品を生み出しています。
まさに五浦は近代日本画の「聖地」。
室内にはロケ当時の様子が再現されています。
この場面は、大観たちがここで制作に励んでいた当時に撮影された写真を再現したもので、手前の木村武山がかがみこんで筆を進め、その隣の菱田春草がこちらを向き、奥の横山大観と下村観山が制作中の作品を見ているという場面で、映画「天心」でも再現されていました。
室内にはもとの写真と映画で再現された場面のパネルも並んで展示されています。
室内に展示されている作品は東京藝術大学の学生さんたちによる模写とのこと。どの作品もいい雰囲気出てます。
(映画「天心」オープンロケセット展示公開情報)
休館 毎週火・水・木曜日
料金 無料
公開時間 4月~9月 8:30~17:30
10月・2月・3月 8:30~17:00
11月~1月 8:30~16:30
(入場は終了時間の30分前まで)
問合せ先 (一財)茜平ふれあい財団 電話0293-30-0606
(係の方のお話だと、荒天の時は公開しないこともあるとのことです。天気のいい日に行くのががおススメです。)
映画「天心」は全国各地で上映が続いています。
復興支援映画「天心」公式ブログによると、今のところ3月30日までしか決まっていないようですが、これからも上映の機会があればぜひご覧になってください。DVDも発売されています。
この映画をきっかけにぜひ近代日本画ファンになりましょう!
復興支援映画「天心」公式ブログ
ロケセットを出てなだらかな坂を上ると六角堂が一望できるビュースポット。
左の赤い小さな建物が六角堂です。
北茨城市では、東日本大震災で津波の被害を受け、5人が亡くなり、1人が行方不明になっています。岡倉天心が自ら設計した六角堂も津波で流されましたが、1年後には復興のシンボルとして見事に再建されました。
続いて岡倉天心の住居跡に設置された茨城大学五浦美術文化研究所へ。
長屋門が受付・入口になっていて、ここから入ると旧天心邸や六角堂を間近に見ることができます。
入場料は300円、茨城県天心記念五浦美術館のチケットを持っていると割引で250円になります。
旧天心邸です。
庭の案内ボードの支柱には津波到達点の赤い線が示されています。
海岸沿いの高台にあるにもかかわらず、東日本大震災の時の津波はここまで来て、天心邸も床下浸水の被害を受けたとのことです。津波のおそろしさが想像されます。
続いて六角堂へ。
天心は「観瀾亭」(大波を見る東屋)と呼んでいたそうですが、実際にその場に立ってみると、激しい波の音が絶え間なく聞こえてきます。
茨城大学五浦美術文化研究所を出て、茨城県天心記念五浦美術館の方向に向かって歩くとすぐ左手に岡倉天心の墓が見えてきます。
お墓の前で手を合わせて、さらに10分ほど歩くと美術館の入口が見えてきます。
さて、いよいよ「秘蔵の木村武山展」。
※終了しました。
最新の展覧会情報は美術館公式サイトでご確認くださいhttp://www.tenshin.museum.ibk.ed.jp/
館内は撮影禁止ですが、受付の方におうかがいしたら、企画展会場入口のこのパネルは撮影可とのことでした。
前期展示は28点。鮮やかな色遣いの花鳥画、空気感のある背景から浮かび上がる草花、毛のふわふわ感がよくわかる生き生きとした鶴や鷲に雀、そして静謐感漂う仏画、どれも名品ばかり。
それに「秘蔵」というだけあって前期後期あわせて41点のすべてが個人蔵。これだけ多くの隠れた武山の作品を見るチャンスはそう多くはないでしょう。
チラシに掲載されている六曲一双屏風《群鶴(其一)》は大正13(1924)年の再興第11回院展に出品された後、長らく行方不明とされ約90年ぶりの公開。
この作品は、江戸琳派・鈴木其一の《群鶴図屏風》(プライス・コレクション)に影響を受けたから(其一)としたのかなと思いましたが、これは「その一」のことで、実際には「其二(=その二)」があったとのこと。解説パネルにもありましたが、其一、其二が並んでいるところをぜひ見てみたいものです。
2月9日(金)に始まった「秘蔵の木村武山展」は3月20日(火)から後期展示が始まりました。展覧会の概要は次のとおりです。
「秘蔵の木村武山展-新しき武山芸術の発見」
会 期 2月9日(金)~4月22日(日)
開催時間 午前9時30分~午後5時(2月9日~3月31日)
午前9時~午後5時(4月1日~4月22日)
(入場は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日
入場料 一般310円他
会期中のイベント(今後開催されるもの)
学芸員によるギャラリートーク
日時 4月22日(日)13:30~(約40分)
集合場所 企画展示室入口(要企画展入場券)
美術館公式HPはこちらです。
http://www.tenshin.museum.ibk.ed.jp/
館内の展示室でもう一つ忘れてはいけないのが、岡倉天心記念室。
ここには天心の顔写真付きの活動年表や天心邸書斎の実物大復元、天心がデザインした日本美術学校時代の制服、天心が発注した釣舟「龍王丸」の復元模型はじめ天心関連の資料が展示されています。
記念室のガイドツアーが毎日3回(11:00~、14:00~、15:30~ 所要約25分)開催されています。解説をうかがうと、天心の生涯や五浦での活動がよりよく分かるので、ガイドツアーもおススメです。
こちらは岡倉天心記念室入口にある天心の横顔のレリーフ。
岡倉天心記念室内も撮影禁止ですが、このレリーフだけは撮影可です。それに触っても大丈夫。ぜひ天心のふくらんだほっぺたにタッチして来館記念に一枚撮ってみましょう!ご利益があるかも?
よく見ると美術館のガラスにも天心の横顔のシールが貼られています。天心の横顔はこの美術館のシンボルとのことです。
岡倉天心記念室内には横山大観、菱田春草、下村観山、木村武山の作品が展示されていて、4月22日(日)までは次の作品を見ることができます。
横山大観《秋の夕》
菱田春草《春の朝》《柴舟》
下村観山《日の出・雪梅》
木村武山《貴紳観桜図》
すっかり映画「天心」の世界にひたって心地よい時間を過ごした五浦でしたが、帰りの電車の時間も近づいてきたので、美術館からタクシーを呼んで大津港駅に戻りました。
大津港駅に戻って気がつきました。なんと駅の入口も六角堂風!
駅舎の中のベンチに腰掛け、駅前のコンビニで買ったホットコーヒーを飲みながら、岡倉天心になりきって六角堂の中に入った気分でしばしもの思いに耽っていました。
五浦は見どころいっぱいで、とてもいいところです。
これから季節もよくなるので、まずは「秘蔵の木村武山展」が開催されている4月22日(日)までに一度訪れてみてはいかがでしょうか。
今回訪れた見どころのアクセスや位置関係はこちらをご参照ください。美術館の周辺地図です。
ようやく春らしくなってきた3月10日(土)に思い切って行ってきました。
上野から快速で水戸まで約2時間、水戸から各駅停車で大津港まで約1時間。
行く前には都心からかなり遠いのではと思っていましたが、意外とそうでもなく、窓の外の景色を眺めたり、持ってきたお菓子を食べたり、うとうとしたりしているうちにいつの間にかついてしまうといった感じでした。
最初に行ったのは大津港駅からタクシーで10分ほどの五浦岬公園。
タクシーを降りてなだらかな坂を上りきると一気に視界が開け、海岸が見えてきます。そして断崖の手前には見覚えのある木造の建物が。
これが映画「天心」のロケセットです。
「日本美術院研究所」の看板も見えてきます。
(日本美術院研究所の建物は、実際には茨城県天心記念五浦美術館の近くにありました。場所は末尾の「周辺マップ」をご参照ください。)
東京美術学校を追放された岡倉天心が東京・谷中に日本美術院を設立したものの、経営が立ちいかなくなり移転した先がこの五浦。
この地には横山大観、菱田春草、下村観山、木村武山の4人が岡倉天心とともに移り住み、この五浦で数々の名品を生み出しています。
まさに五浦は近代日本画の「聖地」。
室内にはロケ当時の様子が再現されています。
この場面は、大観たちがここで制作に励んでいた当時に撮影された写真を再現したもので、手前の木村武山がかがみこんで筆を進め、その隣の菱田春草がこちらを向き、奥の横山大観と下村観山が制作中の作品を見ているという場面で、映画「天心」でも再現されていました。
室内にはもとの写真と映画で再現された場面のパネルも並んで展示されています。
室内に展示されている作品は東京藝術大学の学生さんたちによる模写とのこと。どの作品もいい雰囲気出てます。
(映画「天心」オープンロケセット展示公開情報)
休館 毎週火・水・木曜日
料金 無料
公開時間 4月~9月 8:30~17:30
10月・2月・3月 8:30~17:00
11月~1月 8:30~16:30
(入場は終了時間の30分前まで)
問合せ先 (一財)茜平ふれあい財団 電話0293-30-0606
(係の方のお話だと、荒天の時は公開しないこともあるとのことです。天気のいい日に行くのががおススメです。)
映画「天心」は全国各地で上映が続いています。
復興支援映画「天心」公式ブログによると、今のところ3月30日までしか決まっていないようですが、これからも上映の機会があればぜひご覧になってください。DVDも発売されています。
この映画をきっかけにぜひ近代日本画ファンになりましょう!
復興支援映画「天心」公式ブログ
ロケセットを出てなだらかな坂を上ると六角堂が一望できるビュースポット。
左の赤い小さな建物が六角堂です。
北茨城市では、東日本大震災で津波の被害を受け、5人が亡くなり、1人が行方不明になっています。岡倉天心が自ら設計した六角堂も津波で流されましたが、1年後には復興のシンボルとして見事に再建されました。
続いて岡倉天心の住居跡に設置された茨城大学五浦美術文化研究所へ。
長屋門が受付・入口になっていて、ここから入ると旧天心邸や六角堂を間近に見ることができます。
入場料は300円、茨城県天心記念五浦美術館のチケットを持っていると割引で250円になります。
旧天心邸です。
庭の案内ボードの支柱には津波到達点の赤い線が示されています。
海岸沿いの高台にあるにもかかわらず、東日本大震災の時の津波はここまで来て、天心邸も床下浸水の被害を受けたとのことです。津波のおそろしさが想像されます。
続いて六角堂へ。
天心は「観瀾亭」(大波を見る東屋)と呼んでいたそうですが、実際にその場に立ってみると、激しい波の音が絶え間なく聞こえてきます。
茨城大学五浦美術文化研究所を出て、茨城県天心記念五浦美術館の方向に向かって歩くとすぐ左手に岡倉天心の墓が見えてきます。
お墓の前で手を合わせて、さらに10分ほど歩くと美術館の入口が見えてきます。
さて、いよいよ「秘蔵の木村武山展」。
※終了しました。
最新の展覧会情報は美術館公式サイトでご確認くださいhttp://www.tenshin.museum.ibk.ed.jp/
館内は撮影禁止ですが、受付の方におうかがいしたら、企画展会場入口のこのパネルは撮影可とのことでした。
前期展示は28点。鮮やかな色遣いの花鳥画、空気感のある背景から浮かび上がる草花、毛のふわふわ感がよくわかる生き生きとした鶴や鷲に雀、そして静謐感漂う仏画、どれも名品ばかり。
それに「秘蔵」というだけあって前期後期あわせて41点のすべてが個人蔵。これだけ多くの隠れた武山の作品を見るチャンスはそう多くはないでしょう。
チラシに掲載されている六曲一双屏風《群鶴(其一)》は大正13(1924)年の再興第11回院展に出品された後、長らく行方不明とされ約90年ぶりの公開。
この作品は、江戸琳派・鈴木其一の《群鶴図屏風》(プライス・コレクション)に影響を受けたから(其一)としたのかなと思いましたが、これは「その一」のことで、実際には「其二(=その二)」があったとのこと。解説パネルにもありましたが、其一、其二が並んでいるところをぜひ見てみたいものです。
2月9日(金)に始まった「秘蔵の木村武山展」は3月20日(火)から後期展示が始まりました。展覧会の概要は次のとおりです。
「秘蔵の木村武山展-新しき武山芸術の発見」
会 期 2月9日(金)~4月22日(日)
開催時間 午前9時30分~午後5時(2月9日~3月31日)
午前9時~午後5時(4月1日~4月22日)
(入場は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日
入場料 一般310円他
会期中のイベント(今後開催されるもの)
学芸員によるギャラリートーク
日時 4月22日(日)13:30~(約40分)
集合場所 企画展示室入口(要企画展入場券)
美術館公式HPはこちらです。
http://www.tenshin.museum.ibk.ed.jp/
館内の展示室でもう一つ忘れてはいけないのが、岡倉天心記念室。
ここには天心の顔写真付きの活動年表や天心邸書斎の実物大復元、天心がデザインした日本美術学校時代の制服、天心が発注した釣舟「龍王丸」の復元模型はじめ天心関連の資料が展示されています。
記念室のガイドツアーが毎日3回(11:00~、14:00~、15:30~ 所要約25分)開催されています。解説をうかがうと、天心の生涯や五浦での活動がよりよく分かるので、ガイドツアーもおススメです。
こちらは岡倉天心記念室入口にある天心の横顔のレリーフ。
岡倉天心記念室内も撮影禁止ですが、このレリーフだけは撮影可です。それに触っても大丈夫。ぜひ天心のふくらんだほっぺたにタッチして来館記念に一枚撮ってみましょう!ご利益があるかも?
よく見ると美術館のガラスにも天心の横顔のシールが貼られています。天心の横顔はこの美術館のシンボルとのことです。
岡倉天心記念室内には横山大観、菱田春草、下村観山、木村武山の作品が展示されていて、4月22日(日)までは次の作品を見ることができます。
横山大観《秋の夕》
菱田春草《春の朝》《柴舟》
下村観山《日の出・雪梅》
木村武山《貴紳観桜図》
すっかり映画「天心」の世界にひたって心地よい時間を過ごした五浦でしたが、帰りの電車の時間も近づいてきたので、美術館からタクシーを呼んで大津港駅に戻りました。
大津港駅に戻って気がつきました。なんと駅の入口も六角堂風!
駅舎の中のベンチに腰掛け、駅前のコンビニで買ったホットコーヒーを飲みながら、岡倉天心になりきって六角堂の中に入った気分でしばしもの思いに耽っていました。
五浦は見どころいっぱいで、とてもいいところです。
これから季節もよくなるので、まずは「秘蔵の木村武山展」が開催されている4月22日(日)までに一度訪れてみてはいかがでしょうか。
今回訪れた見どころのアクセスや位置関係はこちらをご参照ください。美術館の周辺地図です。