“億”単位?の新作14作品がごっそり入れ替わる「ホキ美術館」のココがすごい!

2017/11/21 11:00 Tak(タケ) Tak(タケ)


千葉県にあるホキ美術館ってご存じですか。



7年前の2010年11月に千葉県最大の公園である昭和の森の横に、世界初の写実絵画専門の美術館としてオープンしました。

写実絵画とは、対象を隅々まで超リアルに描いたいわゆるスーパーリアリズム絵画と捉えられがちですが、写真のように描いたそれとは違い、単なる再現や模倣でなく、対象の奥にある「何か」を描き出す作品です。

一見すると、どれもリアルに(それこそ写真のように)描いているだけに思えてしまいますが、作家や作品によりその目指すところが違うため、まとめて観るとその差異は明らかです。

写実絵画とは何か? ホキ美術館名作55選で読み解く



ホキ美術館は、保木将夫氏のコレクション(巨匠から若手まで約50作家450点の写実絵画)を所蔵し、現在でも作品を増やし続けています。

9つある展示室の中で、「ギャラリー8」と呼ばれる部屋では、現在活躍中の写実画家14名に、「私の代表作展」としてここだけのために100号サイズの新作を描いてもらい展示しています。



因みに絵画の世界でいう1号サイズはだいたい官製はがきと同じサイズです。その100倍となる100号サイズとなると1メートルは裕に超える大きさ(162x 130cm)となります。

現役バリバリで活躍中の画家さんにそれだけの大作を描いてもらうのに、一体いくらかかるのか下衆な興味も沸いてきてしまいます。しかも14名にですからね。

ホキ美術館を創設したのが、ホギメディカル(医療用不織布製品、滅菌用包装袋及び各種医療用キット製品のトップメーカー)の創設者だからこそ出来る実に贅沢なことなのです。



驚くのはまだまだ。億単位をかけ描いてもらった「私の代表作展」を約3年の周期で展示替えを行っています。つまり新たに100号サイズの作品を制作依頼しているのです。

2017年11月18日にギャラリー8「私の代表作展」が刷新されたということで、さっそくホキ美術館まで観に行ってきました。


塩谷亮「月洗」2017年 『塩谷亮画集

9つの展示室を持つホキ美術館の中でも、ギャラリー8はとは、他とは違うテイストとなっています。まず入ってすぐに気が付くのがその壁の色です。また黒い空間だけでなく1作品につき6メートルのスペースがとってあり、1作品とゆったり向かい合える工夫がとられています。

それだけではありません。ホキ美術館にはレンタルの音声ガイド機を敢えて用意していません。その代わりに巨大な写実絵画のキャプション近くに個々の作品解説が聴けるスイッチが設置してあります。

スイッチを押すと指向性の強いスピーカーから解説が流れます。隣の作品の解説と音が錯綜せずに聴けるように設計されているのです。(勿論無料!何度でも聞けます)



作品の手前に置いてある球体の物体は椅子です。一枚の作品をじっくりと観るため、または疲れた時に一休みするのにとても重宝します。

これらのアイディアはすべて保木将夫氏の考えを具現化したものです。展覧会で音声ガイドを借りても操作が煩わしかったり、ヘッドホンをしながら絵を観るのに抵抗があったとか。自分の美術館を作るならこうしたいと思うこと我々もたまにありますが、それを現実のものと出来るなんて羨ましい限りですね。



同じく11月18日よりギャラリー1にて「理想の風景画」展を開催しています。こちらのギャラリーは地下にあるギャラリー8とは趣きを異にし、明るい光に包まれています。

行ってみると気が付きますが、ギャラリー1は建物の構造上、宙に浮いているのです。また天井にある無数の穴は、2種類の色温度のLED照明です。作家ごとに微妙に照明を変え最良の状態で観ることが出来るよう工夫されています。



そうそう、作品を吊るすワイヤーやピクチャーレールが見当たりませんよね。これも絵画に集中してもらう為に、余計なものを排除したひとつの答えです。では、どうやって絵を壁に掛けているのか?少し裏側を覗いてみると分かります。強力な磁石で張り付けてあるのです!

お友達と行ったら「ねぇ、知ってる?」とホキ美術館ミニ知識としてそっと教えてあげて下さい。因みにキャプションもマグネット式が採用されています。

拙著『カフェのある美術館』でも紹介した、イタリアンレストラン「はなう」は予約してから行かれるのが正解ですよ。




ホキ美術館

所在地:〒267-0067 千葉県千葉市緑区あすみが丘東3-15
開館時間:午前10時~午後5時30分
※ 入館受付は閉館時間の30分前の午後5時まで。
※ 毎週火曜日は休館日。
公式サイト



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松井 文恵 (著),‎ 安田茂美 (著),‎ ホキ美術館 (監修)