いかにしてオタクは熟成されたか ~岸田メルとアイドルについて~

2015/3/20 11:21 xxx of WONDER(オブ・ワンダー) xxx of WONDER(オブ・ワンダー)




さて、前回の内容(帰ってきたオタクの見る夢は ~岸田メルとアイドルについて~)は私がいかにしてアイドルにハマったかという、言うなれば導入だったわけだが、諸々の事情により今回が最後である。

『アイドルオタク』という存在は、その中でも様々な系統に分類することができる。アイドル好きの姿は、驚くほど多様性に富んでいるのだ。

ここからは、私が出会ったアイドルオタク達を、時系列に沿って紹介したい。


■ OS☆Uファンの皆さん

私が一番最初に話をすることになったオタクである。ネットサーファーの私はOS☆Uのファンになってからというもの、ツイッターの検索でOS☆U関連のつぶやきをしている人を探し、片っ端からフォローして行った。その中でも熱心なOS☆Uオタクのツイートはつぶさにチェックしていたわけだが、2013年末のイベントで、恐らくその方々であろう集団に勇気を出して声をかけてみた。

彼らは何年も前からOS☆Uを応援していて、グループの歴史、メンバー同士の人間関係から、メンバーの能力や好物まで大変に詳しく、ネット上に無い色々な情報を喜んで教えてくれた。この時、実際に現場に足を運んで他のファンと話をしないとわからないことがこんなにもあるのかと、大変衝撃を受けた。ウィキペディアを初めネット上の集合知がすべてを網羅しようとしている昨今において、それはとても魅力的に思えたし、昔ながらのオタクの有り様を思い出すものだった。

ちなみにそのイベント、JAあいち海部主催で旬の地元特産物を紹介したり販売する超ローカルなもので、ご老人や家族連れの中にトラディショナルなオタクが混ざってアイドルを応援する姿はかなりパンチの効いた情景であった。OS☆Uのメンバー達も率先して地域の農産物を紹介したり手売りしたりしていて、私はメンバーに言われるがまま米を2kg買ってしまった。


OS☆U最新シングル『ガンガン☆ダンス』


■ しず風&絆~KIZUNA~ファンの皆さん



上記からさかのぼること一ヶ月前、ツイッターでOS☆Uについて熱心に語る私に、一人のフォロワーが「名古屋在住なら、しず風&絆というアイドルグループを是非チェックしてみてください!」と紹介をしてくれた。アイドルについてはまだまだ無知だった私はすぐに興味を持ったのだが、なんとその流れでしず風&絆を運営する事務所の方からもリプライを頂き、それならばとすぐに直近のイベントを拝見しに行った。

アイドルとロックの融合「Iロック」を標榜するしず風&絆のパフォーマンスはすさまじく、客の上を歩く、口に含んだ水を吹きかける、客全員で肩を組みヘッドバンキングをするなど、およそアイドルとは思えないパワフルなもので、曲もオールドスタイルのロックテイストで満ちた、誰しもが楽しく盛り上がれる内容であった。私も会場の空気に飲まれ、されるがままに皆と肩を組み真冬の野外にも関わらず汗を流して応援した。

さて、驚いたのはその客層である。まさにThis is Rockとでも言わんばかりの、コワモテ、ガチムチの屈強な男性がたくさんいるのだ!ロックといってもアイドルなわけだし、いわゆるアイドルオタクっぽい人が多いのだろうと思っていた私は戸惑うしかなかった。怖いのである。

しかし、その漢達が皆、顔をほころばせて各メンバーにコールを送っている。ニコニコしながらメンバーに踏まれている。手を取り合って肩を組み応援している。こんな世界があるのかと言葉を失った。また、話すと皆優しくフレンドリーだ。怖さはすぐに微笑ましさにかわり、ファンの評価がそのまましず風&絆の評価を底上げした。これは一例ではあるが、アイドルはファンと一体となってアイドルなのだと今でも考えている。



しず風&絆のパフォーマンスの様子


■ オタクの業界人

時を同じくして、とある二人のレコード会社の方とそれぞれ別の仕事の絡みで知り合ったのだが、偶然二人とも非常に熱心なアイドルオタクであり、私はその二人から多大な影響を受けた。

先に知り合ったTさん(仮称)はベテランのディレクターであり、アイドルオタクとしてもハロプロ全盛期からの筋金入りだ。とにかく可愛くて才能のある女の子を追うのが大好きな人で、それがある意味仕事でもあり、ただしはたから見ていると仕事とか関係なく女の子が好きなだけに見えるという意見も…。しかし、非常に誠実な考え方をされていて、推しているアイドルの将来や成功のためには協力を惜しまず、業界人にありがちな下心も無いのだ。

もう一人のKさんは若くして才能にあふれ、様々な大役を任されているホープである。レコード会社でアイドルのディレクションやマネジメントを担当するかたわら、本当はとあるアイドルグループのメンバーたった一人だけを全身全霊で応援している、ほとんどガチ恋オタだ。ガチ恋というのは、アイドルに本当に恋をしてしまうアレな感じのオタクの事だが、Kさんの場合は恋とか言うレベルを超えていて、ほとんど女神のように崇拝している。キモい。だが、仕事を趣味は絶対的に分けていて、本業ではそのような話はしないし、仮に職場で推している子に会ったとしてもファンとしてのそぶりは一切見せないのだ。プライベートの場でだけ、オタクでいられるのである。

関係者であることを利用してアイドルとプライベートでやり取りしようとする人が業界には一定数いる。オタクでありながらアイドル業界に身を置く人は数え切れないほどいるので一概には言えないが、立場を利用してアイドルに近づこうとするオタクは『半ヲタ関係者』として、アイドルオタクからは忌み嫌われているのだ。私は沼にはまり切ってしまう前に二人と出会えたことでオタクとしての線引きのあり方を学ぶ事ができたのだった。


■ オタクから得た力

さて、今回紹介したのはいずれも2013年末から2014年初頭にかけての話だ。少々無理やりだが、これはxxx of WONDERの立ち上げの時期と同じである。私はxxx of WONDERのメンバーになると同時にアイドルオタクになったわけだ。xxx of WONDERはメンバー全てがクリエイターのパフォーマンス集団でもあるため、私もステージに立つことになってしまったのだが、そもそもイラストレーターであるわけでステージでできることは無いと言ってもいい。その時プロデューサーが言った言葉がこれである。


「岸田さんは…えーと…オタク担当で」



ここでも、私はアイドルオタクから得た力により救われたのだった。

xxx of WONDER 1stミニアルバムリリース記念ライブの様子
http://diggity-jp.net/feature/7296/


この場では最後となってしまうが、まだまだ語りたい事は尽きない。

近いうちに、またどこかで。

機会を与えて頂いたgooいまトピ様、ありがとうございました!


(文:岸田メル / xxx of WONDER)