浴室がミニ四駆のサーキットに!? 銭湯でレースする「風呂四駆」がアツい!

2018/2/5 16:40 吉村智樹 吉村智樹

▲あるミニ四駆大会のレーシングコース。ここ、どう見ても銭湯なのだが……


こんにちは。
関西ローカル番組を手がける放送作家の吉村智樹です。


この連載では、僕が住む関西の耳寄りな情報をお伝えしてゆきます。
今回はその第12回目となります。





■銭湯がミニ四駆のサーキットに変身!


いま「ミニ四駆」(ミニよんく)がキているそうです。


「ミニ四駆」とは、模型・プラモデルメーカー「タミヤ」が発売している、小型モーターを搭載した四輪駆動の自動車模型のこと。


80年代~90年代にかけ「ダッシュ!四駆郎」「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」などミニ四駆をテーマとした少年漫画が大ヒットするなど、子どもたちの間でたいへんな人気を博しました。


ちびっこを中心に80年代に第一次ブーム、90年代に第二次ブームを巻き起こしたこの「ミニ四駆」が、この頃なんと、みたびアツい盛りあがりを見せているとのこと
しかも第三次ブームといえる現今の白熱ぶりは、これまでと異なり、オトナたちのあいだから火がついたものだそうです


ミニ四駆に到来した第三次ブーム。
関西も例外ではありません。
特に京都は、他都市にはない独自のシーンを築いているとの噂が。


たとえば、そのひとつが「風呂四駆」
風呂四駆とは、文字通り、銭湯で開催されるミニ四駆カップのこと。





銭湯で戦闘?!
熱湯ならぬ熱闘?!
風呂四駆とはいったいどんなものなのでしょう。
僕は2017年12月29日(金)に開催された謎の大会、第二回「風呂四駆」の観戦に訪れました。


■老舗の銭湯にミニ四駆レーサーが集結!


訪れた街は「西院」
最寄駅がふたつあり、漢字表記は同じなのに阪急電鉄が「さいいん」、京福電鉄が「さい」
さらにかつては「さいん」と読ませたことからもわかるような、多彩な魅力を感じさせる街です。


レーシングサーキットを特設された場所は、大正14年創業という永い歴史をいだく銭湯「旭湯」



▲京都西院で唯一という銭湯で、日本で唯一の銭湯内ミニ四駆GPがひらかれる


フラッグならぬ、のれんをくぐると、おお! すごい人だかり!
老若男女が一堂に会し、脱衣場はこの日、メカドックに
大人も子どもも愛車のチューンナップに余念がありません。



▲銭湯の洗い場にズラリ集結したミニ4WD



▲洗面所に掲げられたクラブフラッグ



▲脱衣場はこの日、参加選手たちのメカドックに



▲子どもだけではなく大人もゴキゲン



▲夕方まで「子どもの部」が開催され、大盛りあがり


集うのはご近所の方だけではありません。
なかには「たまたまSNSで告知を見て知った」という遠方からの参戦者の姿も。


■コースアウトすればお風呂へドボン!


そして浴室にしつらえられた競技コースレイアウトの複雑さたるや!
洗面器をトンネルに見立てるなど銭湯ならではのバンクを描いています。



▲白熱する会場(浴室)



▲洗面器のトンネル



▲コースの高さも洗面器で調整



▲シャワーの水がコースにしたたらないよう、樋(とい)を渡す



▲脱衣かごでコースの高さを調整。銭湯ならではの富士山がレース気分を盛りあげる



▲洗い場のあいだをかいくぐるレイアウト


極めつけはお湯が張られた浴槽ぎりぎりのカーブ
失敗すれば車体がぼちゃーんと入浴してしまいます。




▲コースアウトするとお湯にどぼーんと浸かってしまう「風呂四駆」ならではな魔のカーブ


このように銭湯でひらかれた大会でなければありえない仕掛けが随所に活かされているのです。


■勝負に大人も子どもも関係なし


夕方までは「子供の部」のレースが行われていましたが、陽が暮れてからはじまったトーナメント戦は無差別級
年齢やキャリアを問わない、手加減も湯加減もない混浴戦へと突入です。



▲優勝はトーナメントで決まる。大人も子どもの関係ない



▲スマホに映し出されたスタートシグナルで各車スタート






スタートシグナルとともに各車一斉にスタート。
パッションの飛沫を浴び、応援の声や嬌声、ときには悲鳴が浴室にこだまし、湯気がたちこめるほどの熱戦が繰り広げられました。






大人も子どももデッドヒートを繰り広げます。
いやいや風呂四駆、めっちゃエキサイティング!


■きっかけは「レゲエ居酒屋」だった


過去2回ひらかれたこの「風呂四駆」を主催しているのが、ミニ四駆チーム「西院組」(さいいんぐみ)のメンバー吉田隆さん(40歳)。
普段は屋外広告の企画・製作・施工をしておられます。



▲「風呂四駆」のリーダーシップをとる吉田隆さん


そんな吉田さんに、なぜミニ四駆の大会が銭湯で開催されることになったのかをお訊きしました。


――吉田さんはミニ四駆をはじめられてどれくらい経ちますか?


吉田
「僕は“復帰組”なんです」


――復帰組? なんですかそれは。


吉田
「子どもの頃にミニ四駆で遊んでた人が、大人になってもう一度やりはじめるのが“復帰組”です。僕もそのひとりで、復帰後のキャリアは2年くらい。復帰組のなかには、自分に息子や娘ができて、コミュニケーションツールとして再びミニ四駆をはじめる人もいるんです。ミニ四駆の第三次ブームは、この復帰組がもたらしたものだといわれています」


――なるほど! かつてミニ四駆に親しんだ子どもたちが親になり、こんどは自分の子に教えるようになったわけですね。だから親子連れが多かったのか。では吉田さんが参加されているミニ四駆チーム「西院組」が結成されたいきさつを教えてください。


吉田
「きっかけは西院に『ジャミン』というレゲエ居酒屋がありまして、そこがスタートです


――レゲエ居酒屋がスタート? これはまた意外な。


吉田
「普段はレゲエが好きな人たちが集まるお店なんですが、次第に『レゲエもやけどミニ四駆も好きやねん』『お前も? 実は俺もや』という声があがりはじめ、店内にコースを敷いた『ジャミンカップ』という大会へと発展していきました。僕はポスターを制作したり、現場のお手伝いをしたりしていました。そしてこのジャミンカップが、大人も子どもも集まって、すごく盛りあがったんです。その後、『*西院ミュージックフェスのなかでもミニ四駆やらへんか?』という提案があって、やらせてもらったのがはじまり。そのとき一緒にやったジャミンカップで知りあった仲間たちとで『西院組』を結成しました。ミニ四駆のチームは全国的に『○○組』と名づけることが多いんです」



▲同じ西院にあるレゲエ居酒屋「ジャミン」にはレゲエのみならずミニ四駆好きたちが集まっていた



▲レゲエ居酒屋「ジャミン」の店内で開催された「ジャミンカップ」


*西院ミュージックフェス……毎年、京都市右京区西院の全域で2002年から毎年2日間に渡って開催されるサーキットフェスのこと。「西院春日神社」の境内をメインに、街の多くの店舗がこの日はライブ会場となる。飲み屋やカフェ以外にも、電車の車庫(嵐電嵐山本線 西院車庫内)、幼稚園、銭湯までもが演奏会場となり、街全体がこの日は音楽に包まれる。吉田隆さんはこの地元音楽祭の実行委員でもある。


■銭湯の三代目が「うちでもやりませんか?」


――ではそんな西院組で「風呂四駆」を開催することになった理由は?


吉田
「発端は2017年の春に新しい試みとして『春の西院フェス』を開催したことにあります。そのなかで西院春日神社でイベントとしてミニ四駆大会を開きました。それを旭湯の大将が観に来てくれはって『なんやこれ? ミニ四駆? おもろいな!』って言うてくれて。そして『旭湯は金曜日が定休日やから、休みの日を利用してうちの店でも大会やらへんか?』と提案してくださったんです。さすがにはじめは『銭湯でミニ四駆大会って、冗談かな?』と思ったけど、大将の目がけっこうマジで、僕もそれならぜひやりたいと思って企画を進め、第一回大会を(2017年の)11月に開催しました」


――おお! 旭湯さんからのスカウトだったのですか。



▲きっかけは「春の西院フェス」で開かれた屋外のミニ四駆コーナーだった


ではここで、ミニ四駆大会を旭湯に誘致(?)した三代目のご主人、林勝明さん(56歳)にもご登場を願いましょう。



▲「風呂四駆」のために会場を提供した旭湯の三代目・林勝明さん。ご自身もトーナメントに参加


――ご主人はなぜご自身が営む旭湯でミニ四駆大会を開こうと考えられたのですか?



「僕は小さい頃からラジコンが好きで、銭湯を継ぐ前は自動車修理工もしていたので、もともと車は好きやったんです。そして春日神社で開かれたミニ四駆の大会を観て、幼い頃にラジコンで遊んだ楽しさが久々によみがえってきましてね。そしてなによりミニ四駆をやってる人の数にびっくりしてね。『いま、こんなにおるんや!』って。世代を問わず遊べるものがあるってええなと思ったし、みんなが仲よくなれるという点で『銭湯に似てる』と思ったんです。それで『ぜひ、うちで』とお誘いしました」



▲意気投合した吉田さんと林さん


――確かに親子や家族どうしで楽しめる現在のミニ四駆ブームは、社交場としての銭湯と親和性が高いように感じました。ところで林さんご自身はミニ四駆はされているのですか?



「はじめたばかり。一回目の風呂四駆の2か月前、55歳デビューです。やってみた感想? 難しいね~。小学生のレベルにもぜんぜんついていけてないのが現状です。でも楽しい。自分の組み立て方次第で結果が変わるんやから、みんながハマるのもよくわかる。そんで負けたら悔しいから、自分の部屋に簡易的な小さいコースを敷いて、布団の横でひとりで練習やってるんですよ


――布団の横にコースを敷いて自主トレですか! えらハマりですね。では再び吉田さん、今日はレースを観戦させていただいて、改めてミニ四駆の盛りあがりを実感しました。この活況は予想しておられましたか?


吉田
「一回目をやる前は、正直『そんなにお客さんは来ないだろう』と思っていたんです。子どもたちに遊ぶ場所を提供するのが僕らの目的だったし、子どもが楽しいと思ってくれたらそれでよかった。まさかあんなに盛況になって、ほかの街や他府県からもお越しになるとは考えてもみなかった。大きなミニ四駆の大会で上位に輝くすごい選手も遊びに来てくれたんです。そして終了後『想像していたよりコースが単調だった』というお声をいただいたので、ならば! と2回目となる今回はコースを買い足し、がんばって難易度をアップさせました」



▲設営する吉田さん。前回からさらに難易度をあげるためさまざまな工夫が凝らされた第二回大会




▲スタッフがそれぞれ自前のコースを持ち寄り、さらに複雑なレイアウトを可能にした


■普通のミニ四駆ファンから見たら「ありえない」コース


――2回目は難易度があがっていたのですね。浴槽の上を駆けめぐるカーブをはじめ、銭湯の設備を活かしたコースづくりに感服しました。


吉田
「普通のミニ四駆ファンから見るとありえない、無理のあるコースの敷き方をしています。そして参加者にははじめに『水没も覚悟してくださいね』と言っています。実際に今日もコースアウトで何台か浴槽に飛び込みました。そういうアクシデントも楽しんでほしい。変なコースを走るのがおもしろいと思ってもらえたらいいですね。精密なコースを望んでいる方は、整備点検が行き届いたコースがある専門店へ行かれたほうがきっと楽しいでしょう」



▲ラフなつなぎ方も風呂四駆の醍醐味



▲後方の赤いマシンがコースアウト。その後、浴槽へとダイブした


――おっしゃるとおり、風呂四駆には普通のコースにはない非日常な楽しさがありますよね。そしてこういう創意工夫って京都らしいなと思うのですが。


吉田
「大阪へ行けば立派なコースを持つ常設のサーキット場がいくつもあります。いつでもレースが楽しめる。方や京都には、そういう施設がほんまないんです。だから自分たちで新しい場所をつくっていくしかないんですよね


――ないことに不服に言うのではなく、「ないから自分たちでつくる」って素晴らしいことですね。各種パーツを組み合わせてオリジナルなマシンをつくるミニ四駆の精神に通じるものを感じました。さて、気になる次回は?


吉田
「未定ですが、旭湯の大将とは『定期的にやっていこう』と言いあっています。4月14日から今年も春の西院フェスが開催される予定なので、やるとすればそのあとかな。あと3月3日(土)に“ひな四駆”をやるんです」


――ひな四駆? それはまさか、ひな祭りに四駆大会をやるということですか?


吉田
「右京ふれあい文化会館というところでひらかれる『水と学びのマルシェ』でおこないます。ミニ四駆には自由にカラーリングやモデリングする“コンデレ”というジャンルがあります。コースももちろんおきますが、せっかくのひな祭りなので“コンデレミニ四駆ひな壇”をつくったら面白いかなと」


――コンデレミニ四駆ひな壇! 想像できないけれど、なんだかすごそう。それは興味津々です!


こうして京都の西院で沸き起こった激アツなミニ四駆シーン。
新しいムーブメントを起こそうとする大人たちと、そこに共鳴するミニ四駆次世代の少年少女たちの姿。
ともに1日を過ごし、なんだかひとっ風呂浴びたように爽快な気持ちになりました。



▲準優勝はなんと11歳の女の子、コトネさん。ミニ四駆をはじめたきっかけは「お父さんに教えてもらって」とのこと。キャリアは2年半。結果、お父さんを打ち負かしての堂々の入賞



▲優勝は「たまたまTwitterで知って、やってきた」という初参加のオサダさん(45歳)


「風呂四駆」の今後はSNSなどで要チェック。
開催が決まればあなたもレッツ&ゴー!!



西院「旭湯」
https://twitter.com/hozugangster



(吉村智樹)
https://twitter.com/tomokiy