【銀ブラは「銀座をブラブラ」じゃない!?】目からウロコの語源まとめ

2015/6/12 19:53 服部淳 服部淳


画像は昭和30年代の銀座4丁目交差点付近

どうも服部です。昨今では使われることは稀ですが、「銀ブラ」という言葉があります。東京近郊にお住まいの方なら一度は耳に(目に)したことがあるかと思います。辞書(著者がPCに入れている明鏡国語事典)で調べてみると「〔俗〕東京の銀座通りをぶらぶら散歩すること。」とあり、どこにも疑う余地がありません。

でもこれ、語源は「銀座をぶらぶら」することではないって知ってますか? 語源となった当の本人がそう言ってるのです。

当の本人とは、1911年(明治44年)に現在の銀座六丁目に開店した喫茶店「銀座カフェーパウリスタ」です。同店のウェブサイトから引用すると、

『(銀ブラの)語源は銀座パウリスタに一杯五銭のコーヒーを飲みに行くこと。

一般には「銀座通りをブラブラ散歩する事」(広辞苑)と信じられていますが銀座の銀とブラジルコーヒーのブラを取った新語で、大正二年(大正四年説もある)に慶應大学の学生たち(小泉信三、久保田万太郎、佐藤春夫、堀口大学、水上滝太郎、小島政二郎)が作った言葉です。


なんと、「銀ブラ」の「ブラ」はブラジルコーヒーの「ブラ」だったんですね

それにしてもここで名が上げられているのは、後の経済学者で慶應義塾塾長ともなる小泉信三以外は、いずれも作家や俳人、歌人、画家など、日本の芸術界を担っていくことになるそうそうたる顔ぶれです。揃いも揃って歴史に名を残す人物になるなんて、凄いですね。

その他にも慶應大学の学生たちよる造語として「虎狩り」というものもあり、こちらは東京・虎ノ門近辺にあった「虎の門女学校(現・東京女学館)」の生徒を待ち受け、尻を追い掛けることを意味したのだそうです。硬派な香りがする「銀ブラ」とはまさに正反対ですね。



■まだまだあった語源が気になる時代の言葉

・タフガイ
こちらは「タフガイ」という使い方ではあまり聞くことはありませんが、「頑丈」などを意味する「タフ」という英語はすっかり日本語に溶け込んでいる感があります(「ガイ」は「男」の意味)。語源は1959年(昭和34年)、映画会社の日活が、銀幕のスターである石原裕次郎のニックネームとして付けたものだそうです。それが一般の「疲れを知らない」人たちにも使われるようになったようです。

・ラリる
お次は、シンナーなどを吸った際に「脳に効いた」ことを意味する「ラリる」。最近でも使われているのでしょうか? 1960年代初頭に若者の間で睡眠薬の乱用がブームになった際、睡眠薬を多量に服用するとろれつが回らなくなって「らりるれろ」がうまく言えなくなるからというのが語源だとか。

・出刃亀
最近では聞くことが少なくなりましたが、窃視(のぞき)行為やその常習者を意味する出歯亀という言葉。今から100年以上前の1908年(明治41年)に起きた強姦殺人事件の犯人が出っ歯で、通称が「出歯の亀吉」だったため、新聞の見出しで「出歯亀」と略して書かれるようになったのが始まりだったとか。いつしか犯人や事件とは関係なく、窃視(のぞき)行為やその常習者のことを「出歯亀」と呼ぶようになったのだそうです。

・H(エッチ)
最後は、今もバリバリ現役のこちらのワード。以前はもっぱら「いやらしい」という意味で使われていましたが、1980年代頃から性行為自体を「エッチ」と呼ぶようにもなりました。語源については諸説あるようですが、変態(HENTAI)の頭文字である「H」から来ているというのが主流のようです。発祥は古く、明治20年(1887年)頃に女学生たちの間で性的な隠語として生まれたのだとか。それにしても130年近く前に編み出された言葉が、生き続けていたんですね。

そう考えると、現在の流行語のたぐいも、100年後に生き続けているものがあるのかもしれませんね。可能なら見届けてみたいものです。

(服部淳@編集ライター、脚本家)