【保存版】「週刊少年ジャンプ」の名作をアンケート順位とともに振り返ってみた

2017/5/2 17:50 吉永龍樹(よしながたつき) 吉永龍樹(よしながたつき)

先日、文化庁のメディア芸術データベースで「週刊少年ジャンプの1969年~2015年の目次データ」が公開されているのを知りました。

ジャンプのマンガは基本的に人気順に並んでいると言われているので、このデータがあれば過去45年の作品の人気がどうだったのか?が一瞬でわかってしまうのです。


言うよりも見るのが早いのでまずこちらの作品を見てみましょう。




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どうでしょうか?

このグラフは左から右に見ていくのですが、タテ軸が下にあるほど人気がある(ジャンプ誌面での掲載順位が前)ということになります。



ドラゴンボールの連載前期の詳細を見てみると、



巻頭カラー(掲載順位1位)で連載開始後、第7話(ヤムチャ登場)くらいから人気が下落。7位あたりで苦戦している様子がわかります。

そして、全連載期間で最も人気がなかったのが「其之三十一 亀仙流の厳しい修行」の12位



これは当時の担当編集、鳥嶋さん(Dr.マシリト)がインタビューで語る


『ドラゴンボール』は最初の頃、あまりに人気が弱くて、打ち切り寸前の状態になってしまったの。

――えっ、そうなんですか。

鳥嶋氏

 そうなんだよ(笑)。で、どこに問題があるのかを徹底的にチェックしたら、悟空のキャラが立っていないのが原因だと分かったんだね。

 そこで、もう既に出ていた亀仙人だけ残して、全てのキャラクターを一度鳥山さんに捨ててもらった。それで、悟空と対照的なキャラとしてクリリンというのを引っ張りだして、3人で修行をさせるところからやり直したの。

(引用元:【全文公開】伝説の漫画編集者マシリトはゲーム業界でも偉人だった! 鳥嶋和彦が語る「DQ」「FF」「クロノ・トリガー」誕生秘話

という証言とも完全に一致します。



「掲載順位7位が打ち切りライン」というのは多少大げさなので鳥嶋さんのリップサービスもあるのかもしれませんが、順位を見て作品が見事に方向転換したのは事実。

以後、天下一武道会で3位以内に大復活。レッドリボン軍編は6位前後と少し落ちますが、その後(ピッコロ大魔王~サイヤ人)はなんと、連載終了までほとんど2~3位を維持し続けるという信じられない人気連載になります。

毎号1位は人気と関係なく巻頭カラーの作品が飾りますので、2位を維持するというのは事実上の1位だったわけです。



このデータが面白いのは、アンケート順位を元にしているので「僕ら読者が感じていた"マンガの面白さ"と想像以上に符合する」という点。



次は、人気の変化がわかりやすかったこの作品を見てみましょう。





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どうでしょうか?

驚くほど後半の変化がわかりやすいですよね。


平均5位前後の掲載順位だった前半に比べて後半は失速。グラフの山が大きくなり13位くらいまで人気が急落しているのがわかります。


原因はもちろんこれ。



第58話で主人公のライバル L が死に、第二部に移行したことで人気は大きく変化してしまいました。

僕も一読者として「後半は盛り上がりに欠けるなぁ」と思っていたのですが、それがこのようなグラフで可視化されているのは非常に興味深いです。




部に分かれてストーリーが変わる作品といえばこちら。

ジョジョの奇妙な冒険(第5部まで)のグラフがこちらです。




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ジョジョに関しては、純粋に掲載順位がアンケート順だったのかどうかはわかりませんが、このグラフだけで判断すると



・第2部、第4部の前半が人気高
・各部、クライマックスに向けて人気が落ちている?
(人気が落ちてきた段階でエンディングを作りはじめている?)
・意外だが、最下位に近い20位も何度かとっている



など、考察しがいのあるデータが見えてきます。



続いては、幽遊白書を見てみましょう。






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冨樫さんが作者コメントで


そらす→意外な所から人気に火が付いたため、作品をその方向に修正すること。


と書いている通り、前半の「ちょっといい探偵話」を廃してバトルマンガに方向転換した部分から急速に人気が高まっているのがわかります。

一番人気があったのは戸愚呂(弟)と対戦する武術大会の決勝付近。


その後、仙水編では下書きに近い状態で掲載されたり今の休載がちになる兆候が見られたように記憶していますが、常時3~5位なので人気はすごいですね。

ドラゴンボールと違い、「最終回がほぼ巻末に掲載」というのは、いろいろな大人の事情を感じます。




幽遊白書を見たのなら、外せないのはこちらでしょう。






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非常に面白い順位です。

連載開始後、一度も10位以下に転落することなく順調に人気を得ていましたが、休載が始まりだした頃から順位に激しい波が。

これは、掲載順が純粋なアンケート順位ではなく、「休載が続く作家さんにはペナルティがある」ためだと思われます。

それにしても、15位の掲載と1位の掲載が交互に続くこのグラフは他にはない凄まじさを感じますね。
連載再開、待ってます!




ジャンプにはまだまだ名作がたくさんありますが、最後にグラフが面白い人気作品の順位をまとめて見てみましょう。





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すごい人気です。
空島編の前で少しだけ順位が落ちていますが、すぐに持ち直し、以後は2位(TOP)を独走。まさに看板マンガですね。







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NARUTOはワンピースに比べるとややスロースタートですが、170話前後で「音の四人衆」が出てきた辺りから一気に人気が加速。
最後の忍界大戦は多くの伏線を回収するためにやや冗長に感じた部分もありますが、10位以内をキープしたままエンディングを迎えています。(最後の10話は最終話後の外伝)







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BLEACHは15年の長期連載でしたが、全体の2/3を過ぎた所で急激に人気が落ちています。藍染惣右介を倒し新章に入ったのもあるのですが、この付近の様子は作者のtwitterマンガと照らし合わせることでさらに深みが出てきます。



twitterによると、ちょうどこの10年目に体を壊し、ずっと具合の悪い状態で執筆を続けていたようです。
体調不良が先か、人気が若干下がってしまったのが先なのかはわかりませんが、本当に作者のコンディションと人気が比例していることがグラフからよくわかります。







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こちらも伝説の作品スラムダンク。
仙道と闘う陵南戦を終えた45話前後から一気に上位4位以内に入るようになり、途中少しだけ豊玉戦(エースキラー)で順位を落としていますが、以降は再び上位に返り咲きエンディングを迎えています。

グラフを見ていると「確かに、豊玉のシーンはあまり熱くなかった…」と感情が数値化されているように思えるのが面白いですね。






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そして、超長期連載だったこち亀。
連載中に絵柄や内容が変化していった作品ですが、100巻前に人気が回復していく様子など、内容とこのグラフを照らし合わせると納得できる部分も多そうです。
※長期連載の順位に関しては他の人気連載が次々終了することで相対的に上がることもありそう







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こちらは、「ギャグ漫画なのにアンケート1位を取った」という噂を聞いたことがある、すごいよマサルさん。
確かに、連載終了付近まで一度も10位以下に転落していないばかりか、事実上のTOPである2位を何度も飾っているので、「アンケート1位」の噂はまんざら嘘ではないのかもしれません。








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同じギャグ漫画ですが、こちらはラッキーマン。
5位~15位くらいを行き来しながら奮闘している様子が伝わってきます。最後はジワジワと右肩上がりに人気が下がっていくのですが、「どこで連載終了が宣言されたのか?」はグラフを見る上で気になりますね。(21位を取った182話あたりでしょうか…)








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そして、ラッキーマンを語る上で外せないバクマン。
こちらは30話までの初速の勢いがすごいのと、100話以降人気の盛り返しに成功しているポイントが非常にレアなグラフです。秀才型の人がアンケート順位とにらめっこしながらキャリアを積み、このような到達点にたどり着いたのかもしれません。








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最後に、他意はないですが「BLUE DRAGON ラルΩグラド」。
こちらはあまりうまく行かなかったとして知られるマンガですが、


第1話→巻頭
第2話→9位
第3話→9位
第4話→13位


という流れを見ると、作者さんも苦労したのだろうな、と感じますね。




このように、これまではマンガ編集に関わる人だけが内部データとして把握していた「マンガ連載中の人気情報」。

46年分もの膨大なデータが個人でも自由に閲覧できるようになるなんて、本当にいい時代が来たなぁと思います。ジャンプだけでも膨大な量のデータがあるのに、文化庁のメディア芸術データベースではサンデーやマガジンのデータも取得可能なので、これを眺めているだけで何時間も楽しめてしまうレベル。

ここに出ているもの以外に、あのマンガの順位は?」と気になる方は、Twitterなどで僕あて(@dfnt)にリプライをくれてもいいですし、少しだけ知識があればご自身でデータを取得することもできます。

ぜひトライしてみてはいかがでしょうか!




【追記】後日ツイッターでつぶやいた他作品のデータ






※後日、最近のハンターハンターおける「ストーリー練りすぎ問題」について考える」という記事を書きました。こちらも合わせてどうぞ!


※本記事は、haltaroさんの「週刊少年ジャンプの短命作品を,機械学習で予測する」という記事を参考に書かせていただきました。ありがとうございました!