【京都】ポケモンの次はコケもんブーム? 苔玉をペット化する「ことのは園藝研究所」

2016/8/1 16:00 吉村智樹 吉村智樹




(この白衣の男性が手にしているカエルも、肩に乗せた鳥も、実は”苔”なんです)



皆さんはペットをお飼いになっていらっしゃいますか?

にゃんこにわんこ、うさぎやハムスター、インコに熱帯魚に爬虫類などなど、人生のよきパートナーとしてペットを愛している方はたくさんいらっしゃるでしょう。

最近ではインターネットの位置情報と連動し、街で140種類を超える架空のペットを捕獲しながら飼育している流行に敏感な方々もおられるようです。
ペットって本当、いろんな種類があるんですね。

そして京都には、なんと苔をペットとして飼おうと奮闘している研究所があるのです
森の地面や岩などにはりついているあの植物の苔を、ペットに?
いったい、どういうことなんでしょう。


訪れた場所は京都市北区の原谷(はらたに)という、世界遺産「金閣寺」から西側へ広がるエリア。
京都では屈指の人出を誇る人気スポット金閣寺周辺ですから、お隣の原谷もそこそこ賑やかな場所なのかと思いきや、辿り着くと……。



(だ、大自然! ここが京都市内だとは、にわかに信じがたい風景)


緑一色!
リューイーソー!
緑豊かを通り越し、目の前に広がるのは緑のみ


こ、ここって本当に京都市内ですか?
いやあ、大自然にいだかれた原谷は、苔の研究に没頭するにはもってこいの環境に違いありません。

そして、おうかがいしたのがこちら。
「ことのは園藝研究所」(ことのは・えんげいけんきゅうしょ)です。



(トタン板が張りめぐらされた謎の建物。ここで”苔のペット化”が進められているらしいのですが……)


研究所と言っても看板は出ておらず、足を踏み入れるのに勇気を要する外観です。
なんでも、もともとは織物工場だったとのこと。


出迎えてくださったのは、2012年に発足した「ことのは園藝研究所」の所長、石田周平さん、38歳。
国家資格である一級室内園芸装飾技能士の資格をもつ、植物を扱うスペシャリストです。



(「ことのは園藝研究所」所長、石田周平さん)


ひとつ、気になったことが。
なぜ研究所名が園芸ではなく「園藝」(えんげい)なのでしょう。
植物を育てることを一般には「園芸」と表記するのでは?


石田
園芸と園藝は、少し違うんです。園芸とはガーデニングのことで、お庭や鉢への植栽を指します。『園藝』はプランツアート。生きた植物を使った、成長する造形作品のことを園藝と呼びます。日本では盆栽や苔玉などが園藝にあたります。そしてこの研究所ではおもに苔玉をマスコットキャラクターにした『モスペット』をうみだしています。モスペットの『モス』とは苔という意味で、つまり“苔のペット”でモスペットなんです。モスペットは、言わば現代の園藝です」


苔のペットでモスペット。
でも……。
でも苔って、あの苔ですよね?
苔玉って、ペットにできるものなのでしょうか?

苔玉とは、鉢植えを鉢からはずした状態で楽しむ枯淡の芸術。
よく若手職人が営む手打ちそばの店や、お抹茶がいただける和カフェ、和食の創作ダイニングの窓際などにそっと置かれているのを目にする、風流なグリーンインテリア。



(絵がヘタすぎてメロンにしか見えませんが、苔玉って、こういうやつですよね?)


高尚なオブジェであり、「静物」というイメージが強く、ペットという感覚にならないのですが。


石田
「それがペットになるんですよ。とりあえず、いま育てているモスペットたちを見てみてください」


わかりました(内心、ちょっとだけ『無理やろ』と思いつつ)。

ほお、この棚に並んでいるのがモスペットなんですね。
どれどれ。

お……。

お、お、お、お、おーっ!
めっちゃ、かわいー!



(か、かわいい!)



(もふもふです)



(僕の知ってる苔玉と違うぞ)



(この子たち、本当に苔なんですか?)



(ちゃんと水をあげていらっしゃるし、間違いなく苔なんですよね)


なんてチャーミングで、ゆるくて丸い、ゆる&まるキャラたちなんでしょう。
妖精のような、モンスターのような、不思議な魅力を放ちまくっています。
ポケットに入れて、一緒に旅がしたいほど。
古来より伝わる苔玉が、ずいぶんポップに変化を遂げたなあという印象を受けます。


石田
「多肉植物やエアプランツ(土を必要としない植物)など、さまざまな植物を頭の毛に見立て、水苔で包み込んで苔玉にしています。水苔は保水性と通気性に優れているので、包んだ植物と一緒に育つんです。だからちゃんと面倒を見るとモスペットたちはずっと活き活きとしています」


本当に活き活きとしていますね。
さかさまに貼りついているわんぱくなモスペットまでいますよ。



(さかさまにくっついているモスペット)


石田
「置くだけではなく、マグネットで、鉄の部分だとさかさまでもくっつきます。マグネットで衣服をはさむと、動物のように肩に乗せることもできるんですよ。これは小鳥をイメージして作りました。名前はピーちゃんといいます」



(肩にちょこんと乗った苔のピーちゃん)


うわぁ、ピーちゃんが肩に乗ってる!
苔なのに、苔のはずなのに、膝から崩れ落ちるほどかわいい!
これは確かに、苔のペット化以外のなにものでもないですね。



(慈しむように苔のペット「モスペット」たちの説明をしてくださる石田所長。なんとなく石田さん自身がモスペットっぽい雰囲気)


生きた水苔で、生きた植物を包んだ、愛らしい苔玉のペットたち。
そう、ここにいるモスペットたちは、当然のことながら生きているんですよね?


石田
「はい、もちろん生きていますし、成長します。元気に育つとお花が咲いたり、紅葉するなど、ヘアースタイルが変化します。なかには大きな木になる種類もありますよ。また、水苔のサイズアップなど『お直し』や『お着がえ』もお請けしておりますので、世話をすることでいっそう感情移入できます。名前をつけてかわいがったり、『夜は一緒に寝ている』というお客さんもおられます



(大切に育てると、頭の毛(に見立てた植物)はこんなにも成長します)


苔玉と一緒に眠るなんて、もう植物の概念を超えています。
本当に犬や猫と同じ、苔も家で飼えるペットなんですね。
僕も知らず知らず、モスペットたちの頭をなでていました。
これまで、どれほどの数のモスペットが生まれたのでしょう。


石田
「いまは月に500体くらい。これまでのトータルは一万体といったところでしょうか」


一万体!
このもふもふボールなモスペットたちが世の中に一万もいるんですか。
もう一匹ずつスマホで撮影したいくらいいとおしいです。

そしてあの……訊きにくいのですが、生きているのならば、反面、死ぬこともあるのでしょうか?


石田
「大切に育てなければ、やはり枯れます。ただ一週間に一度、霧吹きする程度で育つタイプもありますし、ご自身が手間をかけられる範囲でお選びいただけます。元気で永くかわいがっていただくための診察にも対応しています。ですのでそんなに早く寿命を迎えるということはないですよ


メンテナンスにも応じていただけるなんて、ああ、ひと安心。


それにしても不思議です。
苔玉なのになぜこんなにカラフルで、感触がもふもふしているのでしょう?


石田
「球状にした水苔の上から、和紙と錦糸を加えたカラー水苔を巻いているんです。このカラー水苔の手触りがふっくらしているので、生き物の毛のような触り心地になるんです」


なるほど。
あのもふもふ感の正体は和紙だったのですか。

ああ、いつまでもなでまわしていたいこの感触。
ますます植物というよりファンタジー世界の生き物のように思えてきました。


■さまざまなタイプのモスペット



(モスペットの基本型。土を必要としない植物”エアプランツ”を髪に見立てた「モスペット・エアー」。週に1、2回、霧吹きするだけで育つ定番。忙しい人でも飼える嬉しいやつ。成長すると花を咲かせることもあります。値段はレギュラーサイズで1,404円(税104円)。サイズの変更やオプションによって値段が変動してゆきます)



(ことのは園藝研究所では、さまざまな種類のエアプランツの栽培も行っています)



(カラー水苔を使わない「森のモスペット」。身体が渇いてきたら水にひたして育てます。植物が好きな人はこのタイプを選ぶことが多いのだそう)



(出荷を待つ「森のモスペット」たち。揚げたてのメンチカツみたいで、ちょっとおいしそう)



(多肉植物を髪に見立てた「モスペット・ドライ」。月に2回、身体ごと数分間、水に沈めるだけで育ちます。寒い季節は月に1回、軽く水にさらす程度でOK。手がかからない子です)



(光触媒効果のある造花を使った「モスペット・マダム」。ウェディングや母の日といった特別なギフトにも重宝します)



(オプションで、スタッフが作ったワイヤーアートやお手製のフェルト雑貨をあしらうことができます。こうしたアイテムがモスペットのキャラクターをつくりあげてゆきます)



(最近は『うちのペットをモスペットにして』というリアルなオーダーも増えてきたのだそう。犬の頭から草が生えていてかわいいです)


■モスペットができるまで



(乾燥させてほぐした水苔を用意します)



(マジックペンを軸にしながら水苔のかたまりを作ります)



(握りこぶしを押しあてながら少しずつ球体に近づけてゆきます。ピーちゃんが不思議そうに作業を見つめています)



(さらに釣り糸でしばり、かたちを整えてゆきます。しだいに苔玉らしくなってきました)



(苔玉からマジックペンを抜くと植物を挿しこむ穴ができます。ここが”髪の毛”になります)



(苔玉に園芸用のワイヤーを刺し、ペンチで適切な長さに切ります)



(切ったワイヤーを手で曲げ、手足やしっぽを作ります)



(ワイヤーの長短もオーダーでお好きなように。長くして、ぶらさげるタイプにすることもできます)



(針と釣り糸で目玉を縫いつけてゆきます)



(「くだ」という器具を頭のてっぺんにつっこみ、植物を挿す穴をさらに広げます。ぐりぐりぐり~)



(広げた穴に植物を挿します。今回使うのはチランジアというパイナップル科の植物)



(カラー水苔を巻いてゆきます。今回は黄色を選びました)



(見た目がパイナップルそのものになりました)



(ハサミの先で埋もれた目玉を掘りだします。ぐりぐりぐり~)



(次第にモスペットらしい姿に)



(さらにワイヤーで顔に表情をつけてゆきます)



(石田さんお手製のワイヤーメガネやスタッフが作ったフェルトの小物などで特徴を加えてゆきます)



(石田さん、実はワイヤーアートのワザもすごいんです)



(できました! 名前は、いま田トピ太郎くんにしました)


苔をペットにするという、「園藝」の世界に新たなジャンルを萌芽させた石田さんは京都生まれの京都育ち。


石田
「西陣織で有名な西陣で生まれ育ちました。実家が機織りをしていて、ものづくりに囲まれた環境でした。自分も布の端切れをもらってちくちく縫い物をして遊んだりしていました。そんなふうに日ごろからものを作っていた暮らしの原体験が、いまの仕事につながっているのかもしれません」


子供の頃からハンドメイドが生活のなかにあった石田さん。
そんな石田さんが植物に興味を抱いたのは、意外なきっかけからでした。


石田
「大学時代、京都のお花屋さんがホームページ作成のアルバイトを募集していて、そこに受かったです。応募した理由は、お花への興味ではなく、パソコンの知識があったってだけなんですけれど。そして大学を卒業して大阪にあるデザインの会社に就職したんですが、以前バイトしていたそのお花屋さんから『一緒に花束ギフトなどのネットショップをやらないか』と誘われまして、京都に戻ったんです。そうして植物の世話をするうちに『これは面白いぞ』と」


どういう点が面白いと思われましたか?


石田
「さまざまな種類の花をひとつの場所に集めて植える“寄せ植え”という作業があるんですが、色や形、香りで組み合わせを変えるのが、WEBデザインやアートに通じるなと思ったんです。しかも植物は成長するでしょう。成長するデザインって、奥が深いと感じたんですよ」


苔が地を這うようにじわっと人脈が広がり、人生の小さな要素がまさに寄せ植えのように集まって、遂に奥深い植物の世界と向き合うこととなった石田さん。
ではいったい、石田さんはなぜ、苔をペットにしようと思われたのでしょうか?


石田
「いやあ、実は、苔をペットにするという発想は、はじめはなかったんです


ええ! そうなんですか!?


石田
「一級室内園芸装飾技能士の試験は、筆記だけではなく実技もあるんです。その実技試験が『水苔を3キログラム用意して屋内を想定した作品をつくりなさい』というものだったんです。試験は合格したんですが、水苔を3キロも購入したものだから大量に余りました。家へ持って帰ったんですが、妻からも『あんたこれ、どうすんの?』って言われて。それで『苔玉にして、かわいく目玉や手足をつけたら、若者も苔に興味をもつんじゃないかな』と考えたんです」


モスペットの誕生に、そんな背景があったとは。
モスペットはある意味、国家試験から生まれたキャラクターなんですね。



(意外にも『はじめは苔をペットにしようという発想はなかった』と語る石田さん)


では、実際に作ってみて、どのような反応があったのでしょう。


石田
「2011年に手作り市へ出店したら、すごい反響があって。はじめは若い人を対象に考えていたんですが、お子さんからお年寄りまで喜んでくれたんです。おばあちゃんが『みんな笑ってはるねえ』って」


実は石田さん、ほぼ同年期に勤めていた花屋さんが閉店してしまい、無職に
モスペットは、まさにこの窮地の時期に重なるように誕生したのです。
それはまるで、プランツアートの国からモスペットたちが、石田さんを救うためやってきたかのように。



(催事場での対面販売のみならずワークショップも開催。「子供たちが植物と魅力とものづくりの楽しさを知るきっかけとなれば」)


地球最古の陸上植物といわれている苔。
名前をつけたり、水をあげたりしながら、末永くともに暮らしたいですね。
それこそ、苔のむすまで。


さて、こんなふうに苔のペット化を推進する「ことのは園藝研究所」がこの2016年8月、大阪、京都、福岡県博多に出没します

世界に一匹しかないレアなモスペットをゲットできるチャンス。
みんな、各地の会場へGO!



(あなたも石田さんのようにモスペットを肩に乗せてみませんか?)



(モスペットを連れて、森へ散歩に出かけてみましょう)



(あんまりたくさん連れていくと、どこからどこまでモスペットだかわからなくなるかも)


大阪会場●あべのハルカス近鉄本店 ウイング館9F『こども博覧会』会場
開催日●2016年8月3日(水)~8月9日(火)


京都会場●ジェイアール京都伊勢丹 10F
開催日●2016年8月3日(水)~8月16日(火)


博多会場●博多阪急 7F リビング用品コーナー
開催日●2016年8月17日(水)~8月23日(火)


▼各会場の詳細などは「ことのは園藝研究所」のWebサイトをご覧ください。
http://koto-no-ha.jp/


▼モスペット専用Webサイト
http://www.mosspet.jp/



(吉村智樹)



画像提供:ことのは園藝研究所



「モスペット©」は商標(登録第5497647号)、意匠(登録第1475064号)を取得した、ことのは園藝研究所のオリジナル商品です。