メニューが謎だらけのたこ焼き屋さん「タコとケンタロー」へ行ってきた!

2017/8/28 14:41 吉村智樹 吉村智樹

▲ズラリ並んだたこ焼きメニュー。総数なんと33種類! しかしなかには、どんな具が入っているのか見当もつかないものも。「たこドコノコ」ってなに?


こんにちは。
関西ローカル番組を手がける放送作家の吉村智樹です。
こちらでは毎週、僕が住む京都から耳寄りな情報をお伝えしており、今回が45回目のお届けとなります。





■「たこ板東」に「たこ初恋」、謎のメニューが並ぶたこ焼き屋さんがあった!


「学生街」って、安くておいしいお店が多いですよね。
京都大学の周辺も、メガ盛りの定食屋さんからエスプリが効いたカフェまで多種多彩に揃い、ちょっとしたグルメ見本市となっています。


今回ご紹介する「蛸焼物語 タコとケンタロー」も、その一軒。
京都大学から南へ下がった、学生の下宿が多い吉田東通りという場所にあります。






▲京都大学の南側、静かな吉田東通りに現れる蛸焼物語「タコとケンタロー」



とてもおいしいたこ焼き屋さん、なのですが例のごとく、おいしいだけでこの連載が採りあげるはずがありません。このタコとケンタロー(通称タコケン)さん、たこ焼きの種類がなんと33もあるのです。


たこ焼きって33種類もつくれるものなの?
京都だけに、もしかして三十三間堂にかけてる?
33種類もあれば、なかには無謀な挑戦もあるのでは?


いろんな疑問が鉄板の上でころころ転がります。
いったいどんな “蛸焼物語” が待っているのでしょう。
謎を解明すべく、学生街らしくチャリをこいで取材へと向かいました。


たどり着いたタコケンさんは、カウンターだけのオープンキッチンのお店。
腹ぺこ盛りの学生たちで、にぎやかな雰囲気。



▲店内はいつもおなかをすかせた学生たちでにぎわう。焼きあがるのをいまかいまかと待っている



▲店内はたこミュージアムさながらにたこグッズでいっぱい






▲たこ関連書籍も。故・たこ八郎さんの本まで



▲人気ぬいぐるみ作家の山さきあさ彦さんが手縫いした、たこぐるみ


お店のいたるところに目につく貼り紙にも、学生街ならではな「大食いチャレンジ」の要綱や、くすっと笑えるメッセージが。たこ雑貨やたこ書籍もふんだんに置かれ、くつろげる「たまり場感」があります。学生時代にこういうお店でダベりたかったなあ(遠い目)。



▲若い学生はギャル曽根を知っているのだろうか



▲次回はチャレンジしなければ



▲みんな! おかわりするんだ!


■「たこ焼き愛」をつらぬき、ラストチャンスに賭けた


オーナーたこ焼きシェフは小田研太郎さん(50歳)。
笑顔を絶やさず、学生たちと会話をしながらも、決して頃合いを見逃さず生地を焼いています。
この頼もしさ、小田さんは街で暮らす学生たちの兄貴分的な存在なのです。



▲オーナーシェフの小田研太郎さん(50歳)



▲学生たちの兄貴分的存在


小田さんがこの「タコとケンタロー」をオープンしたのは2010年。
それまで運送業やパンの製造業に携わってきた小田さん。たこ焼き屋さんを開くのは、20代の頃からの夢だったのだそう。


小田
「とにかくたこ焼きが大好物なんです。いまだによそでたこ焼き屋さんを見つけると買って食べてしまう。それくらい大好きですね。なのでいつか自分の店を持ちたいと考えていたのですが、何度かトライするも、その都度うまくいかず。この場所にたどり着いたのは43歳のとき。『これはもうラストチャンスだ』と思ったんです」


たこ焼きに、そんなにアツアツな想いが秘められていたのですか。そうしてこの地で、まずは20種類のたこ焼きからスタート。小田さんの蛸焼物語の頁がひらりと開かれたのです。


■種類は驚異の33種類! なかには二度見してしまうメニューも


ではさっそく、僕も焼いていただきましょう。
と、メニューを見ると、んん?



▲どれにしようかな……ん?



▲「たこインデアン」「たこ初恋」「たこタコさん」……なんだろうこれ。「たこイタリアン」と「たこチーズ」はなぜ別物?



▲こちらもよーく見ると気になるメニューがちらほら



▲なんとなく想像できるけど、とはいえまさか……という気も


「たこドコノコ」「たこ初恋」「たこタコさん」……。


な、なんだこれは?

種類が多いのは知っていましたが、なかに得体のしれないUMA的なたこ焼きが散見。
しかも、商品の説明がいっさい書かれていない。
きっとどれも間違いなくUMAいのだろうけれど、いわゆるたこ焼きの向こう側にあるものばかりで、首をかしげてしまう。
さすが西の最高学府のおひざもと、難問を突きつけてきます。


小田
「お客さんは『これはどういう意味ですか?』とぜんぶ質問してくる人と、いっさいなにも訊かずに推理して注文する人のふた通りに分かれますね」


なるほど。では僕も推理しつつオーダーしましょう。
あれこれ迷っても、真実はいつもひとつ! のはずですから。


「たこ板東」は、きっと板東英二さんの大好物「ゆでたまご」入りだと予想。
でも、ゆでたまごをたこ焼きに、いったいどう和えるんだろう。
もしやゆでたまごではなく、ドラゴンズ出身だから龍角散入りとか?


「たこタコさん」は、おそらく、たこ増量。たこが「タコさん(たくさん)」入っているというダジャレでは。


「たこ初恋」は、これは簡単。初恋の味、レモンのトッピングでしょう。いや、待てよ? まさかのソースのかわりに「カルピスがけ」もありえる。


そうして焼いていただいた結果は……。


小田
『たこ板東』は、うずらのゆでたまごが丸ごと一個入っています。うずらと言ってもたまごはけっこうな大きさなので、無理やり押し込んでいます(笑)。『たこタコさん』はタコ切りしたウインナーソーセージ入り。お子さんのために考えたメニューなのですが、大人にも人気です。『たこ初恋』は柚子胡椒とキャベツで。こうすると甘酸っぱいたこ焼きになるんです」


う~む。「たこ板東」がギリ当たった以外は総はずれ。僕の初恋は、こうして成就せず、はらはら散ってゆきました。
しかしこれはおもしろい! 推理を楽しみながらコンプリートしたくなりますね。



▲「たこタコさん」にはたこ切りした赤いウインナーソーセージが



▲「たこ板東」には、うずらのゆで卵が丸ごと一個入る



▲赤いウインナーソーセージに熱が通り始めると……



▲なんと、たこのように足が開き始めた!



▲「たこタコさん」(6個480円)。お子様向けにつくられたメニューだったが意外にもオトナに大人気だとか



▲意表を突かれた「たこ初恋」(6個480円)。レモンだと予想していたが、柚子胡椒&キャベツ。「こうすると甘酸っぱいたこ焼きになるんです。僕の初恋の味だっだのかって? いえ、僕のは苦かったです(苦笑)」



▲「たこ焼きに合うワイン、いかがですか?」とすすめてくださったのが、スペインの白ワイン「ビエンベビード プルポ(タコ)」(1本2600円)。辛口で爽快。本当にたこ焼きに合う! 一本売りなので友達とわいわいやりたいときにぜひ


ほかのメニューもなかなか凝っています。
「たこのライバル」はイカ入り(笑)。
なので「たこタイ」は鯛入り、かと思いきや、こちらはパクチーがのったタイ料理風。


「たこ和尚」はマヨネーズで和えた「たくあん」のトッピング。たくあんをはさんだ滋賀県名物のB級グルメ「サラダパン」からヒントを得たのだそう。
「たこの黄門さん」は、ひきわり納豆を閉じ込め、ポン酢でさっぱりと。


とりわけ意外だったのが「たこインディアン」
これはだしで割った和風カレー入り。なぜインディアンがカレーなのですか?


小田
関西に『インデアンカレー』ていうチェーン店があるでしょう。僕の若い頃は、インデアンカレーがご馳走やったんですよ。それでカレー味をインディアンと名付けました」


納得! 僕も店主さんと同世代なので、よくわかります。
それにしてもこういうメニューは、どういうときに思いつくのですか?


小田
「これはもう『降ってくる』としか言いようがない。アイデアが降りてきたら試行錯誤しながら、商品化します。最近は……あんまり降ってこないんですが(苦笑)」


いえいえ、オープンした7年前は20種類だったというメニューが現在33種類にまでなったのですから、そうとうな“降たこ量”ですよ。



▲記念すべき33種目は「たこベーゼ」(6個入り490円)


■商品化できなかった失敗作も……


それにしても、これだけユニークメニューが並ぶと、なかには意欲作すぎて商品化できなかったものもきっとあるでしょうね。


小田
「失敗作ですか? らっきょうですね。僕の持論ですが、たこ焼きには漬物が合うんです。『たこ和尚』や『たこヨンジュン』(キムチ入りたこ焼き)のように漬物&たこ焼きでうまくいったメニューもあります。でも、らっきょうだけは、なぜか……どうにもこうにも」


そう言って、小田さんは「思いだしたくもない」というふうに顔をしかめました。
どうやら天から降りてきたものすべてが、多幸をもたらすというわけではないようです。


■たまごの量は通常の5倍。ふわぷる食感で夢心地


では、いただきます。
うああ~、おいしい~。
生地がふんわりふっくらぷるんとして、ちょっとほかにはない、やさしい食感ですね。


小田
「よくお客さんから『プリンみたい』『グラタンみたい』と言われます。うちのこだわりはたまごの量なんです。普通のたこ焼きの5倍の量を使っています。大阪のたこ焼きと神戸の明石焼きの中間あたり。これが僕がたどり着いた、おいしいたこ焼きです」



▲シンプルな「たこ焼き」(6個420円)。青のりではなく刻みのりなのが特徴



▲普通のたこ焼きはソース類の味を選べる。アメリカ生まれの「ヨシダソース」でいただくたこ焼きは文明開化の味



▲すりおろした山芋にうずらの卵、アツアツのだしをかけた「たことろろ」(6個480円)



▲1日限定9食(?)という「ケンタコ定食」(580円)。たこめし+たこ焼きのお吸い物+たこサラダがついてこの価格は学生街とはいえコスパよすぎ。たこ焼きとごはんの相性のよさを再確認できる逸品



▲無料の「たこせん」。たこ焼きをはさみ、懐かしの駄菓子屋フードに。パリパリ食感で楽しんでみて


■たこ焼きはコミュニケーションツール


おいしいのはもちろん、いるだけで心がほぐれる「タコケン」さんのもうひとつの大きな特徴。それは頻繁に開催される店内でのライブ。L字になったカウンターの一画をうまくステージに見立て、ライブハウスに姿を変えます。



▲カウンターのL字を利用してライブが開催される。9月17日(日)の7周年記念ライブではなんとベリーダンスも披露される予定だとか。ど、どこで踊るの?



▲店内では頻繁にライブが催される。どのフライヤーも味わい深い


いったいなぜ、たこ焼き屋さんの店内でライブをやろうと思われたのですか?


小田
「お客さんとの交流がきっかけですね。この店がある京都大学周辺はクリエイターが多く住んでいて、自分を表現したいと思っている人がたくさんいる。そういう人たちに場を提供したいと思ったのが始まりです」


小田さんはさらに、こう続けました。


小田
「たこ焼きってコミュニケーションのツールやと思うんです。人と人がいい関係をつくるのに最適な食べ物やないかな。どこにもカドがないし、かたちもかわいいですしね。つまんでいるうちに、話も弾む。それだけに、ぜったいにおいしくないとあかんとも思います。人と人がいい関係を結ぶとき、そこにある食べ物がマズかったら、あかんでしょう」


「たこ焼きはコミュニケーションツール」。
なるほどなあ。
苦虫をかみつぶしたような顔をして、たこ焼きを食べている人なんていないですもんね。


それにしてもこのお店、本当、ほっこりします。
たこやきのように、まる~い時間を過ごしました。
そして「たこ焼きにらっきょうを入れるべきではない」という重大な事実も学んだ取材でした。


さてさて、最大の難問だった「たこドコノコ」の正体は?
これはぜひお店で、自らの眼でご確認を。
京都大学を志望する受験生の皆さん、入学試験に出題されるかもしれませんよ。



蛸焼物語「タコとケンタロー」

住所 京都市左京区聖護院東町1-2聖護院ハイツ1F
電話 075-771-4736
営業 12:00~23:00
定休日 不定休
https://www.facebook.com/Takotokentaro/
2017年9月17日(日)に店内で7周年記念イベントを開催予定!



(吉村智樹)
https://twitter.com/tomokiy