【社名変更で注目】ヤマザキナビスコのブレない広告戦略「沢口靖子CM」「カップ戦」
先週報道された「ヤマザキナビスコ、オレオやリッツの製造終了へ 8月末(gooニュース)」というニュースに、驚いた方も多いでしょう。
公式情報をまとめると、2月12日、山崎製パン株式会社は子会社のヤマザキナビスコ株式会社のライセンス契約終了を発表。これにより「リッツ」「オレオ」などの製造販売は9月1日より「クロレッツ」「バブリシャス」「ホールズ」などを展開するモンデリーズ・ジャパン株式会社へと引き継がれることになりました。
いっぽうのヤマザキナビスコ株式会社は、社名をヤマザキビスケット株式会社へと変更予定。今後は「チップスター」「エアリアル」などの既存製品に加え、魅力ある新製品を発売して新たな事業展開を目指すとのこと。
ところでこのニュースに対するネット界隈の反応は、主に以下の2つのようです。
・Jリーグの「ヤマザキナビスコカップ」はどうなるの?
これは一大事じゃないですか
— レディアさん (@rediasan) 2016, 2月 12
俺たちの思い出の詰まったナビスコカップの名称がなくなってしまうの?…
「ヤマザキナビスコ」、ライセンス契約終了で社名変更へ https://t.co/xu33HorFw2
・沢口靖子のリッツパーリィはどうなるの?
リッツ製造終了なら沢口靖子のリッツパーティーも終わってしまうん? pic.twitter.com/FkbFH5lCRa
— 小林 (@gunjoucobalt) 2016, 2月 12
そこで今日は、この2つの長期スポンサーシップを軸に、ヤマザキナビスコのブレない広告戦略をふりかえってゆきましょう。
■元祖パーリィピーポー、沢口靖子とリッツの出会いは28年前。
1988年、ヤマザキナビスコは、清純派女優として幅広い年齢層から支持を集めていた沢口靖子を「リッツ」のCMキャラクターに起用します。記念すべき最初のCMがこちら。グリエールチーズをオンザリッツして”リッツパーリィ”の準備中です。
■ナビスコ リッツ(1988)
BGMには沢口靖子の5枚目にして現時点では最後のシングル「Follow me」。
作曲・小室哲哉、作詞・川村真澄の二人は、渡辺美里「My Revolution」、宮沢りえ「DREAM RUSH」も手掛けた黄金コンビです。彼女のスリリングな歌唱も(ごくごく一部で、ですよ)話題になりました。
「Follow me」は、沢口自身が主演したTBSドラマ「痛快!ロックンロール通り」の“挿入歌(主題歌はTM NETWORKの「RESISTANCE」)”でもありました。
実はこのドラマのもう一人の主役、美少女ブームまっただ中の後藤久美子(当時14才)も、やはりヤマザキナビスコのCMに起用されています。
■ナビスコ オレオ (1988)
80年代末の正統派美女ツートップといっても差し支えないこの組み合わせに、ヤマザキナビスコの意気込みが感じられます。
まさにバブル崩壊直後の1992年には、「リッツ」の沢口、「オレオ」のゴクミ、さらに「プレミアム」のCMキャラクターを務めていた加山雄三の3名が共演する豪華CMも放送されました。
■1992年 ナビスコ リッツ 日本20周年 アニバーサリー
初CMから今年で28年目。幾多の荒波を乗り越え、現在までお茶の間に「オン・ザ・リッツ」というスタイルを提案し続けている沢口とヤマザキナビスコのパートナーシップは、CM界でも特筆に値します。
最新のCMはこちら。
■リッツ「和・オンザリッツ篇」
■ギネス記録のカップ戦「ヤマザキナビスコカップ」
豪華CMが放映された1992年、国立競技場に5万6000人の大観衆を集めて「ヤマザキナビスコカップ」決勝戦が開催されます。この試合のMVPはヴェルディ川崎(当時)の"カズ"こと三浦知良でした。ちなみに、Jリーグの初代MVPを獲得したカズが、風船の中から真っ赤なスーツで登場するのは、この1年後のことです。
■Jリーグ ヤマザキナビスコカップ ヒストリー
Jリーグ開幕前にスタートした「ヤマザキナビスコカップ」は、現在では日本サッカー3大タイトルのひとつ。2013年には「同一スポンサーによる世界最長のカップ戦」としてギネスブックにも登録されています。Jリーグバブルのはじけた1990年代後半からしばらくは観客動員にも苦戦したようですが、ヤマザキナビスコは地道にスポンサーを継続し、現在に至ります。
2005年当時のインタビューでは、マーケティング担当者が以下のように語っています。
「協賛を初めて以来、“金は出すけど、口は出さない”というスタンスでやらせていただいてきたので、Jリーグに対して特に注文ということはありません。最恵国待遇扱いしていただいて、本当にありがたいと感謝しております。今後の展開につきましては、まだ具体的ではありませんが、Jリーグの基本理念である地域密着という点から、Jリーグにお手伝いしていただいて、先程お話しした工場のある古河市で地域貢献していきたいと思っています」
引用元:【JAPANサッカーを支える企業 INTERVIEW Vol.3】ヤマザキナビスコ株式会社 「決勝はフェアな戦い、子供たちに夢を与えられるような試合を期待します」(2005年10月の取材。表記は原文ママ)
「金は出すけど、口は出さない。」
なかなか言えるセリフではありません。Jリーグのチケット販売を手掛ける「ぴあ」がスポンサー企業に対して行ったインタビューであることを差し引いても、ヤマザキナビスコさん、カッコよすぎます。その姿勢は、毎年開催される前夜祭での社長コメントからもわかります。
■2012年 ヤマザキナビスコカップ 前夜祭 飯島茂彰 社長コメント
関係者への配慮にあふれたスピーチの中にまぎれ、「20回を迎え、現役でおるのは三浦カズ選手と私ぐらいかと思います」というコメントに、社長のひそかな自負が感じられます。なにより、先のインタビューでも言及されている【フェアな戦い】、【地域振興への貢献】というメッセージが全くブレていない。
■靖子のリッツパーリィと「ヤマザキナビスコカップ」はどうなる?
報道によれば「ヤマザキナビスコカップ」は、今年10月に予定されている決勝戦まではそのままの名称で開催されますが、来年以降はスポンサーシップの有無も含め未定。沢口靖子のリッツパーリィが継続されるのかどうかについては、まったく情報がありません。
いずれも20年以上にわたって継続中の取り組み。ヤマザキさん、モンデリーズさんの英断を待ちたいですね。
(バブル時代研究家 DJGB)