近代日本画の世界へようこそ
はじめまして。「アートと旅、ドイツについて綴る週末ブロガー」のyamasanです。
さて、さっそくですが、みなさんは近代日本画と聞いてどんな作品、どんな作家を思い浮べますでしょうか。
横山大観でしょうか。それとも美人画の上村松園でしょうか。答えは人それぞれでしょうが、こんな問いかけから始まる美術書が今年1月に出版されました。
タイトルは『日本画とは何だったのか-近代日本画史論』(角川選書 平成30年1月)。著者は、近代日本美術史が専門の東京藝術大学大学美術館准教授の古田亮さん。
図版が90点以上もあって、とても丁寧な解説なので、明治維新以後の日本の近代化、大正デモクラシー、関東大震災と復興、戦前・戦中の挙国一致体制、そして戦後、と時代ともに歩んできた近代日本画とは何だったのか、楽しみながら読み進めることができます。
近代日本画ファンにおススメの本です。
そしてもう一つこの本の楽しみ方があります。
今年は明治150年、そして明治元年に生まれた横山大観の生誕150年ということもあって、「横山大観展」をはじめ、多くの近代日本画の展覧会が開催されます。本に出てくる画家の作品も出展されるので、『日本画とは何だったのか』を手に近代日本画の展覧会めぐりをしてみてはいかがでしょうか。
それでは今年どのような展覧会が開催されるのか、本の構成に沿って、年代ごとに紹介していきたいと思います。
1 明治前期
近代日本画黎明期のスーパースターは、何と言っても狩野芳崖と橋本雅邦。
泉屋博古館分館 特別展「狩野芳崖と四天王-近代日本画、もう一つの水脈」
9月15日(土)~10月28日(日)
インパクトのある狩野芳崖《仁王捉鬼図》(東京国立近代美術館)が展示されます。菱田春草の名作《落葉》(福井県立美術館)も楽しみです。
美術館HP https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/
(企画展スケジュールにこの展覧会の概要が掲載されています。)
静嘉堂文庫美術館「-明治150年記念- 明治からの贈り物」
7月16日(月・祝)~9月2日(日)
同館所蔵の橋本雅邦《龍虎図屏風》(重要文化財)が展示されます。この迫力ある虎も出展当時は「腰抜け」と酷評されたそうです。
美術館HP http://www.seikado.or.jp/
(この展覧会の概要はまだ美術館HPには出ていないので、ときどきチェックしてみてください。)
2 明治後期
この時期、岡倉天心のもとで近代日本画の新しい境地を開いたのが横山大観、菱田春草、下村観山、木村武山。
東京国立近代美術館 「生誕150年 横山大観展」
4月13日(金)~5月27日(日)
御大・横山大観登場です。
4月21日(土)14:00~15:30 古田亮さんの講演会が開催されます。
イベント等の詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/yokoyama-taikan/
茨城県天心記念五浦美術館 企画展「秘蔵の木村武山展」
2月9日(金)~4月22日(日)
大観、春草らの朦朧体作品は売れず、日本美術院の経営が困難になり東京・谷中から移転した先が北茨城の五浦(いづら)。この地に建つのが茨城県天心記念五浦美術館です。常設展示室では横山大観、菱田春草、下村観山の作品も見ることができます。展示替えがあるので詳しくは美術館HPの年間スケジュール欄をご覧ください。
美術館HP http://www.tenshin.museum.ibk.ed.jp/
泉屋博古館分館 生誕140年記念特別展「木島櫻谷」
PartⅠ 近代動物画の冒険 2月24日(土)~4月8日(日)
PartⅡ 「四季連作屏風」+近代花鳥図屏風尽し 4月14日(土)~5月6日(日)
第1回文展で《しぐれ》が日本画部門で最高賞を取り、一躍文展の寵児となりましたが、晩年は京都郊外の自宅にこもり、一時は「忘れられた画家」となった木島櫻谷の展覧会です。
美術館HP https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/
展覧会の様子は私のブログで紹介したので、こちらをご参照ください。
http://deutschland-ostundwest.blogspot.jp/2018/03/140.html
3 大正・昭和初期
この時期は近代日本画の全盛期と言える盛況ぶりです。百花繚乱、多士済々といった感があります。
講談社野間記念館「近代日本画壇の精鋭たち」展
3月10日(土)~5月20日(日)
大正から昭和初期にかけて形成された野間コレクションの中から、横山大観、竹内栖鳳、川合玉堂をはじめとした精鋭たちの作品が展示されます。
美術館HP http://www.nomamuseum.kodansha.co.jp/
大正期には俵屋宗達が再評価されました。
詳しくは古田亮さんの著書『俵屋宗達』(平凡社新書 2010年)をご参照ください。
山種美術館 特別展「琳派 -俵屋宗達から田中一光へ-」
5月12日(土)~7月8日(日)
宗達とその継承者の作品を見るならこの展覧会です。
美術館HP http://www.yamatane-museum.jp/
東京藝術大学大学美術館「東西美人画の名作《序の舞》への系譜」
3月31日(土)~5月6日(日)
近代日本画の一ジャンルを形成した「美人画」。近代美人画の最高傑作、上村松園《序の舞》を見るならこの展覧会。修理後初めての一般公開なので楽しみです。
展覧会公式サイト
https://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2017/bijinga/bijinga_ja.htm
4 戦中・戦後期
戦争の影が忍び寄る中、美術界も挙国一致体制の中に組み込まれていきます。そして、明治、大正、昭和と時代をリードしてきた横山大観が昭和33年に亡くなり、近代日本画は終焉を迎えます。
(巻末の「近代日本画史年表」も昭和33年で終わっています。)
山種美術館 企画展 日本美術院設立120年記念「日本画の挑戦者たち-大観・春草・古径・御舟-(仮称)」
9月15日(土)~11月11日(日)
日本美術院(院展)設立120年目の今年(2018年)を記念して開催される展覧会です。横山大観、菱田春草、小林古径、速水御舟の作品を中心に近代日本画の歩みをたどってみたいと思います。
美術館HP http://www.yamatane-museum.jp/
関東圏で開催される主な美術展をピックアップしてみました。とてもすべては紹介しきれませんでしたが、他にも気になる美術展を見つけたら、その都度このコラムで紹介していきたいと思います。
今年は西洋絵画の当たり年ですが、近代日本画も充実した年になりそうです。
『日本画とは何だったのか-近代日本画史論』をガイドに美術館めぐりをしてみてはいかがでしょうか。
※展覧会の内容は変更になることがあります。展覧会にお越しの際は、事前に美術館の公式サイトをご確認ください。
追記:古田亮さんの新刊が出ました!
『横山大観』(中公新書)です。カラー版なので図版も多くてきれいです。
さて、さっそくですが、みなさんは近代日本画と聞いてどんな作品、どんな作家を思い浮べますでしょうか。
横山大観でしょうか。それとも美人画の上村松園でしょうか。答えは人それぞれでしょうが、こんな問いかけから始まる美術書が今年1月に出版されました。
タイトルは『日本画とは何だったのか-近代日本画史論』(角川選書 平成30年1月)。著者は、近代日本美術史が専門の東京藝術大学大学美術館准教授の古田亮さん。
図版が90点以上もあって、とても丁寧な解説なので、明治維新以後の日本の近代化、大正デモクラシー、関東大震災と復興、戦前・戦中の挙国一致体制、そして戦後、と時代ともに歩んできた近代日本画とは何だったのか、楽しみながら読み進めることができます。
近代日本画ファンにおススメの本です。
そしてもう一つこの本の楽しみ方があります。
今年は明治150年、そして明治元年に生まれた横山大観の生誕150年ということもあって、「横山大観展」をはじめ、多くの近代日本画の展覧会が開催されます。本に出てくる画家の作品も出展されるので、『日本画とは何だったのか』を手に近代日本画の展覧会めぐりをしてみてはいかがでしょうか。
それでは今年どのような展覧会が開催されるのか、本の構成に沿って、年代ごとに紹介していきたいと思います。
1 明治前期
近代日本画黎明期のスーパースターは、何と言っても狩野芳崖と橋本雅邦。
泉屋博古館分館 特別展「狩野芳崖と四天王-近代日本画、もう一つの水脈」
9月15日(土)~10月28日(日)
インパクトのある狩野芳崖《仁王捉鬼図》(東京国立近代美術館)が展示されます。菱田春草の名作《落葉》(福井県立美術館)も楽しみです。
美術館HP https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/
(企画展スケジュールにこの展覧会の概要が掲載されています。)
静嘉堂文庫美術館「-明治150年記念- 明治からの贈り物」
7月16日(月・祝)~9月2日(日)
同館所蔵の橋本雅邦《龍虎図屏風》(重要文化財)が展示されます。この迫力ある虎も出展当時は「腰抜け」と酷評されたそうです。
美術館HP http://www.seikado.or.jp/
2 明治後期
この時期、岡倉天心のもとで近代日本画の新しい境地を開いたのが横山大観、菱田春草、下村観山、木村武山。
東京国立近代美術館 「生誕150年 横山大観展」
4月13日(金)~5月27日(日)
御大・横山大観登場です。
4月21日(土)14:00~15:30 古田亮さんの講演会が開催されます。
イベント等の詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/yokoyama-taikan/
茨城県天心記念五浦美術館 企画展「秘蔵の木村武山展」
2月9日(金)~4月22日(日)
大観、春草らの朦朧体作品は売れず、日本美術院の経営が困難になり東京・谷中から移転した先が北茨城の五浦(いづら)。この地に建つのが茨城県天心記念五浦美術館です。常設展示室では横山大観、菱田春草、下村観山の作品も見ることができます。展示替えがあるので詳しくは美術館HPの年間スケジュール欄をご覧ください。
美術館HP http://www.tenshin.museum.ibk.ed.jp/
泉屋博古館分館 生誕140年記念特別展「木島櫻谷」
PartⅠ 近代動物画の冒険 2月24日(土)~4月8日(日)
PartⅡ 「四季連作屏風」+近代花鳥図屏風尽し 4月14日(土)~5月6日(日)
第1回文展で《しぐれ》が日本画部門で最高賞を取り、一躍文展の寵児となりましたが、晩年は京都郊外の自宅にこもり、一時は「忘れられた画家」となった木島櫻谷の展覧会です。
美術館HP https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/
展覧会の様子は私のブログで紹介したので、こちらをご参照ください。
http://deutschland-ostundwest.blogspot.jp/2018/03/140.html
3 大正・昭和初期
この時期は近代日本画の全盛期と言える盛況ぶりです。百花繚乱、多士済々といった感があります。
講談社野間記念館「近代日本画壇の精鋭たち」展
3月10日(土)~5月20日(日)
大正から昭和初期にかけて形成された野間コレクションの中から、横山大観、竹内栖鳳、川合玉堂をはじめとした精鋭たちの作品が展示されます。
美術館HP http://www.nomamuseum.kodansha.co.jp/
大正期には俵屋宗達が再評価されました。
詳しくは古田亮さんの著書『俵屋宗達』(平凡社新書 2010年)をご参照ください。
山種美術館 特別展「琳派 -俵屋宗達から田中一光へ-」
5月12日(土)~7月8日(日)
宗達とその継承者の作品を見るならこの展覧会です。
美術館HP http://www.yamatane-museum.jp/
東京藝術大学大学美術館「東西美人画の名作《序の舞》への系譜」
3月31日(土)~5月6日(日)
近代日本画の一ジャンルを形成した「美人画」。近代美人画の最高傑作、上村松園《序の舞》を見るならこの展覧会。修理後初めての一般公開なので楽しみです。
展覧会公式サイト
https://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2017/bijinga/bijinga_ja.htm
4 戦中・戦後期
戦争の影が忍び寄る中、美術界も挙国一致体制の中に組み込まれていきます。そして、明治、大正、昭和と時代をリードしてきた横山大観が昭和33年に亡くなり、近代日本画は終焉を迎えます。
(巻末の「近代日本画史年表」も昭和33年で終わっています。)
山種美術館 企画展 日本美術院設立120年記念「日本画の挑戦者たち-大観・春草・古径・御舟-(仮称)」
9月15日(土)~11月11日(日)
日本美術院(院展)設立120年目の今年(2018年)を記念して開催される展覧会です。横山大観、菱田春草、小林古径、速水御舟の作品を中心に近代日本画の歩みをたどってみたいと思います。
美術館HP http://www.yamatane-museum.jp/
関東圏で開催される主な美術展をピックアップしてみました。とてもすべては紹介しきれませんでしたが、他にも気になる美術展を見つけたら、その都度このコラムで紹介していきたいと思います。
今年は西洋絵画の当たり年ですが、近代日本画も充実した年になりそうです。
『日本画とは何だったのか-近代日本画史論』をガイドに美術館めぐりをしてみてはいかがでしょうか。
※展覧会の内容は変更になることがあります。展覧会にお越しの際は、事前に美術館の公式サイトをご確認ください。
追記:古田亮さんの新刊が出ました!
『横山大観』(中公新書)です。カラー版なので図版も多くてきれいです。