手は旅をする~パブリックアート~
今回はパブリックアートの穴のお話です。
Wild Things - Magic of Landscape 2013(ワテラス/淡路町) (C)Tomoko Konoike
Wild Things - Magic of Landscape 2013(ワテラス/淡路町) (C)Tomoko Konoike
まだ工事が始まったばかりの現場に行って、作品を設置する場所などを確認しに行くと、そこにはこれからビルが建つ前の巨大な穴が掘られていました。都会の真中にもの凄く巨大な穴です。どういうわけか、その穴を見た時に体の奥の方から欲望のようなものが込上げて来る感覚がありました。
その穴を見て、私はこういうことをやりたい、と瞬時に思ったんですね。それはどんな感じかというと、ビルはどんどん上へ上へと空を目指して高くなってゆくけれど、私の作品というのはそれとは逆の、穴を掘るようなことだ、と思ったんですね。上へ積み重ねていく作業ではなくて、地を掘るような作業が、私の作品のミッションではないかと直感的に感じたんですよ。
それはクライアントが要望していることとは逆のようなことですよね。綺麗なビルに見合った作品をつくってくれと言われているのに、私は穴を掘るような作品をつくりたいと思っているのだから。しかし、なぜか直感的に、そういうつくり方をしていかなければならないという、使命のようなものさえ感じたのは初めてでした。
Wild Things 2012 (さんぽーと港南) (C)Tomoko Konoike
Wild Things 2012 (さんぽーと港南) (C)Tomoko Konoike
Wild Things 2012 (さんぽーと港南) (C)Tomoko Konoike
彷徨っている時期というのは、精神的にもぼろぼろで、一番自分が弱くか細くなっている時でもありますが、その一番か弱い何かが、体の奥の方で必死に叫んでいる、そういう声です。巨大なビルの横に自分の作品が置かれるときって、その巨大な物に押し潰されそうなくらい、作品なんてひとたまりもないくらいちっぽけな存在です。でも今現在、私は生きていて、そして作品をつくるならば、穴を掘るような、その穴に飛び込むことをやらなければだめだ、と思ったんですよね。その意識が目覚めた時の事は今も覚えていますし、それからとても深呼吸ができるようになりました。
パブリックアート制作風景 (C)Tomoko Konoike
パブリックアート制作風景 (C)Tomoko Konoike