手は旅をする~ノラ猫の垣根くぐり~

2015/9/29 09:30 鴻池朋子 鴻池朋子


神奈川県民ホールギャラリー模型 (C)Tomoko Konoike


動物や植物たちが人知れず続けている秘密の生活。それを私たちはどれだけ知っているでしょう。

動物博士のような問いですが、アートの話です。毎日来るノラ猫だって、ご飯を食べた後に毛繕いをして少し昼寝をしたら、また濡れ縁から庭にひょいと降り、垣根の下の抜け道をくぐるときは、もう何か私の知らない違うものになっています。こちらを一切振り返りません。そして里芋畑へと消えて行く。その後ろ姿には果てしない断絶があります。家の中にいれば安定していられるのに、小雨が降っていても外へ出て、やはりその安定、平衡を脅かす方向へと自ら吸い込まれていくのです。それが、私が動物に切なさと憧れにも似た思いを感じる時です。この垣根の下あたりに何か位相の飛び越しがあるのがわかりますよ。そんなものに近いことを、10月末より始まる神奈川県民ホールギャラリーの個展『根源的暴力』でやろうと思っています。



革緞帳(部分)2015 (C)Tomoko Konoike



ドローイングと旧石器 2015 (C)Tomoko Konoike



ドローイングと旧石器 2015 (C)Tomoko Konoike



その私の家の「ノラ猫の垣根くぐり」を何にたとえればよいかというと、サーカスの綱渡り芸人です。タイトロープ芸人がテントの中で、ピンと高く張ったロープの上に一歩を踏み出す時と似ています。安定していた台の上から、一歩踏み出した途端、状況は一変します。バランスを崩そうとありとあらゆる方向から撹乱要素が襲いかかり身体は不安定な状態にいこうとする。だけど、その不安定に身を投じながらも、たくみにコントロールを持続して、安定と不安定をいったりきたりして綱を渡っていきます。その不安定な場所で安定を持続する場所というのが、ノラ猫が垣根をくぐるあたりと非常に似ていて、目が離せないんですね。垣根の向こうは私は手出しができない場所で、ノラ猫も猫という名前を失って、なおいきいきと甦る場所へと踏み出すんです。そこは人間は誰も知らない場所です。言葉でコントロールのたやすい空間の中へは、そういうものって持ち込んでくることってできないんですよ。

また何をいっているのかと思うかもしれませんが、そうですね、今回の個展は、サーカスのような見世物小屋のようなものに限りなく近い展覧会であればいいなと思っているんです。



影絵灯籠 制作風景 2015 (C)Tomoko Konoike

鴻池朋子展「根源的暴力」
2015年10月24日(土)− 11月28日(土)
神奈川県民ホールギャラリー
開館時間:10:00 − 18:00(入場は閉場の30分前まで)会期中無休
主催:神奈川県民ホール(指定管理者:公益法人神奈川芸術文化財団)
企画協力:一般財団法人セゾン現代美術館
詳細:http://www.kanakengallery.com/detail?id=33712


革緞帳(部分)2015 (C)Tomoko Konoike



革緞帳(部分)2015 (C)Tomoko Konoike