【約80年前】昭和10年頃の東京の繁華街を映したホームビデオが興味深い

2017/2/17 21:19 服部淳 服部淳


どうも服部です。昭和の動画を紐解いていくシリーズ、今回はYouTubeに投稿されている「Japan Circa 1935(1935年頃の日本)」というタイトルをピックアップしました。1935年は昭和10年。YouTubeサイトにはタイトル以外、一切の説明はなく、ナレーションや字幕も挿入されていないので、映像を見ながら時代や場所などを検証していきたいと思います。
※動画はページ下部にあります(※BGMあり)。








冒頭部分は、いかにもホームムービーという感じに、関係性はよく分かりませんが、日本人と西洋人の日常風景が映し出されます。憶測ですが、撮影者は2枚目の画像のご夫婦のお子さんで、3枚目の女性のきょうだいではないでしょうか。


映像の2分25秒からは「ちんどん屋さん」が捉えられています。


のぼりに書いてある文字は「聯合大賣出し」(=連合大売出し)でしょうか。各人が背中に貼っているポスターにも「大賣出し」の文字が見えます。


皇居前と思われる場所でお坊さんの姿。背後には東京市電が走っていきます。


こちらは皇居の平川橋でしょうか。


続いては、神社でのお参りを終えたと思われる女性にロックオン。途中、歩みを遅くして警戒しているような場面があり……、


さらにはカメラの前をすぐに通り過ぎ……、


振り返って確認していることから、面識はないのでしょうね。


こちらは映像の5分5秒頃。郊外に出てきたようです。


どうやら屋形船に乗りに来たよう。ビール瓶のラベルが見えないのが残念。


映像の6分12秒頃からは、日本で古くから室内犬として飼われてきた狆(ちん)を抱いた女性たちが捉えられています。


そして、映像の6分35秒から、このフィルムの最大の見どころである東京・浅草のシーンが始まります。まずは映画館などが集結する浅草六区。左手には「大日本」、右手には六区に最初にできた劇場「常磐座」ののぼりが見えます。




女学生さんと思われる2人が、「寿し、天ぷら」ののれんがかかるお店前を歩いていきます。寿し、天どん、天ぷら、いずれも20銭。


こちらも六区の映画館、「日本館」です。「空飛ぶ悪魔」という、1933年制作のアメリカ映画の上映しているようです。日本館は、“1935年(昭和10年)ころには松竹に経営が移り、松竹洋画興行の二番館(注:新しい映画を封切り館に次いで上映する映画館)となった(Wikipediaより)”とのこと。松竹以前は洋画は上映していなかったようなので、松竹時代と考えられます。年代はタイトル通りのようです。




7分6秒頃、映像が切り替わったこちらは、柱の道路名表記から「新仲見世通り」です。


喫茶店ですかね。時代劇に出てくる峠の茶屋のような雰囲気です。「アイスクリーム山盛り5銭」「コーヒー5銭」。


カンカン帽を被って自転車を押す男性の後ろには、劇場名は分かりませんが「入場料10銭(金偏は省略)」の文字。当時のいろいろな値段が知れる貴重な資料でもあります。


こちらのお店では、カレーライス、ハヤシライスが10銭。他にも洋酒もあるようです。寿司が20銭、カレーライスが10銭、コーヒーが5銭という金額から、1銭は現在価値の60~80円くらいでしょうか。


「野口食堂」というお店の2階を捉えています。休憩中の従業員さんたちでしょうか、撮影しているのを見に集まってきているようです。


映像の8分10秒から映るのは、1951年(昭和26年)に埋め立てられてしまった「瓢箪(ひょうたん)池」。現在、場外馬券売り場がある辺りです。


露店のおばあさん。カメラに気付くと手ぬぐいを顔に乗せ、おどけてみせてます。カワイイですね。


映像の8分10秒からは「浅草寺」境内のようです。こちらの露店では「まゆ玉転がし」のようなおもちゃを売っています。


全体像は映っていませんが、1945年(昭和20年)の東京大空襲で焼ける前の、徳川三代将軍の家光により建立された国宝だった浅草寺・本堂です。


お父さんと兄弟2人で手を繋いで歩いています。微笑ましい光景です。


この映像に映っている女性は、圧倒的に和装が多いですね。


街では「浅草まつり」の準備が行われているようです。


こちらは桶を作っているところみたいです。音声は拾われていないので憶測ですが、撮影してよいか尋ねたのでしょう。おじさんは頷いてから作業を続けています。


冒頭に登場した撮影者の家族ですかね。同行していたようです。


カメラは再び郊外に出て、田植えの様子を映した後に捉えられるのがこちら。昨今、すっかり聞く事がなくなった「荒物(あらもの)」の屋台のようです。


細かい積み荷までは見えませんが、ザルや桶などを載せているのが分かります。




撮影日は変わったようで、雨後の街並みを映しています。


お神輿の周りに集まる子供たちを捉えて、映像は終了します。



引き続き、歴史の1ページを紐解いていければと思います。

(服部淳@編集ライター、脚本家)

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※参考文献
・東京昭和十一年/桑原甲子雄(晶文社 1974)
・彩色絵はがき・古地図から眺める 東京今昔散歩/原島広至(中経出版 2008)
・総天然色写真版 なつかしき東京/編:石黒敬章(講談社 1992)
・昭和の東京地図歩き/壬生篤(廣済堂出版 2013)

【動画】「Japan Circa 1935」