小塚のラストにコーチがサプライズ!「スターズ・オン・アイス2016」東京公演レポート

2016/4/21 14:00 東谷好依 東谷好依



4月初旬に世界フィギュアスケート選手権が終わり、これから束の間のオフシーズン……と思いきや、今年は世界フィギュア直後から多くのアイスショーが企画されている。現役選手も多く出演が予定されていて、彼らのタフさと意欲には脱帽だ。




そんなアイスショーシーズンの皮切りとなった「スターズ・オン・アイス」のジャパンツアーが、4月9日〜17日まで大阪・名古屋・東京の3つの都市で開催された。30周年を迎える今年のテーマは『e-motion』。スケーターの“動き”で観客に“感情”を届けるという意味がこめられているという。

今回は、16日の東京・昼公演の様子をレポート!


■サザンとアイスショー、意外な相性のよさ




午後1時。客席の照明が落ち、リンクだけが明るく浮かび上がる。そこに滑り込んできた髙橋大輔がリンク中央でステップを始めると、会場の空気が一気に濃密なものに変わった。やがて、ほかのスケーターも次々とリンクに飛び出してきて、華やかなオープニングナンバーを披露。いよいよショーのスタートだ!

まず登場したのは、14歳の新星、島田高志郎。赤いバットを手に持ち、衣装は野球のユニフォーム。背番号は55番だ。『サンバ・デ・ジャネイロ』に乗ってコミカルな演技を繰り広げ、最後はバットを大きく振ってホームラン! アイスダンスの須崎海羽&木原龍一組は、今シーズンのショートプログラム(SP)『Let it go』を披露。氷スレスレのデススパイラルに歓声が上がった。

演技が終わるごとに場内が暗くなるため、次の出演者を予想する楽しみがある。「次は誰だろう」と観客がささやき合うなか登場したのは、村上大介だ! 曲は『ロクサーヌのタンゴ』。赤と青の照明によりアート作品のように彩られた氷上で、高く浮かび上がるようなジャンプを見せると、会場にひときわ大きな拍手が鳴り響いた。

黒いワンショルダーの衣装で登場した鈴木明子のプログラムは、ビヨンセの『XO』。可憐さと女性らしさが溶け合った、鈴木にしか表現できない世界観で魅了した。続く織田信成は三味線の響きが軽快な『Storm』を披露。3-3のコンビネーションは、競技引退が惜しくなるほどのキレのよさだ。

今回のアイスショーで、新たな一面を見せたのが村上佳菜子だ。曲はザ・ホワイト・ストライプスの『Seven Nation Army』。したたかで大胆な女性を演じ、最後は氷上に寝そべってセクシーなポーズを決めてみせた。

前半のラストは、荒川静香、宮原知子、鈴木明子、宇野昌磨、髙橋大輔の5人によるグループナンバー『東京VICTORY』。サザンオールスターズの陽気なメロディーとアイスショーは驚くほど相性がいい! 氷上の5人が心から楽しんで滑っている様子に、客席からも自然と手拍子が始まった。


■真央ちゃん→大ちゃんの流れはヤバいっ!!




後半は、カナダ女子4人組のグループナンバーからスタート。ポニーテールを揺らし、The Kills『Sour Cherry』の軽快なサウンドに乗ってキメポーズ! 黒いドレスに赤いジャケットの衣装もカッコいい〜!

場内がすっかり温まったところで荒川静香が登場。プログラムは『You Raise Me Up』だ。代名詞のイナバウアーや柔軟性を活かしたスパイラルはため息が出るほどの美しさ。荒川の演技は年を追うごとにエレガントになっていく気がする。

続いて、気合いの入った表情でリンクに姿を見せたのは宇野昌磨だ。桜が一面に散ったような照明演出のなか今シーズンSPの『Legends』を滑る。夜公演では『トゥーランドット』を披露し、4フリップにも挑戦したそう。アイスショーの場でさえチャレンジし続ける宇野の進化が本当に楽しみだ。

パトリック・チャンがリンクに現れると、女性ファンの目はシースルーのセクシーな衣装に釘付け! バイオリンのヒステリックな響きが続くピアソラの『Esqualo』は、リズムのとり方が難しい曲。それを完全にものにしているP・チャンの実力、恐るべし。ちなみに曲名のEsqualoとは、鮫のこと。こんな鮫になら食べられてもいいかも……。

そんな妄想を脳内で繰り広げていたら、小さな赤い傘を持った宮原知子がリンクに現れた。バッハの『ゴールドベルク変奏曲』と激しい雷雨の音。曲が『Pennise from Heaven』に変わると、傘を片手に軽々と3回転を跳んでみせた。再び場内に雷鳴がとどろき、宮原はあわててリンクの外へ。ストーリー性のある楽しいプログラムは、ジェフリー・バトルの振り付けだ。

続いて登場したメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組も楽しいプログラムを見せてくれた。ビリー・ジョエルの『Piano Man』に合わせて、リンクを椅子ごと滑走! デュハメルを逆さに抱えてのアクロバティックなリフトには、客席から「おぉ〜」という声が上がった。

ノーブルもコミカルも演じ分けられるハビエル・フェルナンデス。この日のプログラムは、『I Love Paris』。中盤からのユニークで洒落っ気のあるステップは、ほかのどの選手も真似できないだろう。

次の演技者がリンクに入ってきたと同時に前席の方から歓声が。照明がつくと、リンクの中央に立っていたのは浅田真央! プログラムは今シーズンFSの『蝶々夫人』だ。スピンではそでがふわりとひろがり、リンクに花がこぼれ咲くよう。コーラスが入る中間部では、会場全体が浅田の世界にのみ込まれてシーンと静まっていた。

最後の演技者はもちろん、髙橋大輔。ジェフリー・バトル渾身の『Lilac Wine』は、まるでスケートの可能性に挑戦するようなプログラムだ。次の動作に入るギリギリまでエッジに乗ったり、リズムをワンテンポ遅くしてみたり、スローパートが多い分ごまかしがきかない。フィニッシュ後は、ちょっとしたハプニング(?)が。客席に向けてそれぞれあいさつをした後、髙橋は出口と反対の方向へ……。どうやら方向を間違えたようだ。

フィナーレは、12人のスケーターによるチーム演技。11人のスケーターがリンク中央に一列に並ぶと、高橋がリンクに飛び込んできた。そして、あいさつを交わすように、11人の間をジグザグに抜けていく。最後は全員で一列になって腕を組み、ラインダンスのように次々足を蹴り上げて客席の笑いを誘う。それから一斉におじぎをすると、ほかのスケーターもリンクに飛び込んできた。

17日の楽日には、この後、引退を表明した小塚崇彦があいさつを行った。コーチを務めてきた佐藤信夫コーチも登場し、「後ろを向きなさい」と小塚にジェスチャー。そして、背中に円を描いてポンとたたくいつもの「おまじない」をしたそうだ。



あっという間、でも夢のような2時間だった。興奮が未だ覚めず、アイスショーが終わって数日経つ今も、気づけばフィナーレで使用されたMIAMI HORRORの『Wild Motion』をリピートしている。

(東谷好依)