堂本光一はファンに手をふらない?「KinKi Kids Concert 2014-2015 Memories & Moments.」に行ってきた
2014年12月に大阪と東京で行われたKinki Kidsのコンサート「KinKi Kids Concert 2014-2015 Memories & Moments.」。
恥ずかしながら、KinKi Kidsのコンサートに入るのは今回が初めて。年齢が近いこともあって昔から勝手に親近感を持って番組を見ていたし、周囲にもKinKi Kidsファンがいたにも関わらず、なぜか足を運ばなかった。(そのことを今は激しく後悔している…)
今年の元旦、実家への帰省を遅らせてまで見たいと思ったきっかけがある。それは昨年放送された『TOKIOカケル』(フジテレビ系)に堂本光一が出演したときのこと。ジュニア時代から仲が良いTOKIOの長瀬智也が、堂本光一にメロメロになっている姿があったから。カウントダウンコンサートで共演すれば抱き合ったりキスをしたり(BLっぽい)と、それはステージ上でのパフォーマンスかと思いきや、番組では隣に座り、堂本に対する質問に本人よりも先に長瀬が答える姿を目の当たりにした。
その仲睦まじい様子は微笑ましくもあったし、そもそも女性のファンが多い理由もわかる。30代半ばにしてあの美貌とスタイルを保てている人は現実にそうはいない。しかしあの男らしい長瀬を骨抜きにした、堂本光一が気になって仕方なかった。
それに堂本光一が出演するラジオ番組も気になっていた。リスナーから寄せられた質問に対し、あまりにもそっけない回答をしていて、初めて聞いたときは耳を疑った。天狗になっている様子とも違う絶妙なトーン。『堂本兄弟』などの番組でも見た事のないテンションがミステリアスで「これは何故だろう」と気になっていたことも理由の一つだ。
そんなわけで2015年元旦。大阪で行われたKAT-TUNのコンサートから東京に戻ったその足で東京ドームへ向かった。
■別のグループと何かが違う…東京ドームの雰囲気
ボルドーにゴールドの「M」の文字が光るトートバッグを持った女性が東京ドームに吸い込まれていく。電車の中でもそのバッグを持った4人組のご婦人たちに遭遇していた。盛り髪も花冠もみかけなかった、どちらかといえば髪にベロアのさりげないリボンをつけている女性が多いイメージ。グッズのバッグがレッスンバッグのようで、まるでバイオリンの発表会に行くような雰囲気。……何かが違う。
ペンライトを買おうとグッズコーナーにいくと、パンフ、ペンライト、写真、クリアファイル、パーカー、ニット帽が売られていた。キーホルダーとバッグは売り切れだった。ラインナップは控えめ。物販にアーティストのスタイルが滲むものだ。そこにはジャニーズの名物といってもいい公式うちわの販売がない。周囲を見渡してもメッセージうちわを持つファンが少ない。
バックステージに近い席について周辺を見回すと、女性ファンに加えて年配の夫婦、家族での来場も少なくない。開演時間が近づくにつれてどんどん座席が埋まる会場。たった2人で5万人を動員していることを思うと、ただただ圧倒された。
■何が飛び出すかはお楽しみ、とにかく先がつかめないステージ
会場に入ってまず目に飛び込んできたのが、アリーナにどでかいM字の花道。今回のコンサート&アルバムのMの文字だ。最新シングル『鍵のない箱』で登場した2人。バンドの生演奏はやはり迫力がちがう。バックダンサーとしてふぉーゆー(越岡裕貴、松崎祐介、福田悠太、辰巳雄大)のメンバーが華を添えた。照明の使い方が巧みで、豪華なステージの中にも劇場で舞台を見ているような品を感じた。堂本剛自らギター演奏をするなど(※ここは後日じっくり書きたい)、あくまで歌と音を引き立たせるため、というやりすぎない加減された演出でコンサートの王道を見た気分だ。寄りではなく引きで見ていたいステージ。
1月1日は堂本光一の誕生日。36歳になった光一をひたすら「さぶろう」(36だから)と呼ぶ堂本剛。誕生日を祝うサプライズパーティーがスタート。剛がテーブルクロス引き、けん玉、鉄琴の演奏を披露したが、すべて失敗した。そんなギャグに満ちたステージにドームが笑いにつつまれた。
「キンキはMCが長いよ!」友人から聞いていたとおり、本当に長かった。その尺のことよりも、まったく退屈しなかったことに後から驚く。後輩のふぉーゆーを交えてトークをしたり、前日のカウントダウンコンサートの舞台裏のを明かしたり。 また番組のロケで光一が欲しがっていたダイソンの加湿器を誕生日プレゼントとして贈った剛。それをステージに持ち込んでファンにもお披露目。いつもプレゼントしている剛とは対照的に、今まで一度も贈ったことがないという光一。しかし、かなりじらした上で光一からプレゼントが手渡された。しかも贈った品物はファンにも内緒。開けて驚く剛の反応だけでは、まったくわからなかった。すごく気になる!
笑いにあふれるトークに、次に何がおこるかわからないステージ。ぐっと引き込まれているうちに、あっという間に一時間が経過していた。
■堂本光一がファンに手をふらない理由
堂本剛がペンライト振り付け講座をした『ジェットコースターロマンス』で一体となった会場。ペンラ2個づかいバージョンもあるなど、なかなか商売上手な剛。前日のカウントダウンコンサートで、堂本光一がその習った振りつけをしているファンを目撃していたようで、「他のタレントやファンの前では恥ずかしいからやるな」と釘を刺すとファンからは「えー…」と不満げな声。すると「俺らだけのもんにしようや」の一言にギャーと会場が沸いた。「お前ら簡単やな」と手のひらを転がす仕草でニヤリ。わ、わかってらっしゃる! このやりとりにすっかり心をつかまれてしまった。
とりこになるのは女性だけではない。KinKi Kidsは男性のファンも多い。知人の男性は『LOVELOVEあいしてる』の頃からのファンで、2人がギターを習う姿に影響を受けて、一緒にギターをはじめたという。また彼らと同世代の男性もデビュー当時からアルバムを買い続け、「辞め時がわからない」といいつつもコレクションを続けている。アイドルとして、ビジュアルが…、というよりも番組でのトークを通して見えてくるふたりの人物像やKinKi Kidsとしての音楽、歌声が好きだと話す。
一般的に持たれているジャニーズのイメージとして、笑顔で手を振ってファンの声援に答える手厚いファンサービスの印象が強い。しかし堂本光一は、手を振ることを早い段階から辞めていたと『日経エンターテインメント』(2月号/日経BP社)の連載で明かした。
「ファンサービスよりパフォーマンスで、お客さんの心をつかめるアーティストになりたい、ならなきゃ、と自分に課した瞬間があって。『もう一度手を振ってほしい』と言われるよりも、『もう一度あのステージを見たい』と言われる人になりたい。そのほうが僕は100倍うれしい」
たまたま席が近い一部のファンに手を振るのが本来の仕事ではない。来場した全ての人に完璧なパフォーマンスを披露することが、お手振りよりも大切なことと考えているから。「お客さんも以前と比べてどうか、人間性はどうか、という根本的なところ見るようになってきますから。」何でも穴が空くほど見るファンのことをよくわかっている。
ビジュアルや雰囲気だけでも声援をおくってもらえる時代はとっくに過ぎた。しかし、それを経験したにもかかわらず、環境に甘んじることなく挑んできた結果がドームの動員数につながっているようだ。
細部へのこだわり、彼らなりの本質を追求する姿、それは「手をふらない」「●×をしない」と表面的な情報だけを並べたら少々気難しい印象を受けなくもない。しかしステージの終盤ではハゲカツラをかぶって真剣に歌う一幕もあるなど、観る者を楽しませるという本質からはけしてブレない。遠巻きに見ている人からは理解され難いかもしれないが、一歩踏み入れれば広がる深い世界。仕事で自分たちのこだわりを貫くということは難しいが、そんな姿に男性ファンも惚れるのだろう。
東京ドームにむかうときに“何かが違う”と、KinKi Kidsファンの独特の雰囲気を感じたが、実際に触れてみてそのわけを理解できた気がする。
(柚月裕実)