海のことがもっと身近に感じられる特別展「海 -生命のみなもと-」が国立科学博物館で開催中!

2023/7/28 09:33 yamasan yamasan

私たちの生命のみなもとで、多くのめぐみをもたらす海。
身近な存在でも実は知っているようで知らないことが多い海の魅力、不思議に迫る特別展「海 -生命のみなもと-」が東京・上野公園の国立科学博物館で開催されています。


展示風景

海面から突然姿を現したナガスクジラの上半身標本は高さ約4.7m。
目の前で見るとものすごい迫力なのですが、ナガスクジラは体長が25mにまでなるので、これでもほんの一部なのだから驚きです。

ほかにも驚くことばかりの展覧会ですので、さっそく展示の様子をご紹介したいと思います。

展示構成
 第1章 海と生命のはじまり
 第2章 海と生き物のつながり
 第3章 海からのめぐみ
 第4章 海との共存、そして未来へ


「海」展は宇宙から始まった

今回は海の展覧会ですが、冒頭に展示されているのは、意外にも小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから採集してきた粒子や、「はやぶさ2」模型(縮尺1/10)でした。


小惑星探査機「はやぶさ2」(縮尺1/10) 所蔵:宇宙航空研究開発機構

小惑星リュウグウの試料は直径わずか2.9mmほどの小さなものですが、そこには海のもととなる水も含まれていました。
これは、水を含んでいた微惑星が大きな塊に成長して惑星になったあとに吐き出されて大気中の水蒸気になって、それが雨となって地表に降り海となったことを想像させてくれる発見だったのです。


地球に酸素をもたらしたのは微生物だった

地球に生命が誕生してから何億年もの間、大気や海洋には酸素がまったくなく、酸素を使わない微生物が地球を支配していましたが、その環境を変えたのが二酸化炭素を消費して酸素を発生させる微生物シアノバクテリアでした。


ストロマトライト 所蔵:神奈川県立生命の星・地球博物館

酸素の発生によって私たち真核生物(※)が登場できたのですから、シアノバクテリアはまさに私たち人間にとって「生命のみなもと」だったのです。
(※)真核生物とは人間、動物、植物や菌類などの複雑な細胞構造をもつ生物のこと。

そこから先の水中で起こった私たちの祖先の進化の過程は実物標本をはじめとしたパネルでたどることができます。

第1章展示風景

そしてこのパネルの先に見えてきたのは「生きた化石」シーラカンスの剥製。
教科書などで見ていましたが、実物を見るのは初めて。今回の展示をとても楽しみにしていたこともありますが、目の前で見た「生きた化石」は神秘的な輝きさえ放っているように感じられました。

インドネシアシーラカンス 所蔵:アクアマリンふくしま


海の幸は海流に乗ってやってくる

日本周辺の海は、浅海から、地震や津波の発生源になる水深7000~11000mもの深い海溝まであって、さらには世界最大級の暖流・黒潮や寒流の親潮が流れ込み、生物多様性をもたらす多様な環境が見られるユニークな場所といわれています。

海というと真っ先に思い浮かべるのが「海の幸」。
ニシン、サンマ、サケ、開きでない状態を初めて見たホッケなどをはじめ私たちの食卓を彩る魚は親潮によってもたらされてきます。

第2章展示風景

おどけた表情をして、独特の体型から水族館の人気者マンボウ、旬の味として好まれるカツオをはじめ、温帯から亜熱帯にかけて生息する魚たちは黒潮に乗ってやってきます。

第2章展示風景

海流に乗ってやってくる魚だけなく、熱帯の海にはオアシスのような存在の造礁サンゴのサンゴ礁を頼ってすむ動物たちも多くいます。

第2章展示風景


私たちの生活を支えている海運

大量にそして長距離にわたって輸送する利点がある船は、太古の昔から人や物を運ぶ主要な手段でしたが、現代でも、日本の輸出入品のなんと99%が船によって運ばれています。
食料や燃料、そして工業製品などを運ぶ海上輸送は私たちの生活に欠かせない存在なのです。

ここからは模型やメカ好きにはたまらない展示が続きます。

自動車を大量に運ぶ自動車船は船内の自家用車やトラック、バスが見えるスケルトン構造になっていて、円筒形の帆を設置して風を推進力として加えることで化石燃料の使用削減をめざした次世代帆船技術「ウインドチャレンジャー」を搭載した貨物船「松風丸」などユニークな船の模型が展示されているので、見ていて飽きないです。

第3章展示風景

深度4500mまで潜り、深海に棲む生物、地質、資源開発などの調査に活躍している無人探査機ハイパードルフィンは実機です。本体の左からはマニピュレーター(ロボットアーム)が伸びていているのが見えます。
まるで国際救助隊サンダーバードに登場する救助メカのようで、深海で活動するスリリングな場面が思い浮かんできました。

無人探査機 ハイパードルフィン 所蔵:海洋研究開発機構


深刻さを増す海洋汚染

これまで見てきたように、海から多くのめぐみを受けている私たちですが、最近特に懸念されているのがプラスチックに含まれる有害物質による汚染です。

臓器から有害化学物質が高濃度で検出されたフトツノザメ。

フトツノザメ 所蔵:海洋研究開発機構

宇宙から始まり、「生きた化石」シーラカンス、海にすむ魚たち、海洋探査メカ、そして海洋汚染の問題提起まで、海のすべてを知ることができる盛りだくさんの内容です。
この夏おすすめの展覧会です。


展覧会開催概要

展覧会名 特別展「海 -生命のみなもと-」
会 期  2023年7月15日(土)~10月9日(月・祝)
会 場  国立科学博物館 地球館地下1階 特別展示室
開館時間 9時~17時(入場は16時30分まで)
夜間開館 8月11日(金・祝)~8月20日(日)は19時閉館(入場は18時30分まで)
※常設展示は8月11日(金・祝)~8月15日(火)は18時まで。それ以外の期間、常設展示は17時まで(入場は各閉館時間の30分前まで)
休館日  9月4日(月)、11日(月)、19日(火)、25日(月)
観覧料  一般・大学生 2,000円、小・中・高校生 600円
     ※日時指定予約を推奨します。
※展覧会の詳細、チケットの購入方法等は展覧会公式サイトをご覧ください⇒特別展「海 -生命のみなもと-」

※会場内は撮影OKです。ただし、展示映像の撮影は不可。一部、写真撮影できないものがあります。フラッシュ撮影、一脚、三脚、自撮り棒の使用及びビデオ撮影は禁止です。

オールカラー200ページの展覧会公式図録(税込2,600円)



巡回予定
 [名古屋展] 2024年3月16日(土)~6月9日(日) 名古屋市科学館(愛知・名古屋市)
 展示物は東京会場と一部異なります。予めご了承ください。