ベルギーが生んだ奇妙な芸術家たちが渋谷に大集合!

2017/7/19 11:15 Tak(タケ) Tak(タケ)


ベルギーという国から真っ先に連想されるものはなんでしょう?やはり食べ物系だとベルギーワッフルにベルギービールですよね。どちらも種類も豊富で特にベルギービールは専門店が日本にも何軒もあるほど人気です。



そうそう、学生時代にベルギー・ネーデルランド(オランダ)・ルクセンブルクの3カ国の頭文字を繋げた呼び名「ベネルクス三国」なんて言葉も覚えましたね。

因みに政治的にも大事なポジションを占めておりEU(欧州連合)の本部が置かれているのがベルギーの首都ブリュッセルです。隣国のフランスやドイツの陰に隠れがちですが、独特の文化を築いてきたのがベルギーなのです。



アートに目を向けてみると15世紀~17世紀には ヒエロニムス・ボスやピーテル・ブリューゲル(父)それにペーテル・パウル・ルーベンスなど個性的で後世に大きな影響を与えた画家たちがベルギーに生まれ活躍しました。

イタリアやフランス美術を「中心」と考えると、それらには属さない独特の発展を遂げた「周縁」の画家たちと捉えることが出来ます。しかしベルギー芸術なくしては西洋美術史は語れないほどそこで誕生した画家たちは重要視されています。


ピーテル・ブリューゲル(父)[原画]、ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版] 《大食》 1558年 エングレーヴィング・紙 神奈川県立近代美術館

現在、大阪国際美術館で開催している「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展」では、現存数の非常に少ないヒエロニムス・ボスやピーテル・ブリューゲル(父)らの真作が公開されています。
http://babel2017.jp/

都内ではBunkamuraザ・ミュージアムで「ベルギー奇想の系譜」展が7月15日から始まりました。展覧会タイトルにある通り、奇想の画家たちが制作した奇妙な作品が会場内にずらりと展示されている、ちょっと(かなり)異色の展覧会です。

「ベルギー奇想の系譜」展の見どころとしてボスやブリューゲルら中世の画家たちの作品から、現代作家の作品まで実にベルギー美術500年の歴史がぎゅっと詰まっている点です。そしていずれもが変なのです。


フェリシアン・ロップス[原画]、アルベール・ベルトラン[彫版] 《娼婦政治家》 1896年 多色刷銅版画・紙 フェリシアン・ロップス美術館

ところで、ベルギー出身の画家って他に誰を思い浮かべますか?

最も知名度があるのがルネ・マグリットでしょうか。少し絵画に詳しい方ですとジェームズ・アンソールやフェルナン・クノップフ、ポール・デルヴォーなどの名前が頭に浮かんでくるはずです。それらの作家全てこの展覧会に出ています。しかも1,2枚ではなく何点も観られるのが嬉しいポイントです。

そんなマニアックな作家なんて知らないよ…と思うことなかれ。展覧会は画家の名前で観るものではありません。あくまでも作品を観に行く場所です。純粋に作品だけを観るとベルギー奇想の系譜」展ほど面白い展覧会はそう滅多にありません。

おかしな絵(作品)ばかりなのですから。


ジャン・デルヴィル 《レテ河の水を飲むダンテ》 1919年 油彩・キャンヴァス 姫路市立美術館

そんなおかしさの中に戒め的に「七つの大罪」や「七つの徳目」といったシリーズも観られますし、何よりも必見なのが19世紀末から20世紀初頭にかけてのベルギー象徴派、表現主義と呼ばれる時代の作品です。

よく知っているようで、知らない国。身近なようで遠い国。中心でなく周縁だったからこそ生まれた奇想の画家たち。1400年代の作品から2010年のヤン・ファーブルの作品まで奇想をテーマに約120点の作品がBunkamuraザ・ミュージアムの会場で跋扈しています。


トマス・ルルイ 《生き残るには脳が足らない》 2009年 ブロンズ ロドルフ・ヤンセン画廊 © Studio Thomas Lerooy, Brussels, courtesy rodolphe janssen, Brussels /Photo: Philippe D. Hoeilaart

来日した出展アーティストのひとりトマス・ルルイと作品を撮ろうとしたら「僕も君を撮るよ!お互いに撮ろう!!」と訳の分からない展開になってしまいました…珍しい画像なので記念に載せておきますね。

幻想と耽美、皮肉にユーモアなど独創性あふれる作品に触れることで連日の暑さで弛緩した気分をピシッとさせに行きましょう!夏の美術館は薄手のカーディガンが要るほどキンキンに冷えていますよ!!




「ベルギー奇想の系譜展
 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」


会期:2017年7月15日(土)~ 9月24日(日)
7/18(火)、 8/22(火)は休館
開館時間:午前10時~午後6時(金・土曜日は午後9時まで)
入場は閉館30分前まで
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/




「超時空要塞マクロス」マックスをはじめ、「BLEACH」藍染惣右介などアニメーション作品のみならずマルチナ活躍をみせる声優の速水奨さんが、「ベルギー奇想の系譜」展の音声ガイドのナレーションを担当しています。


名画に出てくる 幻想世界の住人たち (ビジュアル選書)