『乙嫁語り』のモデルとなったトルクメン人の貴重なコレクションがついに公開!
トルクメニスタンってご存知ですか?
アフガニスタン、ウズベキスタン、カザフスタンと同じ中央アジアに位置する旧ソビエト連邦から独立をした国のひとつです。
日本語の公式サイトによると…
トルクメニスタンは、アフガニスタン、イラン、ウズベキスタン、カザフスタンと国境を接する中央アジア南西部の共和制国家の永世中立国。
豊富な石油や天然ガスの資源国となっており、経済が豊かで政府による治安維持が行き届いているため治安もよく、安心して旅行することが できます。
奥深い歴史を持っている世界遺産や遺跡を巡って憶いを馳せたり、美しい伝統工芸品に触れるのも旅の醍醐味です。
永世中立国という言葉が目を引きます。一瞬スイスのようなイメージを抱いてしまいますが、トルクメニスタンの現状はある種の独裁国家といっても過言でない状態にあります。
入国に際して必要となるビザの発行もとても難しく、行ってみたいと思ってもかなりの高いハードルを越えねばなりません。
また、いくら国内の治安が良いと謳われても、イランやアフガニスタンと国境を接していることを鑑みると気軽に行ける国では決してないことが分かります。
そんな入国や滞在が非常に厳しく制限されている(気軽に写真撮影も出来ない!)トルクメニスタンですが、世界遺産や歴史的遺跡、それに人間のミスによって誕生した「地獄の門」と呼ばれる燃え盛る巨大クレーターなど見どころは随所にあります。
そして何より、シルクロード文化が交差するこの地には、古くから独自の文化が発展してきました。とりわけ異国情緒をかき立てる独特の美しさ形状を誇る装身具に関しては目を見張る魅力を湛えています。
雑誌『ハルタ』(旧『fellows!』)にて連載中の森薫さんの人気漫画『乙嫁語り』は、この地を舞台にして描かれており、『乙嫁語り』を通じてこの美しく独特の装飾文化に魅了されている方も多いはずです。
マンガ大賞2014の大賞を受賞した『乙嫁語り』。ストーリーはもちろんのこと、なんといってもその圧倒的な描写力による世界観が多くの人に支持されています。
しかし、前述の通り現地へ行って目にすることは困難を極めます。『乙嫁語り』の聖地巡礼をしたくても、描かれているエキゾチックな装身具を観たくても叶わぬことなのです。(日本国内で展覧会を開催するのも越えねばならぬハードルが幾つもあり実現するのは難しそうです。)
現在ではトルクメニスタンから持ち出すことも難しい状況にあります。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ。」 まとめて日本で目にするのは不可能だと思い込んでいましたが、安西先生の言葉通り、願い続ければ道は開けるものです。
何と!トルクメニスタン周辺に住む遊牧の民(トルクメン人)の精緻で美麗な装身具コレクションを箱根にあるポーラ美術館さんがまとめて所蔵しているのです。
普段は滅多に公開しないトルクメニスタンの装身具コレクションを、9月10日(土)から「シルクロードのよそおい―トルクメンの装身具を中心に」と題されたコレクション展で目にすることが出来ます!
「エグメー」と呼ばれる花嫁用の頭飾り。四角い飾り板を中心に、鎖や環で構成されています。花嫁装束として用いられたエグメーの起源はキリスト経発生以前まで遡るとされています。良く見ると冠には5つの紅玉髄が嵌め込まれています。5という数字はイスラム教徒が守るべき5つの義務や、5本指など呪術的な意味を持っているそうです。
それにしても、ある所にはあるものです。現在では国外に持ち出しが許されていないトルクメン人の文化遺産をこれだけまとめた形で目にすることが出来るのは世界中広といえども、ポーラ美術館くらいなのではないでしょうか。
ポーラ文化研究所
トルクメン人の貴重な文化遺産をポーラさんが入手したのは、ソ連崩壊後の1990年代初頭だそうです。タイミングが良かったこと、先見の明があったことのまさに勝利です。おかげで私たちが、今こうして日本で実物を拝めるわけですから。
「遠い異国」トルクメニスタンの美しい文化に魅了されること間違いなしです。
「菱形胸飾り」菱形以外にも六角形、円盤形などがあり用途によって分かれているようです。円盤形のものは中央に円、楕円、四角形の紅玉髄を嵌め込んだものが多いそうです。平面を十文字に交差する帯状の装飾文様で分割したものもあるそうで、これは中央と方位を強調するトルクメンの世界観を示していると言われています。
トルクメンの帽子類
「帽子飾り」銀製の半球形が特徴的でチャーミングな帽子飾りには鈴が付いていて、動くたびに涼やかな音をたてるそうです。因みにトルクメンでは銀を産出しないため、中国やイランなどの近隣諸国の銀貨幣を溶解して素材として用いているそうです。中には実物の貨幣に文様を刻印することもあったとか…
トルクメンの歴史概説/トルクメン人の生活/トルクメンの装身具/頭飾り/こめかみ飾り・耳飾り/鼻飾り/髪飾り/首飾り/胸飾り/背飾り/護符と護符入れ/腕飾りと手飾り/衣服と衣服用留め金具etc…
これだけまとめて観られるのこの機会を逃してはなりません!
ポーラ美術館では、企画展「ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ―境界線への視線」展も9月10日から始まったばかりです。コレクション展では印象派に日本画、そしてガレ、ドーム兄弟のガラス作品も併せて観られます。
ようやく涼しくなりいよいよ芸術の秋到来です。これから紅葉の美しい時季を迎える箱根でたっぷりとアートにひたる一日を過ごしましょう。
シルクロードのよそおい―トルクメンの装身具を中心に
会期:2016年9月7日(水)~2017年3月3日(金)
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
年中無休(ただし展示替のための臨時休館あり)
会場:ポーラ美術館 展示室5
http://www.polamuseum.or.jp/
本展示では、トルクメンの装身具と古代の化粧道具をご紹介します。
中央アジア、トルクメニスタン周辺に住む遊牧の民=トルクメン人は、シルクロードを通じて東西の文化の影響を受けつつ、独自の装身具の文化を築いてきました。
銀や、金メッキを施した銀の上に、紅玉髄という赤い石やガラスを象嵌した装身具は、そのほとんどが女性用であるといわれています。これらはアクセサリーであると同時に、人々の身を守るお守り、そして経済的に余裕のある時に投資した財産でもありました。装身具は部族ごとに独特の様式があり、それを身につけている者がどの部族に属し、どのような地位にいるのか、形態や細工、文様から読み取ることができたといいます。
文明の発祥とともに始まったとされる化粧。鏡や容器などの化粧道具は、シルクロードの道筋にある地域それぞれの風土や文化の影響を受けながら変化し、やがて西は欧米、東は日本へと長い時間をかけて伝わっていきました。身近な化粧とはひと味違った、異国情緒あふれる化粧文化をお楽しみ下さい。
所蔵作品展示室での写真撮影がOKとなったポーラ美術館。https://t.co/fgzOx6mHUM ゴッホの「アザミの花」や『乙嫁語り』ファン必見の貴重なトルクメン人独自の装身具も撮れますよ〜 #polamuseum pic.twitter.com/XOeATH56Pe
— Tak(たけ) @『美術展の手帖』 (@taktwi) 2016年9月12日
『100年前の写真で見る 世界の民族衣装』