生きるとはいかなることか──「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」が11月1日より国立新美術館で開催

2023/10/4 18:35 虹


▲Gravity and Grace, 2023 Photo courtesy of A4 Art Museum

「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」が2023年11月1日(水)より国立新美術館にて開催されます。

大巻伸嗣(1971年岐阜県生、神奈川県在住)は、光や闇、時に色を用いて、自然や歴史、現代社会が抱える問題をインスタレーションで表現する現代美術家です。
現在、弘前れんが倉庫美術館にて開催中の「地平線のゆくえ」(~10/9)では、青森の地形や文化をリサーチし、ダイナミックかつ繊細な方法で、その土地の息吹を作品に落とし込んだ作品を展開しています。はたして本展には、どのような視点が込められるのでしょうか。


大巻伸嗣とは


▲大巻伸嗣ポートレイト Pic by paul barbera / where they create

大巻伸嗣は「存在するとはいかなることか」をテーマに、これまでも身体の感覚を揺さぶるような大規模なインスタレーションを創り出してきました。
闇の中を落ちていく煙や空間をたゆたう布、一面に広がる色鮮やかな模様などを用いた作品は、知覚的なだけでなく記憶や意識にも触れるような、さまざまな体験を通じて鑑賞者の感覚を拡張します。

近年では国内の個展のみならず、芸術祭や国際展、舞台美術など多岐にわたる活躍も注目されている作家です。


「生きるとはいかなることか」その根源的な問いに迫る
今回会場となるのは国立新美術館で最大の、天井高8m、全体で2000㎡にも及ぶ展示室。空間をダイナミックに使ったインスタレーションで知られる大巻ならではの世界は、どう展開されるのでしょうか。


▲Gravity and Grace, 2019


2011年に起こった東日本大震災と福島の原発事故に基づき、2016年に初めて発表された〈Gravity and Grace〉は、エネルギーに依存した現代社会を批評する作品であり、巨大な壺から放たれる光は美しく、しかしどこかうっすらとした不穏な空気も持ち合わせます。

本展はその最新バージョンからスタートするそうで、会場ではこの〈Gravity and Grace〉を含めた3点の大型のインスタレーションの展示が構想されているとのこと。広大な展示室の中、身体を凌駕する大きさの作品は、没入感を与えるとともに鑑賞者の身体的な感覚と強く響き合うことでしょう。


▲Rustle of Existence, 2023  Photo courtesy of A4 Art Museum


「生きるとはいかなることか」

未曾有の自然災害に事故、そしてパンデミックと、立て続けに起こる危機に直面した際、このような問いが心に湧いたという方は多いのではないでしょうか。
大巻もそのひとり。この根源的な問いに迫るため、我々の意識と切り離せない「言語」に着目している大巻は、今回様々なリサーチを重ねて「言語」をテーマとした新作の映像インスタレーションの公開を予定しています。加えて詩人の関口涼子とのコラボレーションも企画されており、言葉とイメージの世界がどのように広がるのかが期待されます。

また、展示空間を創出するために大巻が無数に描き残してきたドローイングもあわせて展示されるそうで、壮大なインスタレーションと繊細なドローイングの対比も、本展の見どころのひとつとなりそうです。


文明と自然、生死への考察など、作品に込められたメッセージと向き合うだけでなく、大巻の作品は鑑賞者に深い内省を促す力も持っています。
まず圧倒され、続いて吸い寄せられ、そして作品の前で佇みながら思考を巡らせる──大巻が創り出す総合芸術の世界は、静かに自分と語り合う時間を与えてくれるはず。観覧料は驚くべきことに、なんと無料。初めて大巻作品に触れるという方は、この機会をぜひお見逃しなく。


大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ



会期:2023年11月1日(水)~12月25日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E(東京・六本木)
休館日:毎週火曜日
開館時間:10:00─18:00
 ※毎週金・土曜日は20:00まで
 ※入場は閉館の30分前まで
観覧料:無料
詳細や会期中の関連イベントについては、美術館HPにて:
https://www.nact.jp