初の回顧展!アール・デコの館で超絶技巧の七宝焼きを楽しもう

2017/1/17 13:00 Tak(タケ) Tak(タケ)


アート好きであってもまだまだ並河靖之(なみかわ・やすゆき、1845-1927)の名前は一般的ではありません。

並河は明治時代に活躍した七宝焼きを極めた芸術家として海外では高い評価を受けていますが、日本では大正時代以降その名を忘れられた存在でした。



ロンドンにある工芸・デザインの殿堂ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)にも数多くの並河が手掛けた七宝焼きがコレクションとして収蔵されています。



ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)検索結果(一部)
https://www.vam.ac.uk/


一体どうやって作ったのだろうと首を傾げざるを得ないまさに精緻の極み。明治時代に活躍し世界的に名の知られた工芸作家たちに、ここ数年再び光があてられ注目が集まっています。

その中でも並河靖之の手掛けた七宝焼きは、我々が思う七宝焼きとはまったくベクトルが違います。絵で描くのも難しく精緻な図案を焼き物で表しているのですから驚きを通り越しただただ茫然としてしまいます。


並河靖之 部分 菊紋付蝶松唐草模様花瓶 一対 泉涌寺

そして、何より美しく品があるのが並河七宝の一番の魅力です。


そんな並河靖之の作品をまとめて紹介する初めての展覧会が、東京都庭園美術館で開催中です。庭園美術館は「アール・デコの邸宅美術館」としてとても人気の高い美術館です。

少し、ここで東京都庭園美術館について簡単にご紹介しておきますね。


東京都庭園美術館 本館 正面外観

庭園美術館は、元々は朝香宮鳩彦王(あさかのみや やすひこおう、1887年10月20日 - 1981年4月12日)、鳩彦王妃允子内親王(やすひこおうひ のぶこないしんのう、1891年8月7日 - 1933年11月3日)夫妻が、家族の為に建てた邸宅です。

1933年に竣工したアール・デコ様式の建築は、戦禍にも耐え建築当初のままの造形的な美しさを保っています。国内外からも高い評価を受けています。2015年には国の重要文化財に指定されました。

日本国中、星の数ほどあるミュージアムの中でも、皇族の邸宅を利用したひと際個性的な美術館です。



今回の「並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑―透明な黒の感性」では、明治期に建てられたアール・デコの館と、同じく明治期の新しい技術として並河が興した新たな技術を駆使して作り上げた色鮮やかな七宝焼きとの奇蹟のコラボレーションが実現しているのです。


東京都庭園美術館 本館 大食堂

ここで注意したいのが、並河靖之の七宝作品は決して古くからの伝統工芸品ではなく、彼の絶え間ぬ研究と努力によって生み出された全く新しい七宝焼きだという点です。

《引用》
"七宝とは、金属(金や銀、銅、青銅など)の下地の上に釉薬をのせ焼くことで美しい彩色を施す金属工芸の一種です。古くは紀元前の中近東にさかのぼることができ、日本でも奈良時代にすでにその技術がみられます。桃山時代から江戸時代にかけては、主に建物の釘隠しや襖の引き手、刀の鍔などに用いられましたが、閉鎖的な職人集団の中だけで伝承し、ほぼ途絶えていました。 明治時代の七宝家たちは、この江戸時代までの伝統的な技ではなく、江戸時代末期に生まれた尾張七宝の技術を基にし、お雇い外国人のワグネルが開発した釉薬を使って、近代的な国家の新しい技術、新しい産業に取り組むベンチャー企業として、七宝を作り出したのです。この中で抜群の技術とセンスをもって台頭してきたのが、並河靖之でした。"



豊かで上品な色彩あふれる花鳥モチーフの魅力をより高めるために並河は地(背景)の色に黒を用いました。そしてそれは単なる黒ではなく作品に奥行きや輝きを与える「黒色透明釉薬」を用いています。

釉薬の研究や同じ色でも微妙に色合いの違うものを塗り重ねるような作業も美しさを追求するために行っています。何が彼にそこまでやらしめたのか今まで謎だったのですが、今回の展覧会でその答えを見つけることが出来ました。

並河は、順風満帆な七宝作家人生を歩んだわけでなく、大きな挫折を経験していたのです。


「並河靖之展」展示風景

昭和2年に82歳でこの世を去った並河靖之。没後90年にあたる今年初めて彼の大規模な回顧展が開催されています。

幕末から明治時代と大きな変革が訪れた激動の時代に、西洋列国に日本の技術力の高さを知らしめた並河靖之。

再評価、再発見される理由や魅力は他にもたくさんあります。アール・デコの館で並河が生み出した超絶技巧の七宝焼きをじっくりと堪能してきましょう!ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)所蔵の作品も里帰りを果たしています。


そうそう、大事なこと書くの忘れるところでした。この展覧会には単眼鏡が必需品です!!お忘れなきように(美術館でも貸出しています。)



並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑―透明な黒の感性

開催期間:2017年1月14日(土)–4月9日(日)
開館時間:10:00–18:00 (入館は閉館の30分前まで)
*3/24、3/25、3/26、4/1、4/2、4/7、4/8、4/9は夜間開館20:00まで(入館は19:30まで)
休館日:第2・第4水曜日(1/25、2/8、2/22、3/8、3/22)
会場:東京都庭園美術館(本館・新館)
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館、毎日新聞社
後援:ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、ブリティッシュ・カウンシル
協力:日本航空
協賛:岡村印刷工業
年間協賛:戸田建設

明治時代、輸出用美術工芸として人気を博した七宝。並河靖之(なみかわ・やすゆき、1845-1927)は、その中でも繊細な有線七宝により頂点を極めた七宝家です。没後90年を記念する本展は、初期から晩年までの作品を一堂に会する、初めての回顧展です。