予約すれば自宅を見学可能!驚異の「アメリカントイ」コレクターに会ってきた!
▲アメリカントイ(アメリカのおもちゃ)専門誌『TOYBARN』(トイバーン)編集長のTakuさん。なんとご自宅をアメリカントイミュージアムとして一般開放しています
こんにちは。
関西ローカル番組を手がける放送作家の吉村智樹です。
こちらでは毎週、僕が住む京都から耳寄りな情報をお伝えしており、今回が36回目のお届けとなります。
今回はミニコミのお話。
ミニコミには、メジャーな版元が出版している雑誌をしのぐ面白いものがたくさんあります。
なかでも僕が度肝を抜かれ、アタマに「BANG!」とショックをおぼえたのが、京都在住のTakuさんという男性が自費出版している“アメリカントイ”の専門誌「TOYBARN」(トイバーン)。誌名のトイバーンは映画『トイ・ストーリー2』の劇中に出てくるおもちゃ屋さんの名称。
▲Takuさんが自主制作しているアメリカントイ専門誌『TOYBARN』(トイバーン)
「アメリカントイ」とは、アメリカ製のおもちゃ、または、アメリカ生まれのキャラクターやマシンなどをかたどったおもちゃのこと。「PEZ」(ペッツ)やマクドナルドグッズのように、お菓子に添えられたおまけ、景品もアメリカントイと呼ばれます。
配色はかなり派手。とはいえ、アジアのおもちゃに用いられる蛍光的な原色とはまたおもむきが違う、おおらかでバタくさい色合いが持ち味。
そしてこのミニコミ「トイバーン」は、単にアメリカ製のおもちゃを紹介しているだけではなく、「アメリカントイに魅了された日本人の家や店」を大々的にフィーチャーしているのが特徴。その数、なんと1号につきおよそ150軒! ただいま2号目までが発行されています。
▲編集長のTakuさんはInstagramなどSNSに部屋の画像を公開したアメリカントイコレクターひとりひとりに掲載許可をもらい、こうして誌面に紹介している。
ページを開けば、皆さん壁も棚もぎっちりぎちぎちにアメリカントイに占領されており「Whoa! アメトイマニアって日本にこんなにいるの!?」と目をみはります。
なかには親子二代でコレクターというツワモノや、ひたすらスポンジ・ボブだけを集め続けているため部屋が真っ黄色になっている方もおり、思わずホールドアップしてしまいそう。
■コレクター約150人の部屋を掲載
この方が京都府木津川市にお住いの編集長、Takuさん(33歳)。
Mr. インクレディブルを思わせる、やさしい雰囲気の巨漢です。
本職は保育事業所の運営。
▲アメリカンサイズのつなぎがよく似合う編集長のTakuさん
Taku
「編集長と言っても、ひとりでやっています。wordで版下を作って」
そう、この「トイバーン」は、Takuさんが、たったひとりで編集している専門誌。
InstagramなどSNSにアメリカントイコレクションと自宅の部屋をアップしているマニアひとりひとりにこつこつ連絡を取り、転載許可をもらったりインタビューをしたりといった気の遠くなる作業のすえにできたものなのです。
“アメトイコレクターの部屋ばかりおよそ150人ぶんが掲載されているミニコミ”というだけでも充分すごいのに、本業を別に持ちながら、たったひとりで編集しているというその過程もまたマーベラス。Takuさんは言わば「コレクターをコレクションしている人」なのです。
そんな「トイバーン」、待望の最新Vol.3が今週5月11日(木)に発売されることに。
▲5月11日(木)発刊。「トイバーン」待望の第3号
Taku
「Vol.3も素晴らしい方が揃いました。とくに名古屋にお住まいの、定年退職をされて現在アメリカントイコレククションに没頭している男性の部屋は息をのむほどすごいですよ。実際におじゃましてインタビューしたんですけれど、もう本当びっくりしました。家のなか、どこもかしこも全部アメリカントイ。これまで登場していただいた方のなかでも最強ではないかと思います」
定年退職をされたご老人の家のなかがオールアメリカントイ……どんなアメリ感なお宅なのでしょう。ああ、僕も取材したい。想像しただけでめまいをおぼえます。
■編集長の自宅もおもちゃが満載!
そんなTakuさんご自身もまた名だたるアメリカントイコレクター。今回ご自宅をおじゃまし、お部屋を見せていただくことに。
ドアを開けてみると……う、う、USO!
なな、なんですかこのコレクションの数量は!
▲Takuさんのご自宅。目の焦点が合わないほど膨大なコレクション
▲かつては通路であったであろう床にもおもちゃが侵食
▲どこまでがおもちゃで、どこからがご本人なのか
い、いったい全体、どれくらいあるのですか?
Taku
「きちんと数えたことはありませんが3000くらいかな。数が多いので、わずかなすき間を埋めてゆくような並べ方をしています。フィギュアどうしが支えあってつながっているので、少々揺れても落ちない。ただ、一個落ちると、つられてぜんぶ落ちちゃう(笑)」
3000……。
目測ではプラス1000はゆうにあるな……と感じながら撮影していると案の定、服に引っかけて落っことし、「つられてぜんぶ落ちちゃう」状態となってたいへんなことに。Takuさん、すみません(汗)。
▲「すき間を埋めるようにして並べると、少々揺れても落ちないんですよ」
そしてこれらコレクションは日々増殖し続け、海外のオークションサイトから競り落としたときは、1日で200体近く増えることもあるのだとか。もう、ぎゅうぎゅう詰め。
購入はやはりインターネットからが多いのですか?
Taku
「そうですね。あとは実際に買いに行きます。向かうのは名古屋が多いですね。名古屋はおもちゃのカルチャーが盛んで、特にモンスター系、ホラー系でいいものが出るんです。コアなコレクターさんもたくさんいますし、独特な文化がありますね」
アメリカントイにもケンミン性が表れるなんて知りませんでした。
■おもちゃ購入のポイントは「かわいいこと」
そして膨大な数のおもちゃに気が動転していましたが、見渡してみると数だけではなく、えもいわれぬ統一感もあるように思えます。
Taku
「僕は第一に『かわいい』かどうかが買う基準かな。お店で出会って『わあ、かわいいな!』と思ったら買います。なので、どういう作品に出ている、なんという名前のキャラクターなのかをまったく知らないで買う場合も少なくない。あとになって『ああ、これって、あのアニメーションに出てくるやつなのか』って気がつくことも。作品が好きだからコレクションしている人とは正反対の買い方ですね」
キャラクターの名前や出演作の背景を知らずとも「かわいい」と惚れたら買わずにはおれない。Takuさんは究極にピュアな、フィギュアそのものを愛でるファンなのでしょうね。
■まず棚ありき。他のコレクターの逆を行く蒐集道
そもそも、おもちゃを集めようと思われたのはどうしてでしょう。
Taku
「これもおそらく多くのコレクターとは正反対です。僕がまだ奈良県の実家に住んでいた短大生の頃、自分の部屋があまりにも殺風景だった。それで『なにか飾ろう』と思い、まず棚を手作りしました。やっぱり変ですか? ふつうはある程度コレクションがたまってから棚をつくるものですよね。でも僕は、なんにもないのに先に棚だけをつくった。いま考えても、ちょっと不思議な行動でしたね」
置くものもないのに「棚を作りたい」という衝動に駆られ、それまで日曜大工はしたこといがないにもかかわらず板を買い、見よう見まねでいきなり完成させてしまったという奇妙な体験。まるで未来の自分が過去の自分に作らせたかのよう。Takuさんのトイ・ストーリーは、こうして始まったのです。
▲Takuさんは棚を自家製している。「棚を作ったから何か並べよう」という発想なのだ
▲リビングのテーブルやラックも自分で作ったもの
▲「トイ・ストーリー」のメインキャラクター「バズ・ライトイヤー」の箱も自作。この大きなフィギュアを部屋にいれるだけで相当な苦労があったのだそう
■ビッグサイズの服をさがして、おもちゃと出会った
では、なぜ日本の作品ではなくアメリカントイだったのでしょう。
Taku
「これも、ひょんことからでした。僕、身体が大きいので日本製の服が入らないんですよ。それで奈良市にCOME TOGETHER(カムトゥギャザー)というアメリカで仕入れた古着を売る店があり、そこへ買いに出かけたんです。カムトゥギャザーは半分が洋服で半分がおもちゃという店で、そこでめちゃめちゃかわいいミッキーマウスに出会ってしまったんです」
▲シューズをベッドにして眠るミッキーマウスのかわいさにやられ、すっかり虜に
Taku
「それまでディズニーとはまったく無縁な暮らしをしていたため新鮮でした。ミッキーマウスと、ところ狭しとアメリカントイが並ぶカムトゥギャザーの雰囲気が大好きになって、自分も部屋の棚に並べてみようと思い始めたのです」
▲学生時代に訪れた奈良市の『COME TOGETHER』。店の雰囲気が大好きになり「自分の部屋もこんあふうにディスプレイしたい」と考えたのがアメリカントイコレクションのはじまり
▲『COME TOGETHER』とは現在も親交が厚く、足しげく通っている
学生時代に強い影響を受けたアメリカ衣料と雑貨の店「カムトゥギャザー」とは現在も親しく、いまの家をこの地に建てたのも「カムトゥギャザーの近所だったから」というのが理由なのだそう(ちなみに、このわけは奥さんにはナイショなのだとか)。
こうしてTakuさんのライフスタイルは、一気に合衆国寄りに。
Taku
「アメリカに憧れるようになったのも、その頃からです。まだ十代で旅費がなかったからディズニーランドへは行けなかったけれど、USJは年パスを買って、週に2、3回は通っていました。アメリカントイも気に入ったものを月にひとつほどのペースで買うようになり、次第に増えていった。それまでなにかを集める趣味がなかったから、少しずつ棚に並ぶ人形が増えてゆくのが楽しかったんです」
▲スヌーピーをはじめとしたピーナッツのキャラクターたち。特にトイピアノの上に敬愛するベートヴェンの胸像を置いたシュレーダー(シュローダー)のフィギュアはレアものなのでかなり高価だったのだそう
■SNSの”ハッシュタグ”がマニアどうしを結んだ
いやあ、これほどまでにひしめきあうおもちゃを前にすると、それまで「コレクションの習慣がなかった」なんて、にわかには信じられないです。
Taku
「いまにして思えば、遺伝なのかな。父親がビートルズをはじめとするUKロックのレコードコレクターで、家の壁がレコードでいっぱいだった。そんな父の影響はあったのかもしれないです」
父親のコレクターシップだけは受け継ぎつつも、UKではなくUSAへ。Takuさんの人生にはこうして星条旗がはためきはじめました。とはいえ、学生時代は月にひとつ買うのがやっとのペース。それが爆発的に増えたのには、実に現代的な理由があったのです。
Taku
「TwitterやInstagramを始めてからです。実はこんなにコレクションが増えたのはここ4、5年ですよ。それまでは独学で、雑誌などを読んで勉強しながら購入していました。ところがSNSをやりはじめると、おもちゃに詳しい人たちとつながるようになり、フォロワーさんたちから情報をいただけるようになっていった。実際にお会いし、親交を深めることもあります。ハッシュタグが生み出した文化って、本当すごいですよ」
https://www.instagram.com/toy_pac/
仲間が全国にいる。ハッシュタグで日本はおろか世界のおもちゃファンとつながったTakuさんは、目へ耳へと飛び込んでくるフレッシュでリアルな情報を元に、さらにコレクターロードを驀進。そうして、これまで使った金額は……。
Taku
「うーん……新車が2、3台買えるくらい。高いですか? いやあ、そのために仕事を頑張っています」
新車が2、3台……確かに高額ですが、堅実に「抑えている」金額でもあると感じました(正直もっと高くついていると思っていました)。Takuさんの生真面目さが、金額からも伝わってきます。
■なんと自宅をミュージアムとして開放!
今日は迫りくるようなコレクションの量とバリエーションに圧倒されました。ご自宅の画像をミニコミやSNSで掲載していらっしゃるとはいえ、アメリカントイ・ミュージアムをお建てになり、パブリックにお披露目しないともったいないように思えてしまうのですが。
Taku
「ミュージアム……実はうち、一般開放しているんですよ」
WOW! ということは、こちらは私設ミュージアムとして機能しているのですか?
Taku
「そうなのです。『博物館を建てないか?』という話もあったのですが、どうしても自分のそばに置いておきたくて。なので、僕の仕事が休みの日のみですが、メールでご予約をいただければ無料でご覧いただけます」
▼見学希望は下記メールアドレスへ
taku.toybarn@gmail.com
自宅をアメリカントイ・ミュージアムとして公開するとは……ファビュラス! 度量もアメリカンビッグサイズですね。
そんなTakuさんの将来の夢は?
Taku
「いつかアメリカへ渡り、最低一か月は滞在し、おもちゃを買い漁りたいですね。それが僕の一生の夢。とはいえ、躊躇もしているのです。あまりにもアメリカが気に入りすぎて、日本にもう帰ってこないんじゃないかって。そういった心配があるんです」
自由の国への果てぬ憧れを胸に、今日もアメリカントイの蒐集と「蒐集家たちの蒐集」にいそしむTakuさん。
そんなTakuさんが編集長をつとめる、熱いアメトイ魂をいだく同好の士たちのクレイジーな自宅ルーム&ショップを収録したミニコミ「TOYBARN」(トイバーン)vol.3は5月11日(木)から通販開始! (奈良市『COME TOGETHER』にて先行発売中。さらに東京では『TSUTAYA三軒茶屋店』でも販売が決定)
TOYBARNvol.3 通販申し込み
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=25151679
それぞれが愛情を込めに込めてつくりあげた自家製USJ(ユニバーサル・スタジオ・自宅)の数々。強烈な美意識に彩られた部屋の、むせかえるほどの熱量に驚いてください。
TOYBARNvol.1 通販申し込み
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=2515278
TOYBARNvol.2 通販申し込み