ソースが白い!生地が伸びる!新感覚たこ焼き屋「みはし屋」がスゴい!

2017/9/25 13:46 吉村智樹 吉村智樹


ソースが白い! 謎のたこ焼き。その秘密は、ある「和」の素材にあった


こんにちは。
関西ローカル番組を手がける放送作家の吉村智樹です。
こちらでは毎週、僕が住む京都から耳寄りな情報をお伝えしており、今回が48回目のお届けとなります。





■生地もソースも「白い」たこ焼きがあった!


陽が落ちると、肌寒さを感じる季節がやってきました。
こういうとき、あつあつのたこ焼きはありがたいものです。


昨今、たこ焼きのバリエーションは、ずいぶんと増えましたね。
むかしは、たこ焼きといえば「ソース」の一択でした。
この頃は、たいていのお店で「ねぎ塩」や「だししょうゆ」など、さまざまなテイストを選べるようになってきました。


今回ご紹介する「みはし屋」さんもまた、たこ焼きの可能性をぐーんと広げる注目店。
トッピングがユニークなだけではなく、生地そのものが革命的なのです


叡山電鉄「元田中」駅を下車し、北へほんのわずか進んだ場所にある、たこ焼き屋さん「みはし屋」



▲たこ焼き「みはし屋」


▲基本メニュー「だししょうゆ」「みはしソース」「塩ごま油」「かけポン」「どろソース」


こちらもいまふうに「だししょうゆ」「みはしソース」「塩ごま油」「かけポン」「どろソース」と、お好みの味をチョイスできます(6個 430円より)。


テイクアウトだけではなく、店内にはカウンター型のイートインスペースがあり、お昼からビールなどちょい呑みも可能です(うれしい!)。



▲カウンター式のイートイン。テイクアウトのみならず、店内でたこ焼きがいただける


■食材を厳選! 「無添加」をつらぬく


オーナーは新木祥浩(あらきよしひろ)さん(32歳)。
店長でありシェフは西村勇(にしむらゆう)さん(33歳)。



▲若きオーナー、新木祥浩(あらきよしひろ)さん



▲店長シェフの西村勇(にしむらゆう)さん


おふたりで意気投合し、2016年の7月、この「みはし屋」を開きました。


ちなみに「みはし」とは宮中や神社などの階段を尊んでいう言葉。
階段をのぼるように高みを目指してゆきたいという想いが店名にこめられています。


まず気になるのは店頭に大きく掲げられた「無添加」の文字。



▲軒先に掲げられた「無添加」の文字


たこ焼きの「無添加」とは?


新木
「食材に膨張剤や増粘剤、化学調味料など添加物を使っていないんです」


そう、この「みはし屋さん」、無添加をつらぬき、さらに食材へのこだわりがとても強いのです。


小麦粉は100%山口県の国産品。
たまごは発酵飼料で育てた淡路島「北坂養鶏場」の平飼い鶏が産んだもの。
塩はポルトガルのヴァージンソルト。
油は京都一乗寺にあるオーガニックスーパー「HELP」のオリジナルなたね油。
ねぎは京都久御山で、無農薬・無化学肥料で育てた九条ネギ。
ごま油も京都の高級ブランド「山田製油」のものを使うなどなど徹頭徹尾、食材を厳選。


さらにトッピングに使う「塩麹」は福井県三方の無農薬米「シマヒカリ」の糀を自家発酵させているという凝りよう!



▲人気メニュー「ネギ塩麹」(3個300円 6個500円)のために、福井県三方の無農薬米「島光(シマヒカリ)」の糀をなんと自家発酵させている。およそ3週間、かき混ぜ続けるのだという。食材を吟味するのみならず手間暇をかける


ここまで徹底しているたこ焼き屋さんは、そうそうないのでは。


西村
西村
「僕は以前、農場をやっていたことがあって、そのとき『食べ物はやっぱり素材が命やな』って思ったんです。だから天かすひとつとっても、妥協したくなかった


新木
「いい食材を揃えるのはたいへんでしたし、正直、原価率も高いです。それでも、長くやっていくなかで、僕らが求めている味がわかってもらえたら」


■「うちのたこ焼きは、しぼみます」


厳しい目で食材を吟味する姿勢、とても素晴らしいことです。
安心できます。


でもでも……膨張剤って、ベーキングパウダーとかですか? ふつうは入っていますよね。それがないとたこ焼きがしぼんじゃいますよね。ふくらんだ状態をキープできないのでは?


新木
「はい。しぼみます


え、しぼむんですか!?


新木
「膨張剤を使っていないし、小麦粉も広島の製粉業者さんが通常より細かく粉砕してくれたものを使っているので、しぼみやすいです。それでいいのか、ですか? たこ焼きって『外側はカリッとしている』のがよいとされています。そうなるためには、ずっとふくらんでいて、ある程度の硬さが必要です。けれども僕らは外側からやわらかくて、やさしい味にしたかった。だから、あえて膨張をうながすものを使ってまで無理にふくらませることはしませんでした」



▲ベーキングパウダーを使わず、水蒸気が立ちのぼる自然の力のみでふくらませる


「みはし屋」のたこ焼きは、このように堂々と「しぼみやすい」とうたっています。
あえて水蒸気が立ち昇ろうとする力でふくらむ自然の摂理にまかせているのだそう。
しぼんじゃいけない、コロコロまん丸が当たり前、外側がカリッとしているのをよしとするたこ焼きのコモンセンスを、いきなりくつがえしているのです


■あえて"こんがり焼かない"「白い」たこ焼き


こんなふうに「みはし屋」がこれまでのたこ焼きの常識にとらわれない部分は、ほかにもいくつもあります。


まず鉄板ではなく「銅板」を使っていること。


新木
「鉄板だと、どうしても焼けすぎて表面が硬くなってしまいます。熱電伝がよくてすぐに火が通る銅板だと、やわらかく仕上がるんです」



▲鉄板ではなく、熱伝導のよい「銅板」を使う


たこ焼きといえば鉄板で焼くのがテッパンで、こんがりカリッときつね色をつけるのが常識でした。
だのに、さっと火を通して表面をやわらかいままにするとは意表を突きます。


そうすると、いったいどうなるのか。


なんと、たこ焼きの表面が、生地の色そのままを保ち、白くなるのです



▲あえて長く焼かず、そのため生地が白い! なかの具が透けて見えるほどに


たこ焼きが白い! 焦げ色がない!
これは驚きで白目をむきそう。


西村
「この『白い』状態が、うまいんです。生地に火が通り過ぎていないので、水分も多く、やわらかい。この色にいたるまで、ずいぶんかかりました。火加減、ひっくり返すタイミング、すべてがうまくいかないとこの色にならない。どうやったら白くなるか? やりこんで身体でおぼえたものなので、口では説明できないですね」


通常よりも微細に挽かれた小麦粉を、熱伝導がいい銅板で短時間で焼く。
その妙技を会得した証しが、この白さ。
求道者だけが到達できる白なのです。


■まるでお餅。生地がびよ~んと伸びる!


驚くべきは、白い色だけではありません。
そうやって素早く焼かれたたこ焼きは、いったいどうなるか。


なんとなんと、生地が伸びるんです!
びよ~んと、まるでお餅のように(もちろん、餅粉やタピオカの粉などは入ってはいません)。



▲これが自慢の「ひゅるひゅる感のあるたこ焼き」。弾力に富み、生地がびよ~んと伸びる


この焼き方だと、こんなにもすごい弾力が生まれるんですね。


西村
「うちのたこ焼きは、ぷるぷる感を超えた “ひゅるひゅる感” を目指しています。口の中に入れたとき、きっとびっくりすると思いますよ」


“ひゅるひゅる感”があるたこ焼きとは未知なる領域。
これは楽しみ。


■たこは凍ったまま使う


生地だけではなく、たこも違うんです。
茹でだこを使わず、冷凍したたこをそのまま切り刻んで銅板へシュート!


西村
「生のマダコを塩で揉んでそのまま冷凍します。そして凍った状態で銅板へ入れます。そうすると熱が入ることで食物繊維が壊れて、たこの身が柔らかくなるんです」



▲生のまま塩もみしたマダコを冷凍し、そのまま銅板へ。急激な温度の変化により食物繊維が裂け、身がやわらかくなるのだ


冷凍状態から急激に温度を変化させることで、たこを柔らかくする?
そんな方法があったとは!
このお店にいると、化学の成績がアップしそうです。


■生地のみならずソースも白い!


先ほどから驚きっぱなしの僕ですが、白いのは生地だけではありません。
なんとソースまで白い!



▲白味噌とマヨネーズを和えた田楽風のオリジナルソース。たちのぼる上品な香りがたまらない


これは「白味噌マヨネーズ」というメニュー(3個300円 6個500円)。
ホワイト&ホワイトという、けがれなき世界。
そして白味噌の香りがもう、うっとりするほど高貴。



▲白味噌マヨネーズに、かの「向井珍味堂」が種まきから収穫までを指導する国産唐辛子を挽いた一味をふりかける。甘みのある白味噌にピリッとしたアクセントが



▲これに、青のりとかつお節をはらりとかけて、完成!



▲「白味噌マヨネーズ」(3個300円 6個500円)。白味噌は銘品「見返り美人」を使用。京都の年始の「ある習慣」をヒントに誕生した。それは……


これはかつて経験がない「和たこ焼き」であり、まさに京風ですね。


新木
「有機栽培大豆、有機栽培米、有機砂糖、沖縄の塩シママースを原料とした広島の白味噌『見返り美人』を使っています。塩加減がうちのマヨネーズとぴったり合ったんです」


西村
「今年の1月に『今月のおすすめ』メニューとして始めました。京都って、お雑煮が白味噌じゃないですか。だから『年の初めにいいんじゃないか』と思って考えたんです。そして実際につくってみたらおいしくって、通常メニューに仲間入りしました」


白味噌をかけるのは、京都のお雑煮から発想されたのですか。
“ひゅるひゅる感”のある伸びやかな生地の口あたりと、澄み渡るよい香りの白味噌があいまって、食べているのに「飲んでいる」かのようなまろやかさ
もうたまりません。これはちょっと官能的ですらありますね……。


■和風や韓流。ぴりりとしたオトナなたこ焼き


和たこ焼きといえば、こちらもおすすめ。
水菜のわさび和えをトッピングした「わさび」(3個300円 6個500円)は、シャキシャキツーンとくる、日本酒と飲りたいオトナな味。



▲水菜のわさび和えをトッピングした「わさび」(3個300円 6個500円)。ネギではなく水菜を使うところが斬新


和のみならず“韓たこ焼き”もひと味違います。
「ぶっかけチゲ」(3個450円 6個680円)は、銘店「京都キムチのほし山」で、予約をしないと入手できない高級無添加キムチをしのばせた、韓流のおだしでいただく珍しいひと品。



▲「ぶっかけチゲ」(3個450円 6個680円)は「京都キムチのほし山」の高級無添加キムチを使用。「たこ焼きってチゲの具にもできるんだ」と驚かされる。とにかくダシがめちゃめちゃおいしい!


辛いだけではなくキムチに使う白菜の甘みが生地に沁みて、改めて他国の料理にもマッチするたこ焼きの万能ぶりに感心させられます。


■「たこ焼きって、こだわり抜けるんです」


どのメニューも、たこ焼き一個一個にこめられたアツい想いが伝わってきて、おいしいだけでなく感動をおぼえますね。


西村
「たこ焼きって、こだわり抜けるんです。素材から焼き方、ソース、1から10までこだわれる。どんなによい食材を用意しても、焼き方ひとつでおいしくなくなる。とても深い食べ物だし、自分と向き合えるんです」


新木
「いろいろ試せるのが、たこ焼きのいいところかなと思います。良質な柚子を仕入れることができたので、秋に向けて、身体が温まるメニューをいま考案中なんです


固定概念にとらわれず、さまざまな発想の転換を経て、生地が白くて伸びるたこ焼きに到達した「みはし屋」さん。
旬の素材を活かした、新たな商品も誕生しそうです。


店名のごとく「みはし」をのぼるように、まだまだ“伸び”“しろ”が期待できるお店でした。



たこ焼き「みはし屋」
住所 京都市左京区田中大久保町22
電話 075-707-2922
営業 平日・日 12:00〜22:00LO 金・土・祝前日 12:00〜23:00LO
定休日 水+不定休
http://mihashiya.net/
*料金は税込み





(吉村智樹)
https://twitter.com/tomokiy