世界遺産に登録された国立西洋美術館を10倍楽しむ5つの方法。
国立西洋美術館本館が、世界文化遺産に決定しました。
フランス人建築家で近代建築の巨匠ル・コルビュジエ(1887~1965年)の建築作品17件が「ル・コルビュジエの建築作品」として世界文化遺産登録されたのです。国立西洋美術館は世界各地に点在するコルビジェ建築17件のうちのひとつにあたります。
http://www.nmwa.go.jp/
何と言っても画期的なのは、複数国をまたいだ文化遺産が今回初めて登録されたことでしょう。そして日本国内的には東京で初めての世界遺産誕生となります。
ところで、国立西洋美術館ってどんなところ?ともしかして初めて耳にする方もいるかもしれません。また世界遺産に登録されたことを機に足を運んでみようと思っている方も多いはず。
そこで本日は、知っておくとお得で便利な国立西洋美術館ガイドを簡単に。
題して国立西洋美術館を10倍楽しむ5つの方法です。
国立西洋美術館を10倍楽しむ方法 1
入館料が安い!
上野駅から徒歩30秒足らずの絶好のロケーションにある美術館にも関わらず、入館料は大人430円ととてもリーズナブル。しかも高校生以下の学生さんは無料です。また毎月の第2、第4土曜日、文化の日(11月3日)は大人も無料で入館出来る太っ腹ぶり。
こんなに安いと展示作品がしょぼいのでは…と穿った見方をしてしまいそうですが、その間逆で、良質のルネサンス以降から20世紀初頭までの作品がわんさか展示されています。たとえば印象派のモネの作品だけでも10点以上まとめて展示されているのです。
美術に詳しくなればなるほど、「こんな作品が国立西洋美術館にあったのか!!」と思うようになるはずです。それでワンコインでお釣りが来ちゃうのですから、もしかして世界で最もリーズナブルで行く価値のある世界遺産かもしれません。
国立西洋美術館を10倍楽しむ方法 2
写真が撮れます!
美術館で星の数ほど開催される展覧会では、通常は写真撮影不可です。それは他館(その多くは海外)から借りて来ているものであるということが一番大きな理由です。
しかし、国立西洋美術館本館(常設展示)は、ほとんど全て美術館が所蔵している作品です(一部寄託作品を除く)。よって撮影も自由にすることが許されています。コルビジェの設計による天井丈の違う展示空間に配置された作品をしっかり鑑賞し、記録用として写真に収める。そんなことがごく自然と出来るのです。
老婆心ながら、撮影に際し注意点を。写真を撮ることに主眼を置いてしまうと絵を観なくなってしまい、本末転倒となってしまいます。またスマホのシャッター音は館内で響きます。なるべく音の出ないよう工夫し他の鑑賞者の邪魔にならないように撮りましょう。
国立西洋美術館を10倍楽しむ方法 3
美術トーク、建築ツアーが用意されています!
美術のことはよく分からないので、観に行ってもさっぱり…なんてお悩みの方、国立西洋美術館では常設展示室の作品5~7点を、初めて来館する方も気軽に楽しめるよう一緒に鑑賞していく「美術トーク」が土曜・日曜に用意されています。参加は無料です。
「美術トーク」(ギャラリートーク)は、とても好評なようで、回数を増やし金曜夜間開館時にも実施しています。常設展示室の作品3点を取り上げ、ボランティアスタッフが1点につき10分間ずつトークを行います。絵画鑑賞に王道、正解はありませんが、初めての方にはとても良いきっかけとなるはずです。
また、日曜には、ボランティアスタッフによる建築ツアーも行っています。今回世界遺産に登録された要因となったル・コルビュジエによって設計された本館や前庭を、建築に詳しくない方も楽しめるよう、スタッフが一緒に歩きながら案内してくれます。これまた参加は無料です。詳細はこちらから。
http://www.nmwa.go.jp/jp/events/talkandtour.html
国立西洋美術館を10倍楽しむ方法 4
フェルメール作品も観られます!
世界中に約35点しか存在しないとされる、ヨハネス・フェルメールの作品が、国立西洋美術館で観られることはあまり知られていません。2015年3月17日より本館2階で展示されているヨハネス・フェルメールに帰属《聖プラクセディス》1655年 です。
この作品は、アメリカ、プリンストンにあるバーバラ・ピアセッカ・ジョンソン・コレクション基金が、所蔵していましたが、2014年7月にロンドンのクリスティーズでオークションに出され、約624万ポンド(約11億円)で落札されました。
西洋美術館が落札したのではなく、ある日本人が個人で落札し、それを多くの方に観てもらうべく国立西洋美術館へ寄託し公開されているのです。これまで観る機会が極端に少なかった《聖プラクセディス》が上野で観られてしまう日が来るとは!フェルメールファンならずともこれは見逃せません。
国立西洋美術館を10倍楽しむ方法 5
合言葉はモデュロール!
モデュロール(Modulor)とは、ル・コルビュジエが考案し、提唱した尺度体系のことで、一種の「定規」のようなもの。身体のサイズと黄金分割によって案出されたもので、建築のすべての部分の寸法を、この体系に基づいて設計されています。
たとえば2階展示室の低い天井はモデュロールで決められた226cm、高い天井はその2倍となっています。また外見にもその「定規」は生かされ、建物を支える柱の間隔もそれに則っています。
必見なのは、前庭の床や美術館の外壁です。サイズの違う様々な大きさの長方形から出来ていますが、それらは全てモデュロールによって決められているのです。
いかがでしたでしょうか。これだけ知っているだけでも普段美術館へ行かれる機会のあまりない方でもかなり楽しめるはずです。他にももっともっと西美については、話せることあるのですが長くなるのでこの辺で。
そうそう、最後にもう一点だけ。阪神淡路大震災の教訓を生かすべく、1998年に大規模な免震化工事が行われました。その際に、コルビジェ設計の本館の文化的・歴史的価値を損なわぬよう、基礎部分に免震装置を取り付ける「レトロフィット」と呼ばれる手法で改修が行われました。
「免震装置」
化粧室のある地下1階へ降りるとこのように、免震装置の取り付けられた一部を見ることが出来ます。これは何度も訪れた人でも知らない隠れたスポットですので、お友達に自慢しちゃいましょう~
~関連書籍~
『国立西洋美術館 ール・コルビュジエの無限成長美術館ー』
『もっと知りたいル・コルビュジエ―生涯と作品』