「いちはらアート×ミックス」へ行って芸術祭の在り方について考えてみた。

2017/5/9 13:48 Tak(タケ) Tak(タケ)
狭い狭い国土の日本ですが、毎年のように各地で芸術祭が開催されています。記憶が正しければ2000年に新潟県で開催され現在も3年に1度開かれている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が、芸術祭流行りの発端だったように思えます。


大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ

たまたま第1回目の大地の芸術祭が開催された時に、仕事で新潟県へ出向いており、ひょんなことから「作品」として参加する経験をしたこともあり、自分の中ではちょっと特別な芸術祭という位置づけです。当時新潟まで足を運ぶことなくても、翌年2001年に開催された「横浜トリエンナーレ」は観に行かれた方も多いのではないでしょうか。

石川県「ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭」、愛知県「あいちトリエンナーレ」、香川県「瀬戸内国際芸術祭」、北海道札幌市「札幌国際芸術祭」、「茨城県北芸術祭」、埼玉県「さいたまトリエンナーレ」などなどまさに芸術祭百花繚乱の時代です。

一体、いつから日本人はこんなにもアート好きな国民になったのでしょう?

果たしてどれだけの人に認知され、実際に芸術祭に足を運ばれているのか気になるところです。主催者である県や市がどのような目的で決して少額ではない税金を使いこうした芸術祭を開催するのか、これだけ入り乱れている状況を鑑みると、果たして開催目的、意図はどれだけしっかりとしたものがあるのか疑問に思えてきます。


鈴木ヒラク(いちはらアート×ミックス2017)


ただ、他の自治体で開催していて何となく成功しているっぽいから、うちでもやってみようかな~的なノリでもし始めた自治体があるとするならば、それは当然ながら上手くいくはずがありません。

「上手くいく」と軽々に述べてしまいましたが、芸術祭が成功したか失敗に終わったのかを判断する基準がないのも問題のひとつかもしれません。来場者も少なく、マスコミにも取り上げられることなく、住民からは「税金泥棒」呼ばわりされても、自治体(芸術祭の運営者)が「成功だった!」と考えるならその芸術祭は「上手くいった」ことになってしまいかねません。

「芸術祭の専門家」を招聘し丸投げしているのでは?と思えるような芸術祭も無きにしも非ずの現状は、アート界においても地方行政においてもそれぞれ芳しいことではないはずです。



そこで、2014年に第1回目が開かれ、今年(2017年)に第2回目をまさに開催中の、「中房総 国際芸術祭いちはらアート×ミックス」(千葉県市原市)を例に少し考えていきたいと思います。

レストランの食事でも、読書でも実際に食べたり、読んだりせずにそれを批判することは禁じ手であり、一番やってはいけないことです。たまにTwitterなどでも実際に行っていないにも関わらず、展覧会の批判を堂々としている人がいますがどういう思考体系をしているのか、全く理解できません。

誰しもが気軽に世界に向けて発信できるようになった今だからこそ、人間性が試されていることを教えてくれる人が周りにひとりもいないのでしょうか。憐憫を催さざるを得ません。


「Dirt Restaurant -土のレストラン-」

さてさて、いちはらアート×ミックスへは前回と今回ともに足を運び、アート仲間と現地を観てまわりました。前回(2014年)は初めての開催ということもありとても気合が感じられましたが、逆にそれが空回りしている部分も多く見られました。

具体的には「正しい見方」を鑑賞者に強要している節があちこちで見受けられました。都心にあるギャラリーならそれで良いのですが、田畑に囲まれた自然美豊かな空間で、型にはめられた見方を押し付けられると興ざめしてしまうものです。

また、展示場所がそれぞれ離れているので移動は自ずと車となります。(バスも運行していましたが使い物にならない本数でした。)各展示会場ごとに駐車料金(休日1000円)を取ったのには驚き呆れました。駐車場といっても舗装もされていないただの空き地です。原美術館、根津美術館、五島美術館など都心にある美術館が駐車無料にも関わらず、どうして千葉県市原市の山中で…アンケートやブログその他で最も改善すべき点のひとつとして取り上げたこともあり、今回(2017年)は全て無料となりましたが、集客的にみると初回のこの失敗を取り返すことは出来ていないように思えます。


「森ラジオ ステーション×森遊会」

「駐車場の料金の有無なんて芸術祭の本筋ではないのでは?」と思われるかもしれません。しかしそれは間違いであり、まさにそうした末端の事柄に主催者の本音や考え方が露骨に表れてしまうものなのです。

全ての作品を鑑賞できる「パスポート券」も前回が3800円だったのに対し、今回は2000円と約半分に値下がりしました。芸術にかけるお金はその作品が良ければ何万円でもまた海外へでも苦労して出かけるものですが、逆に価値が見出せないものに対してはびた一文も払いたくないというのが人の心です。


仲田絵美「光の屑/Trash of Light」

他の芸術祭でもこれだけチケット代は取っているからうちでも。なんて数秒で決めてしまったような初回の価格設定からいかに「自分たちの芸術祭」について理解していないか、また見えていないかを露呈してしまいました。しかし今回でその修正が出来たのは評価できる点です。

作品展示に関しても前回は、名の知れたどこの芸術祭にも出品している作家さんが多く、彼らが廃校となった小学校の教室などを使い作品展示をするという、これまたどこかの芸術祭で何度も観たような見せ方が主でした。


「蝶々と内田のものがたり」

今回たまたま地元の方にお話しを伺うことが出来、曰く「前回は『落下傘』ばかりだったから、地元が盛り上がらなかったんだ。」とこちらが何を聞いたわけではなしに語ったてくれたのでした。頭に手拭いを巻いたおじさんでしたが下手な批評家よりも正鵠を射た発言ではないでしょうか。

それに懲りたので、今回は作家さんに市原に長く滞在してもらい地元の人(子どもから大人まで)と共にワークショップ形式で作品を作り上げたそうです。会場にいた誇らし気な顔の少年も作品のひとつを手掛けた「作家さん」なのでしょう。

以上2点はどれも新しい視座ではなく、他でも言われていることかもしれません。しかし皆がそう感じるということは、そこに問題が潜んでいるからに他なりません。最後にもうひとつだけ「いちはらアート×ミックス」をより良きものにするために、web展開にもっと力を真剣に注ぐべきだと思います。



公式Twitterのフォロワー数が2014年開設で700人に満たないといのは、存在していないのとイコールです。FBも数的にまだまだ足りません。それと最も問題なのは公式サイトが見にくいことと、更新頻度が低い点です。

http://ichihara-artmix.jp/

SEO対策をもう少し真剣にやるなり、SNSの更新頻度を高めるなりしないと開設している意味がありません。ここでも同じことが言えますが、他の芸術祭や美術館がやっているからうちも。という発想はやめて市原独自の芸術祭を徹底的に目指して行くべきだと強く感じました。



会場となっている市原市のポテンシャルや自然美豊かで風光明媚な場所的魅力は十分にあるのですから。もったいないお化けが出ちゃいますよ、このままじゃ。

あぁ、最後の最後にもうひとつだけ。そもそも「いちはらアート×ミックス」というタイトルも「いちはらアート」と「ミックス」の間に「×」を入れたりしているので、ハッシュタグでの投稿時に混乱を招きます。タイトルはシンプルが一番です!

次回もまた観に行きますね!!

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