二足歩行する金魚…特別展「江戸の戯画」が開催決定!
「戯画」(ぎが)という言葉をご存知でしょうか。「ウルトラギガモンスター」や「ギガ減る」のギガとは意味が違います。
最近なにかと話題の『広辞苑』で「戯画」を調べてみると、「たわむれに描いた絵。こっけいな絵。また、風刺的な絵。ざれ絵。カリカチュア。」と説明されています。
平安から鎌倉時代に描かれた日本最古の漫画とよばれ、展覧会に出れば長蛇の列を作る人気の高い国宝「鳥獣人物戯画」が最も名の知れた戯画となるでしょう。
葛飾北斎「謎かけ戯画集 鰻」 ベルギー王立美術歴史博物館蔵(通期展示)
さて、その戯画が最も多く描かれたのが江戸時代の浮世絵です。浮世絵は美人画や相撲絵、役者絵ばかりでなくバラエティーに富んだ戯画もたくさん描かれ庶民から人気を博したのです。
あまり現代のものに当てはめて捉えるのはどうかと思いますが、美人画。役者絵などが雑誌のグラビアだとすると、戯画はずばり漫画にあたります。
耳鳥斎「地獄図巻」 大阪歴史博物館蔵(通期展示 ※巻替え)
漫画にもギャグ漫画からシリアスで風刺的なものまで幅広くあるように、江戸時代の戯画にも滑稽で可愛らしいものから、幕府の政策を批判するものなど当時の世相を映す鏡のような存在のものまでダイバーシティを持つ作品がずらり肩を並べています。
そんな浮世絵の戯画で最もメジャーな存在なのが、歌川国芳(うたがわ くによし、寛政9年11月15日(1798年1月1日 ) - 文久元年3月5日(1861年4月14日))です。多分皆さんが頭に思い浮かべた戯画のほとんどは国芳作品ではないでしょうか。
歌川国芳「人かたまつて人になる」 弘化4年(1847年)頃。「人おほき人の中にも人ぞなき 人になれ人 人になせ人 (人多き人の中にも人ぞ無き 人に成れ人 人に為せ人)」
「猫の当字 なまづ」、「其のまま地口 猫飼好五十三疋」、「荷宝蔵壁のむだ書」、「人かたまつて人になる」、「猫のけいこ」これらメジャーな戯画は歌川国芳のWikipediaで画像が見られます。知っている作品ばかりですよね!
国芳戯画の中でもとりわけ人気が高くポスト「鳥獣戯画人物戯画」とされるシリーズがあります。それが金魚を擬人化し可愛らしくあらわした「金魚づくし」です。
歌川国芳「金魚づくし いかだのり」 個人蔵(通期展示)
「金魚づくし」は8点が確認されていましたが、数年前に9点目「きん魚づくし ぼんぼん」が何とイタリアで発見され話題となりました。人気シリーズの新発見というだけでなく9点目ということで尚更注目を集めたのです。
なぜなら「金魚シリーズ」は、2図が1枚の大判の版木で作られた中判だったからです。つまり偶数であるはずのシリーズものが9点目の発見により奇数となってしまいました。
歌川国芳「きん魚づくし ぼんぼん」 個人蔵(通期展示)
これは、10点目も制作されていた可能性が生まれたことになります。幻の金魚はどこにあるのでしょう。海外の美術館・博物館の所蔵庫に眠っているかもしれません。
最後に朗報です。9点の「金魚づくし」が勢ぞろいする展覧会「江戸の戯画-鳥羽絵から北斎・国芳・暁斎まで」が大阪市立美術館で開催されます。9点揃っての展示は日本のみならず世界でも初めての試みです。
歌川国芳「きんぎよ尽 まとい」 ベルギー王立美術歴史博物館蔵
ただし9点揃って観られるのは前期(4/17~5/13)のみです。一か月足らずしかありませんが、これは大阪まで足を運ぶだけの価値は十分にあります。世界初の「金魚づくし」揃い踏み、この貴重な機会を見逃す手はありません!
また、この展覧会では行方知らずの10点目の「金魚づくし」がどんな作品だったかを知る手掛かりとなる個人蔵の浮世絵も展示されます。
今年の春は、江戸ではなく上方で、気の張らない国芳の金魚に自分を投影し、ほんわか気分を味わいましょう。
「江戸の戯画-鳥羽絵から北斎・国芳・暁斎まで」
会期:平成30年4月17日(火)~6月10日(日)
【前期】4月17日(火)~5月13日(日)
【後期】5月15日(火)~6月10日(日)
※会期中展示替えあり。
時間:午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(ただし、4月30日(月)は開館)。5月1日(火)も開館。
主催:大阪市立美術館、毎日新聞社、MBS
後援:ベルギー大使館
協賛:大和ハウス工業