驚きの演出!国立科学博物館の「ラスコー展」がすごい

2016/11/8 13:00 Tak(タケ) Tak(タケ)

フランス南西部にあるモンティニャックという村の南に位置する石灰岩の丘の上にラスコー洞窟はあります。洞窟と言うよりも蟻の巣のような複数に枝分かれした地下空間で、全長約200mにもおよびます。

このラスコー洞窟の壁に合計600~850頭もの動物と、多くの記号的な絵画が残されています。歴史や美術の教科書に必ずラスコー壁画の写真が載っていましたが、あれはほんのごく一部に過ぎないのです。



世界遺産に登録され知らない人はいないラスコー洞窟ですが、発見されたのは1940年9月8日。きっかけは一人の少年と一匹の犬によってでした。その日モンティニャック村のマルセル・ラヴィタ少年の飼い犬が穴に落ちてしまいました。4日後友人たちと穴を広げてみると…そこがラスコー洞窟への入り口だったのです。

まるで生きているかのように描かれている無数の動物たちの姿を洞窟内で目にした時の驚きと感動は一体どれほどのものだったのでしょう。まさにそれは第一発見者のみに与えられた天からのギフトです。

世紀の発見のニュースは瞬く間に広まり、小さな村には洞窟壁画を一目見ようとする人が押し寄せました。1963年4月17日に保存の観点からラスコー洞窟が閉鎖され非公開になるまで100万人以上がこの小さな村を訪れました。



高松塚古墳の「飛鳥美人」たちが管理不備により発見当初の美しさを失ってしまったのと同様に、このままラスコーも公開を続ければ取り返しのつかない深刻なダメージを与えてしまったことでしょう。閉鎖の決定を下したフランス文化担当大臣アンドレ・マルローの英断により今でもラスコー壁画は洞窟内でほぼ2万年前の姿を保ち続けているのです。

しかし、洞窟を閉鎖してしまうことは村にとっては計り知れないダメージです。また研究者にとっては死活問題でもあります。そこで実物の洞窟壁画(これを「ラスコー1」と称します)を再現した、見学者用に再現された洞窟壁画(「ラスコー2」)が1983年に村に設置されました。

それから時が過ぎ現在のテクノロジーを用いて再び作られたのが今回展示されている再現壁画「ラスコー3」です。3次元レーザースキャンなどを駆使して1㎜以下の誤差も許さずデジタルマッピング技術で現出した「ラスコー3」は、まさに実物そのものの迫力を有しています。



フランスでの展示を終え、日本初上陸を果たしている「ラスコー3」はただ壁画を再現しただけではありません。巨大なウシや、躍動感あふれるウマの姿が彩色のみならず、線刻ならではの繊細な表現を観てもらうための仕掛けが施されているのです。

展覧会会場では数分おきに照明が落ち会場内が暗闇に包まれます。壁画に目をやるとなんと線刻だけの動物たちの姿がブラックライトにより浮かび上がって見えるのです。4万年前にクロマニョン人が描いた線が時を超えて浮かんで見える姿は感動ものです。



絵画的にも発見があります。それは動物たちを重ねて(上書き)描いていることです。一体どんな理由からなのでしょう。場面によっては遠近法的な描き方さえしていたりします。美しい彩色と繊細な線刻をそれぞれ楽しめる仕掛けが「ラスコー3」には盛り込まれているのです。

クロマニョン人による壁画の制作は今から4万年も前から始まっていたそうです。ラスコー壁画には今ではヨーロッパでは見かけない大型の動物たちも描かれていますが、当時は氷期にあたり、今よりも気温が低く草原が広がる環境だったと考えられています。そこにはマンモス、オオツノジカ、ホラアナライオンなど今では絶滅してしまった大型動物たちが闊歩していたのです。



そんな遥か遠い昔に思いを馳せながら、人類が残した正真正銘の文化遺産を体験できるまたとない機会です。

現在は保全のために研究者ですら入ることを許されないラスコー洞窟。3次元レーザースキャンなど現代の最新技術と、アーティストらが膨大な時間をかけ、手作業で精密に復元された迫力満点の壁画が、前に実物大でよみがえります。

観に行くまではどうかな~とあまり期待していなかったのですが、行って観てびっくりすると同時にめちゃめちゃ感動しました。それと同時に今までラスコーについて詳しいことを何ひとつ知らなかった自分を猛省しました。

これは観に行って損はさせない展覧会です。

学生さんには特に足を運んでもらい実物大のラスコー壁画を肌で感じ取って欲しいものです。教科書では知ることのできない「ラスコー」が待っています。





特別展「世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」

会期:2016年11月1日(火)~2017年2月19日(日)
会場:国立科学博物館

公式サイト:http://lascaux2016.jp/

巡回予定:「ラスコー展」は東北歴史博物館(宮城)、九州国立博物館(福岡)に巡回します。

今から2万年ほど前、フランス南西部のヴェゼール渓谷にある洞窟に、躍動感溢れる動物たちの彩色画が描かれました。そこはラスコー洞窟、壁画を描いたのはクロマニョン人です。ラスコー洞窟の壁画は、彼らが描いた数ある壁画の中でも色彩の豊かさや、技法、そして600頭とも言われる描かれた動物の数と大きさなどが格別に素晴らしく、1979年に世界遺産に登録されました。壁画を保存するため、洞窟は現在非公開となっていますが、その魅力を広く人々に知ってもらうべく、フランス政府公認のもと制作され世界巡回している展覧会が「LASCAUX INTERNATIONAL EXHIBITION」です。 2016年秋、世界各国で人気を博しているこの巡回展に日本独自のコンテンツを加えた特別展「世界遺産 ラスコー展 〜クロマニョン人が残した洞窟壁画〜」が、国立科学博物館で開催されます。 本展では、謎に包まれたラスコー洞窟の全貌を紹介するとともに、1ミリ以下の精度で再現した実物大の洞窟壁画展示によって、研究者ですら入ることができない洞窟内部の世界を体験することができます。また、クロマニョン人が残した芸術的な彫刻や多彩な道具にも焦点をあて、2万年前の人類の豊かな創造性や芸術のはじまりを知る旅にご案内いたします。




ラスコーと世界の壁画