コーヒーの湯気で綿菓子を溶かして飲むカフェへ行ってきた!

2017/1/30 16:00 吉村智樹 吉村智樹





▲綿菓子の雲が溶け、蜜の雨がしとしとと降る。そんな風流なコーヒーなのです



こんにちは。
関西ローカル番組を手がける放送作家の吉村智樹です。
こちらでは毎週、僕が住む京都から耳寄りな情報をお伝えしております。


さて、皆さんは京都と聞いて、どんな街を想像するでしょう。
わたくしは京都に住んでおよそ5年になりますが、自分の印象では、京都はとにかく「カフェがめっちゃ多い街」です。


実際に数えたことはなく、雲をつかむような話ですが、日本で1、2を争うほど、おびただしい数のカフェがひしめく都市ではないかと思います。
そしてカフェが多いだけあって、ユニークなお店もまた豊富。


そんなさなか、京都に「雲を溶かして飲むカフェ」があると聞きました。


雲を、溶かして、飲む?


なんですかそれは。
厚い雲におおわれた謎を解き明かすため、さっそく話題のカフェへと行ってきました。


訪れた場所は二条城の東側。
いまなお町家や古民家が建ち並ぶ、風情ある一画です。



▲町家が並ぶ二条城の城下町にひときわ映えるイエローのドア





黄色いドアと「α」の文字がドンっと印象的なカフェ「Alpha foods&drink 」(アルファ フードアンドドリンク)。
ドアを開けると、椅子もまたイエローで、とてもポップ。



▲ポップなカラーリングの椅子。ライティングも独特なムード


オーナーシェフの(リュウ)さん(30歳)は中国出身。
そのためこちらのお店では「天然バラ茶」(500円 税別)など、薫り高いチャイナ花茶の数々がいただけます。



▲オーナーシェフの劉(リュウ)さん(30歳)は中国出身



▲お湯のなかで花開く中国の「天然バラ茶」。香りのよさにうっとり



「J-POPが好きで、そこから日本に興味をいだきました。大阪の日本語学校で言語を学んだのち、京都の大学に進学したんです。就職も京都でした。大阪でバーをやっている友人がいて、彼を見て自分も『いろんな文化がミックスした飲食店がやりたい』と思い、退職して2015年10月11日にこの店を開きました。『alpha(アルファ)』という店名は、最初の一歩を表す『α』です。僕にとって、ここは最初の一歩なんです」


中国からやってきた劉さんだけあって、家具や照明器具などほとんどが中国の専門店で選んだもの。



▲電影スターのポスターが壁いっぱいに



▲チャイナドールも陳列(近々模様替えの予定)



▲中国で流行しているというダクト型ランプ



▲煉瓦部分はお客さんがチョークで落書きOK



▲こちらは韓国の電球グラスに入ったオレンジジュース(400円 税別)


言われてみれば、灯りの独特なデザインや壁のポスターの色彩などは、やはり日本のものとは違うなと感じました。
さりげなくオリエンタルなムードで、インテリアの鑑賞をしているだけでも楽しく、時が経つのを忘れます。


そしていよいよウワサの、雲を溶かして飲む「雲下コーヒー」(650円 税別)を注文しました。


雲とは、すなわち綿菓子。
綿菓子は自家製で、カウンター内キッチンの専用マシンで作ります。
串に巻き取られる綿菓子を見ていると、カフェにいるのに、縁日に来たのようなワクワク感が。



▲カフェのキッチンに綿菓子のマシンが!



▲白ザラメで作られる自家製の綿菓子






▲できあがり。このままでもアツアツでおいしい


そして待望の「雲下コーヒー」(650円 税別)がやってきました。
確かにコーヒーの上空に綿菓子の雲が、もこもこ横たわっています。



▲綿菓子の雲がコーヒー上空に接近


「雲」のように綿菓子をかざすと、「下」のコーヒーからのぼりたつ熱い湯気でたちまち溶けだし、しとしとと蜜の雨がドロップしはじめる仕組み。



▲コーヒーの湯気でまたたくまに雲が溶けだす



▲綿状の飴が蜜になり、ぽとりぽとり



▲蜜がカップにしたたり、コーヒーは次第にまろやかな甘みをまとう



▲コーヒーの上級はすっかり晴れ間が


雲がどんどん降下して晴れ間が広がる様子がとてもファンタジックで、見とれてしまいます。
たちのぼった蒸気が再び雨となって地表に降りる水循環をあらわした自然科学の実験模型のようでもあります。


最後は、残った綿菓子をコーヒーに漬けて溶かしきり、風に吹かれ消えてゆく白い雲のように、ひとときが幕を閉じます。



▲残った綿菓子は串ごとコーヒーへどぼん



▲おしまい


楽しく、きゅんとくる切ないはかなさがいいですね。


綿菓子が溶けたコーヒーは、ほんのりやさしい甘さ。
カップのふちで再結晶化したざらめをぺろっとなめながら、ソルティドッグのような味わい方もできます。


いったいなぜこのようなメルヘンでアカデミックなメニューを考案したのでしょう。



「子供の頃に好きだった綿菓子って、大人になるとなかなか食べられないでしょう。注文するのも、食べている姿を見られるのも恥ずかしいし。だから童心にかえって綿菓子が楽しめるメニューはできないかなと思って考えたんです」

なるほど。 このメニューのおかげで大人でも誰にはばかることなく綿菓子を堪能できますものね(もちろん綿菓子をそのまま食べちゃっても問題ありません)。

こんなに愉快なエンタメ要素のあるコーヒーなら、すぐに人気が出たんじゃないですか?

劉 「いえ……実は、はじめはまるで売れなかったんです


え? 意外です。
それはまたどうして?



「お客さんが『なにこれ?』『なんや、わからへん』と言って敬遠しておられまして。綿菓子をただの飾りだと思われたようで。ただ注文してくださったお客様がinstagramなどSNSで拡散してくださって、それで次第に噂が広がり、注文が多くなったんです」


ほお、Instagramでですか。
よく耳にする「SNS映え」って本当に効果的なんですね。


“SNS映え”といえば、こちらのメニューも拡散間違いなしのインパクト。
植木鉢に見立てた容器、シャベル型のスプーンがついた自家製スイーツ「鉢植デザート」(550円 税別 雲下コーヒーとセットで注文すると100円引き)。



▲スイーツだと知らずに見たら完全に鉢植え


クラッシュしたココアクッキーの見た目は土そのもの。
新芽をイメージしたミントが愛らしく、シャベルで掘ると、下から顔を出すのはバナナと特製の生クリーム。



▲シャベルで堀りおこすと……



▲生クリームとバナナがたっぷり。フルーツは季節によって変わる


鉢植えなので旬を意識し、バナナだけではなくマンゴーなど季節のフルーツを入れるようにしているのだそう。


いや~、なんのキャプションもなければ本気で鉢植えだと勘違いしてしまうであろう、ジオラマのようなリアルさがありますね。



「これは中国で流行しているスイーツをヒントにしたんです。中国では植木鉢にアイスクリームやパフェを入れて食べるのが人気で、その容器を使いながら、ここだけのオリジナルメニューを考えました」


インテリアと同じく、こちらも中国の器を使われていたのですか。
そしてそのままを提供するのではなく、ここだけの冴えたアレンジがある。
植木鉢の上のミントのように、ルーツを大事にする心と、オリジナリティの双葉が、このお店では開いています。
さらに根を張り、いつかきっと、花が咲くことでしょう。


壁には、



「当店ではTATOO、同性愛、異文化、動物、etc..全てWelcome! 但し『自己中』『身勝手』『思いやりがない人』が大嫌い」


と、大きく書かれています。


それぞれの異文化が雲のように形を変えながら浮遊し、ときにくっつく。
そこから文化のしずくがしたたり、カップのなかに素敵なプラスアルファが生まれる。
アジアンカフェの在り方って、過剰にエキゾチックな内装にすることではなく、きっとこういうことなんでしょうね。


ユニークなだけではなく、綿のようにふんわりしながらも串のようにしっかりとした軸を感じる、とても心あたたまるひとときを過ごしました。
記憶のクラウドに保存しておきましょう。


名称●Alpha foods&drink (アルファ フードアンドドリンク)
住所●京都市中京区西大黒町327
営業時間●12:00~18:00(開店時間は臨時で変わることがあります)
BAR TIME 18:00~(閉店時間は要確認)
定休日●水曜日&不定休
電話番号●075-286-8285
Facebook● https://www.facebook.com/kyotoalpha/



(吉村智樹)