日本最高齢!67歳の現役地下アイドル「プリンセスやすこ」さんに会ってきた!

2017/10/30 11:00 吉村智樹 吉村智樹

▲日本最高齢! 67歳の現役アイドル「プリンセスやすこ」さん


こんにちは。
関西ローカル番組を手がける放送作家の吉村智樹です。
今週から、僕が住む関西の耳寄りな情報をお伝えしてゆきます。
今回はその第2回目となります。





■御年67歳!シルバー世代のアイドル登場!


「プリンセスやすこ」という名のアイドルをご存知ですか?





デビューして7年目、今年67歳
間違いなく日本最高齢の現役アイドルです。
この頃は全国ネットのテレビ番組にもしばしば採りあげられるようになり、知名度はぐんぐん上昇。
特に、交通安全の大切さを歌った『遠心力を制御せよ』はアイドルファンのみならずカルト歌謡の好事家たちからも注目されています。


プリンセスやすこさんが活躍しているのは、いわゆる「地下アイドル」と呼ばれるシーン。
ライブハウスをメインに活動し、ステージは月に、およそ7回と精力的。自ら作詞を手掛けるシングルは年に3、4枚をリリースし、トータル20作品以上を数えます。2018年の春にはサードアルバムを発売予定。



▲膨大な数のシングルをリリース


追っかけもつき、共演したアイドルたちからは「憧れのプリンセスやすこさんとご一緒できました!」と、自分の母親より年上の彼女との2ショットを嬉々としてSNSにアップしています。


そんなふうに、今日もライブハウスでひたむきに歌い続けるプリンセスやすこさん。
しかし……日本最高齢という個性が独特きわまりないことから、テレビではキワモノとして採りあげられることが多いのです


本当は、どんな人なの?
プリンセスの素顔をさぐるべく、僕は彼女に会いに行ってきました。


■うわさの姫アイドルの正体は写真家だった


シルバーアイドル「プリンセスやすこ」さんの拠点があるのは、大阪の郊外、寝屋川市。
「プリンセス・マーガレット」と書かれた建物がそれ。



▲一見スナックのような外観……。その実態は?


実はここはフォトスタジオ。プリンセスやすここと太田安子さんのもうひとつの仕事はフォトグラファー「お年寄りをお姫様のように撮ってあげたい」という想いから、ビジュアルアーツ専門学校に通って撮影技術を学び、壮年女性専門の写真スタジオを開いたのです(夫婦の撮影は可)。



▲出迎えてくださった「プリンセスやすこ」こと太田安子さん



▲プリンセスやすこさんは普段は壮年女性をメインに撮影するフォトグラファーでもある


プリンセスやすこ
小学校の頃からお姫様が大好き。リボンの騎士を読んだり、お姫様ごっこをしたり。あと、カメラが好きだったなあ。小学生の頃から写真の引き伸ばし機を買って、家で自分で焼いたりしていたの」


そんなうわさの姫やすこさんに、ご自身のスタジオでポーズを撮らせていただきました。










華やかなドレス、魔女っ娘が持つようなバトンなど、70年代のTHEアイドル! という感じでステキです。衣装はどれくらいお持ちなのですか?


プリンセスやすこ
100着はあるでしょうか。5月はピンクやパステル、9月は紫、冬は暖かい赤、ハロウィンだったら真っ赤なハートとか、季節やその日に歌う曲に合わせて着分けています。7年やっていると、かなりの量になりますね」


このように、プリンセスやすこさんのステージは、とてもファッショナブルで、多幸感に溢れています。
歌詞の度忘れがちょいちょいあるのはご愛敬。


プリンセスやすこ
「ライブは……歌詞が飛ばなかったら楽しいです(苦笑)。でも、へたなりにいいメッセージを発信しているつもり。コール&レスポンスでお客さんと一体になれる瞬間は最高にハッピーな気分になりますね」



▲ライブハウスでひときわ映えるプリンセスっぷり



▲ときにはワイルドに攻めることも


■ひょんなことからアイドルに


そんなふうに姫キュンなライブを届け続けているプリンセスやすこさん。しかしながら、もともとはアイドル志向ではなかったのだとか。


プリンセスやすこ
「60歳を過ぎて『歌でみんなにハッピーになってもらいたい』『ただの趣味ではなく、ポップスを仕事にしたい』と思い歌手活動をはじめました。でも、はじめは歌える場所が見つかりませんでした。カラオケ大会にお金を払って出演したり。そうするうちにアイドルのブッキングに長けた方と知り合いになって、地下アイドルたちがたくさん出るライブハウスのイベントで歌うようになりました。次第に若い女子たちから元気がもらえるようになり、お互いにエールを送って友情も芽生えるようにもなっていったんです。自分がアイドルとして活動していると自覚しだしたのは3年くらい前からかしら


プリンセスやすこさんは自分から志願してアイドルになったわけではなく、自然な流れのなかでそうなっていったようです。これぞ天性のアイドル。「プリンセスやすこ」という芸名も自分でつけたものではなく、ライブ映像をYouTubeにアップした人がタイトルにそう記述したのがきっかけ。以来それがニックネームとなり、さらに正式呼称となりました(ゆえにセカンドアルバム以降にプリンセスやすこ名義に)。


■ひどい中傷を受けることも


とはいえ、最近でこそアイドルのイベントにプリンセスやすこさんが出演していても奇異には感じなくなりましたが、当初は風当たりも強かったのでは。


プリンセスやすこ
「いえいえ、いまだにキツいことを言われますよ。Twitterに『60歳を過ぎて地下アイドルなんかやらなくても、もうすぐ地下に埋められるのに』とかひどいことを書かれちゃう。あと『道楽でやっている』と言われると、うーん……と思っちゃいますね。お金持ちが趣味や遊びで歌っているわけじゃない。誰に借りたわけでもない、定年までこつこつ勤めあげてもらったお金を使って、第二の人生に賭けているんです。だって、あっちの国(天国)にはお金は持っていけないんですもの。前へ一歩踏み出さないと、なにも始まらないと思っているんです。よく『歌なんかより、介護保険、どうするんや? 病気になったらどうするんや?』って言われるんですけれど、そんなことばかり考えて生きる老後はグーじゃない



▲新曲「プリンセスの挑戦」には熱くロックに生きる誓いが歌詞に込められている


そう、実はプリンセスやすこさんの活動資金は定年まで勤めた会社の退職金。CD製作は自腹。それだけではなく「10万円近くかかる」という新曲を出すたびに販促用に作る自立型の等身大パネルのほか、ポスター、フライヤー、PV制作費、通信カラオケ登録費など、すべて自分で支払っています。およそ2000万円あった退職金は、みるみる消えていったのだそう。その話を訊いて正直「製作の過程のどこかで搾取されているんじゃないか?」と心配にもなりました(プリンセスやすこさん曰く『それはない』とのこと)。



▲新曲をリリースするたびにつくっていた立て看板。プリンセスやすこ名義になってからは「さすがにもうあんまりつくっていない」とのこと





■お別れを明るく歌いたい


プリンセスやすこさんは、前述したように、かつては大企業に勤めるOLさんでした。そんな彼女がなぜ定年後に歌手を志すことになったのでしょう。


プリンセスやすこ
「高校を卒業してから三年間は樋屋奇応丸で働いて、そのあと電話交換手の資格を取り、その資格と声が認められて東レに入社しました。音楽が好きになったのはOL時代。当時はバンドをやっていましたね」



▲プリンセスやすこさんのライブは画像を上映しながら行われることが基本。OL時代の社員証をバックに歌うアイドル、初めて観た


プリンセスやすこさんが音楽に魅了されたのはBUZZのヒット曲にして日本のソフトロックの大名曲「ケンとメリー~愛と風のように~」。以来、ゴダイゴ、ユーミン、杏里、高橋真梨子などJポップの先駆者たちがおりなすサウンドに傾倒してゆきます。愛唱歌は大橋純子の「サファリナイト」(67歳って、もうぜんぜん演歌世代じゃないんですよね)。


プリンセスやすこ
「『人前で歌いたい』と思ったのは定年退職の謝恩会。退職の半年前からレッスンに通って挑みました。ただ本番では私のミスで8曲中7曲しか歌えなかったの。それが悔しくて、退職後もレッスンに通ったんです。そこで先生から『あなたにはオーラがある。プロの歌手にならないか?』とスカウトされたんです


謝恩会で歌えなかった心残りな一曲が、アイドルへの道へと導いたのですから人生はなにがあるのかわからない。そして彼女は歌うだけではなく、自ら作詞を手掛けることに。初めて書いたのが、現在も歌い継いでいる「花束をありがとう」。


プリンセスやすこ
「日本には送別会で歌えるポップスがないんです。定番と言えば千昌夫さんの『星影のワルツ』くらい。これまで本当にたくさんの人たちを見送ってきたけれど、ハッピーに歌って送り出せる歌がないんです。苦楽を共にした人たちとの涙ちょちょぎれるような想い出があっても歌に託せない(当時を思いだして涙ぐむ)。そこで『送別会でお別れを明るく歌えるポップスがあってもいいんじゃない?』と思って書いたんです」


「お別れを明るく歌えるポップス」。これは人生経験を積んできた人にしかたどり着けない境地なのかもしれません。


■夢は70歳のバースデーライブ


では最後に、プリンセスやすこさんの将来の夢は?


プリンセスやすこ
70歳の古希には広いホールで盛大にバースデーライブがやりたいですね。できれば大阪城ホールで(笑)。それまでには、なにかをつかみ取りたい。目標はNHKの『みんなのうた』なんです」


17歳の心情を歌ったアイドルソングは数多くあります。
しかし、70歳のそれを聴かせてくれるのは、きっとプリンセスやすこさんしかない。



▲名曲「60歳のシンデレラ」。ポップスの歌詞に「生まれた年の干支がやってきた」というデリシャスな表現を自然に書けるのはプリンセスやすこさんならでは。さぁみんなステェージに駆け寄れ!


70歳になられたその日、まだ誰も見たことがない、現役女子アイドルとしての「70歳の地図」(セブンティース・マップ!)を、みんなに見せてほしいです。


プリンセスやすこ
「そうしたいですね。ただ、お母さんからは『いつまでもアイドルだなんて。もうやめなさい』って怒られるの」


そう言ってプリンセスは照れくさそうに、てへぺろしていました。



プリンセスやすこblog: http://otayasuko.blog.fc2.com/
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(吉村智樹)
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