槇原敬之、高野寛&田島貴男、カズン、…サッポロ「冬物語」が残した名曲をふりかえる

2015/10/21 11:00 DJGB DJGB




■季節とともに必ず思い出すCMといえば?


日本の年末に山下達郎のうたごえを定着させたJR東海「クリスマスエクスプレス」シリーズ、広瀬香美を“冬の女王”に祭り上げた「アルペン」、ほぼZOOのプロモーションビデオだったJR東日本「JR SKI SKI」シリーズ…。バブル期~90年代にかけては、印象的な“季節モノ”CMが多数存在しました。


今日はそのうちのひとつ、90年代を通じ、若者に「ビールのある冬のライフスタイル」を提案し続けてくれたサッポロ「冬物語」と、そのCMが送り出したアーティストたちをふりかえってみましょう。



■“くたびれたオッサンの飲みもの”というビールのイメージを変えた「冬物語」


「冬物語」の発売はバブル絶頂の1988年。ビール各社は“ドライ戦争”の真っただ中でした。
このころビールのCMには、失礼を承知でいえば、“苦みばしったオッサン”たちが多く起用されています。たとえば大ヒットした「アサヒスーパードライ」は落合信彦(ジャーナリスト)、対する「キリンドライ」はジーン・ハックマン(俳優)、そして「サントリードライ」はマイク・タイソン(ボクサー)、といった具合です。

サッポロビールもこれに対抗し、吉田拓郎、広岡達郎、石田えりという通好みなメンツで「サッポロドライ」を発売しますが、シェアは伸びませんでした。


ドライ戦争 1988ビール各社CM


そこでサッポロビールは、ビールに季節性という価値観を持ち込みます。「冬物語」は、寒い冬、飲み屋さんではなく自宅で、食事とともに楽しめる、日本初の“冬限定”ビール。これを、女性も含めた若い人たちに、スタイリッシュに飲んでもらいたい、というのがサッポロビールの狙いでした。



■冬の定番ソングがズラリ、90年代の珠玉のCM集


そんな「冬物語」のコンセプトが世間に大きく浸透したきっかけは、なんといっても発売3年目にオンエアされたこのCMです。


1991年 出演:夏川結衣、曲「冬がはじまるよ」槇原敬之


キャッチーなサビが今でも耳に残ります。ヒット曲「どんなときも。」に次ぐシングルということで話題性も十分でした。


雪の中にビールを持ってたたずむのは、この年の夏にユニチカキャンペーンモデルとして見いだされた夏川結衣(当時23歳)。あれ、1968年生まれのはずなのに、ユニチカ公式アーカイブに掲載されている当時の年齢と計算が合わない。。。


…それはさておき、「冬がはじまるよ」はのちに2008年(Every Little Thingによるカバー)、2011年(槇原による新録版)の「冬物語」キャンペーンにも使用され、現在も初冬の定番ソングとして定着しています。



1992年 出演・歌:高野寛&田島貴男「Winter’s Tale~冬物語~」


「虹の都へ」で一躍人気アーティストになった高野寛と、ORIGINAL LOVEとしてメジャーデビューしたばかりの田島貴男による、90年代っぽさ全開のコラボレーション。二人の洗練されたメロディとボーカルが、この曲が堂々たるタイアップソングであることを忘れさせてくれます。



1993年 歌:「冬の南風」伊豆田洋介


“和製ポールマッカートニー”こと伊豆田洋介のさわやかな歌声が、アツい冬の到来を予感させます。



1994年 出演:加藤紀子、歌:「Winter Kiss」Dual Dream


加藤紀子はこの年「笑っていいとも!」にもレギュラー出演するなど、桜っ子クラブから大出世。Dual Dreamの二人にとっては、この曲で記録したオリコン最高13位がキャリアハイ(タイ)でした。



1995年 出演:北浦共笑、歌:「冬のファンタジー」カズン


この年、「私、脱いでもすごいんです」のCM(TBC)でがぜん注目を集めていた雑誌『CanCam』出身のモデル、北浦共笑。いっぽうのカズンにとって「冬のファンタジー」は3枚目のシングルにして、シングル70万枚以上を売り上げる大ヒット曲となりました。



以降は動画を省略しますが、CMソングとアーティストはこんな感じ。
1996年 歌:「ディスカバリー」FLYING KIDS
1997年 歌:「Hallelujah in the snow」MOON CHILD
1998年 歌:「新しいドア~冬のひまわり~」ZARD
1999年 歌:「愛の火 3つ オレンジ」CHARA+YUKI



■その後とまとめ


ふりかえれば国内のビール消費量のピークは1994年(ソース:国税庁「酒のしおり」)。加藤紀子がDual Dreamの歌をバックににっこりほほ笑んでいた頃、サントリーが発泡酒「ホップス」を発売し、ビール系飲料は壮絶な低価格競争に突き進むことになります。2000年代になると「冬物語」のTVCMは徐々に途切れがちになり、2009年には生産そのものがいったん中断されてしまいました(翌2010年には無事再開)。


今年も9月末から「冬物語」の出荷が始まっています。残念ながら今年もTVCMは無いようですが、サッポロビールさんのウェブには、過去28年分のパッケージとキャッチフレーズを紹介した特設サイトも立ち上がりました。やっぱりCMの洗礼を受けた世代は、この季節になると自然に脳内で「冬が始まるよ」が自動再生されちゃうんですよね。


サッポロビールさん、「冬物語」コンピレーションアルバム出すときにはライナーノーツ書かせてください!



(バブル時代研究家 DJGB)